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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-187 変わる町並み



「おかえりなさいませ、ハルナ様!!」

「ただいま、マーホンさん!」


マーホンは、ステイビルの名前よりも先にハルナの名前を呼び無事を喜んだ。

二人は再会を喜ぶように、軽い抱擁を交わした。

最近のマーホンはハルナに対して尊敬の意はあるが、以前のようにアイドルや宝物を扱うような感じではなくフレンドリーに接してくれるようになってくれたことが嬉しかった。

それはずっと、ハルナからマーホンにお願いし続けていたことであった。

それでも最初は、王宮精霊使いとしての地位もあるハルナに対して失礼な態度はとれないと頑なにその依頼を拒んでいた。

ハルナは外堀を埋めるように、ソフィーネ、エレーナにお願いをしてマーホンといるときは気軽に接してもらえる雰囲気を作ってもらうようにお願いしていた。

エレーナはいつも通りだったが、ソフィーネは案外早い時期に上下関係がない接し方をしてくれるようになった。

そのことがあってかどうかは判らないが、今のような気軽に接してもらえる関係になってくれたのだった。


集落の中を見渡すと、わずか一ヶ月足らずの間で村と呼べるような立派な街並みが整備されていた。

ステイビルはふもとに戻り、まずそのことに驚いた。


(いったいどこからそんな資金が……?)


ここはモレドーネからも離れた場所であり、資材の運搬にかかる人件費や輸送費は通常の町などに比べてコストがかさむ筈だ。

確かに今回は王子としての命令で、この集落を救済すべく資源の提供や防衛の依頼を指示した。

さらにはここがドワーフの町……解決した後のエルフの村との交渉拠点となることも説明をしていた。

そのことはあの時点ではどのようになるか分からない状態であったし、”ゆくゆくは”ということも話していたつもりだった。

この集落は、そこまで重要視される拠点ではなかった。

二つの種族に対しても王国が統治するわけではなく、自治権はそれぞれに委ねるつもりであったしそれぞれが独立または共存し合えるための基盤を構築するまでだけ手を貸すつもりでいた。

当然その後も援助の要請があれば他の町と同様に、惜しみなくその要請に従うつもりではいた。


しかし、それはまだまだ先の話。

現時点の段階で、そこまで資金を投入して開発するにはリスクが高く危険な状況だった。

そんな驚くステイビルを察してか、ハルナと再会したことで顔を上気させほんのりと赤くするマーホンが近付いていく。


「……いかがです?ステイビル王子、随分と様になってきましたでしょ?」


声をかけてきた人物を特定し、ステイビルはその裏に起きたことを察した。


「なるほど……マーホン。あなただったのか」


マーホンはステイビルのその言葉に、ニッコリと無言の笑顔で応えた。

その表情はハルナたちに見せた友愛のものではなく、王国や他の貴族などを相手にする際の冷徹な損得勘定だけで行動する商人の表情だった。


「流石に”どうして?”とはお聞きにならないのですね?……王子のプライドですか?」

「どう捉えてもらっても構わないよ、マーホン。だが、一つだけ言わせてくれ。……”ありがとう”」


ステイビルの感謝の言葉を聞き、今までの商人の顔から一緒に旅をしてきたマーホンの顔に戻っていく。


「そんな、礼には及びませんよ。ステイビル王子、わかっているかとは思いますがこちらも”商売”ですのでこの事業に関して投資しても問題がないと判断したうえでのことですから、お気になさらず……それに」


ステイビルは、この地で新たな種族間の交流およびそこから流出するエルフとドワーフの技術によって収益が生まれることを判断したマーホンを称賛した。

しかも最初のうち……いや、当分の間は利益など回収できないだろう。

財力に余裕があり、先見の明が無ければできない判断だ。

さらに言えば、ここまで付き添ってこれた流れもマーホンの運の良さなのだろう。

だがマーホンは、それ以上に何か思惑があるような口ぶりをする。

ステイビルは、マーホンの語尾を繰り返した。


「……それに?」

「それに、ハルナさんと”他の方々”が運命を切り開いた場所でもあります。これでハルナさんの功績は王国中に広がっていくことになるでしょう。いや、私がそうしてみせましょうとも……くくく」


今までとは全く違う喜びの笑顔を浮かべるマーホン。

ステイビルはマーホンの歪んだ愛情の片鱗を見た気がしたが、そこには触れずマーホンの功績だけを称えることにした。


数日後、ナルメルが村にやってきた。

ノイエルを迎えに来たのだった。

一緒に来たナンブルは、現在暫定で村をまとめているポッドに挨拶をする。

そして、これからステイビルのもとに助け合ってこのグラキース山を守っていきたいと語ってくれた。

ポッドも、その名に対して裏切ることなどできるはずもない。

どちらからともなく、お互い差し出した手を握手を交わす。

丁度そこにはドワーフの代表としてイナが、その警備としてデイムが滞在していた。

そこで各種族の代表が集まり、手を取り合ってこれからの協力を約束し合うことができた。

これに満足したステイビルは、いよいよ本来の目的である大竜神の住処を目指すことになる。




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