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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-180 エルフの村の防衛1



「……サナ、来たぞ!気を付けろよ!!」

「はい!」


サナが返事をしたと同時に、広場を見つけたレッサーデーモンは高度を下げていった。


「ギシャァー――――!!」


地面に降り立つ悪魔は、ひと声あげ威嚇する。

隠れた子供たちから、鳴き声が聞こえてくる。

それを必死になだめる、エルフの声も。

ブンデルは、弓を構え矢を付ける。

サナは、近くに置いてあった矢筒を肩にかけた。

警備のためにいたエルフたちも矢を構える。

指揮をとる一人のエルフが、声を掛け矢は一斉にレッサーデーモンに向かって放たれた。


レッサーデーモンは羽を数回はばたかせ、風を巻き起こす。

その風を受けて矢は、狙いを定めた獲物から軌道を変えていく。

攻撃されたことに対する怒りか、レッサーデーモンは上を向いてさらに威嚇するように嘶いた。

二本ある右側の下の手を上に向け、それにかぶせるように上の手を下に向ける。

その間には黒く丸く渦巻く高密度な球体が形成され、その様子を見たものは頭の中で必死に警告を鳴らしている。


「……逃げろ!!!」


恐怖に支配されて足が動かなくなっている警備兵たちに対し、ブンデルは大声で逃げるように掛けた。

その声に我に返った警備兵たちは、二人ずつに別れ左右に飛んで移動した。

ブンデルはサナの手を引いて、左斜め後ろに飛び込んだ。

反対にはカムフラージュした入り口があるため、その方向に逃げなければ何もないところには攻撃しないだろうと考えたうえでの判断だった。

しかし、これで相手の攻撃対象となる確率は三分の一。

万が一に備え、ブンデルは悪魔の方へ視線を送る。

相手が選んだターゲットは、左側に逃げた警備兵たちだった。


「――たすッ……!?」


――ドン!!!


助けを請う言葉を全て言い切る前に被弾する。

敷き詰められていた芝生は剥がれ、土と草の粉塵が爆発した場所を中心に舞い散る。

サナは駆け寄ろうとするが、ブンデルがその腕をつかみ止める。


「どうしてですか!?早く助けないと!?」


ブンデルの視線は悪魔の動向を注視したまま、顔をゆっくりと横に振った。

土埃が晴れていくと、そこには”生き物であった”二人分の残骸がそこらに散乱していた。

サナはその惨状に、手を口で塞ぎ吐き出しそうな弱音を必死に堪えた。

隣でブンデルが、頑張っているのに自分が乱れてしまっては足手まといになると感じたから。

その惨状に耐えきれなかったのは、反対の方へ逃げた警備兵だった。


「う……うわぁあぁぁぁぁああぁ!!!」

「お、おい!?……くそっ!」


もう一人の相方が止めようとしたが、手を伸ばした時には既に捕まえられる範囲を越えていた。

悪魔に向かうエルフは腰から短剣を抜き、ラウンドシールド越しに構えてレッサーデーモンに切りかかった。

もう一人のエルフはレッサーデーモンの腕が、怪しい動きをしているのを感じサポートするために矢を番え弓を引いて放つ。

矢が走り込むエルフを追い抜くと同時に飛び掛かり、相手を刺突する連携攻撃だった。

何十回、何百回と練習したコンビネーション。

とっさの対応だったが、身体が覚えていた。

レッサーデーモンからは、突然矢が飛び出してきた形になる。

しかも至近距離のため、羽による回避は不可能の位置だった。


「――喰らえ!弟の仇!!!!!」


そう言ってエルフは短剣を、悪魔の首に向けて突き出した。

しかし、その切っ先は首の直前で止まる。

レッサーデーモンの四本のうちの一つが、しっかりと腕をつかんでいた。

そして反対側の一本も後ろから放たれた矢が、その片手の中に握られへし折られている。


「グォオオオオオオ!!!」


エルフを掴んだ手を二三度振り回して、そのまま地面に叩きつける。

耳には、聞こえたくもない骨が折れて関節が砕ける音が響いてくる。

頭と掴まえられた方の関節が、本来動かない方向に曲がっている。

引き上げられた身体は、もはや意識は無く糸の切れた人形のようにぶら下がっていた。

ブンデルもサナも、その悲惨な光景から視線を外すわけにはいかなかった。

敵の一挙一動を見逃せば、自分たちの命に関わってくる。

生き延びる……いや、勝つためにも相手の行動を見逃してはいけないと気持ちで持ちこたえた。

そして反対の手でまた、あの”黒い球体”を作っているのが見える。

レッサーデーモンはその先の、矢を放ったエルフを見ていた。


「逃げろ!」


ブンデルは、相方の悲惨な姿を見て既に意識が崩壊しかけているエルフに向かって叫んだ。

だがその目は虚ろでもう何も見えていなく、長い耳も何も聞こえていなかった。


――ドン


結果は同じだった。

草の絨毯がめくれ上がり黒い焦げた土が見えており、もうそこには何もなかった。

残ったのは、ブンデルとサナだけだった。

ブンデルはサナだけでも逃がすことはできないかと、レッサーデーモンの挙動を注意深く見守りつつ思考を回転させる。

だが、レッサーデーモンはそんな二人に興味を示していなかった。


(よし、今のうちに……)


そう判断したブンデルは、瞬時にしてその決断を取り消した。

悪魔の家畜のような鼻は、何かを探すように嗅ぎまわっている。

何かを見つけたその先は、カムフラージュさせた子供たちを隠した洞窟だった。




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