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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-173 魔法対決



「エルフの民の最強の戦士だけが習得できる魔法の矢で、この世から消え去れ!」


ダークエルフはブンデルに向かって魔法の矢を放った。


――ゴォウ!!


ブンデルは何とか身を守ろうと、頭を抱えて身体を丸め辛うじて矢を避けた。


(――なに!?)


ダークエルフの目には魔法の矢が逸れたようにも見えたが、そんなはずはありえないと頭の中でブンデルの強運を称える。


「これは……マジックアロー!?」


「ほぅ、どうやらこの魔法を知っているようだな。……これはエルフの中でも認められたものしか習得できない魔法だ。お前たちのような苦労もなく、のうのうと生きてきた奴らにはどれだけ時間をかけても手に入れることはできないだろうよ!!」


そういうとダークエルフは次の攻撃の準備に取り掛かる。

そして、今度こそブンデルを仕留めようと術式に魔力を込めていく。


「さて、幸運は何度も続きはしないぞ……今度こそ戦士の矢に貫かれて消え去れ!!」


ブンデルはその瞬間サナの顔が浮かび、この技に対抗する術式を思い出す。


「……悪いけど、簡単にやられるわけには行かないんだよ!」

「何をいまさら……力無きものは廃れていく運命だ」


ダークエルフがそう告げた瞬間、ブンデルの前に魔力の文字が浮かび上がり魔力が高まっていくのを感じた。


「な、何なんだ……それは!?」

「わからないのかい?……”最強のエルフの戦士”が身に付けることのできるヤツだよ」


その言葉に信じられないという思考がダークエルフの頭の中に駆け巡る、それと同時にその魔法の危険度も今までの経験が警報を鳴らしていた。


「――クソオオオオオッ!!!」


ブンデルの魔法に身の危険を感じたダークエルフは、魔力を途中で込めたままの状態で魔法の矢を放った。

しかし既にブンデルの術は完成し、術者の合図を待つだけとなった。


「……いけ”マジックアロー”!」


ブンデルが伸ばした手の前の術式から一本の光の矢が飛び出した。それはダークエルフが放ったものよりも精密で、魔力が凝縮されていた。


――ュッ!!


飛び出した光の矢は、真っ直ぐに相手の矢に向かって進んでいく。


バン!!


真正面から矢はぶつかり、相手の矢は光の霧となり、辺りに霧散した。


「なにぃッ!!!!」


だがブンデルが放った、その矢の勢いは止まらない。

矢は、逃げようとするダークエルフの方向に向かって追従していく。


「……あ」


ダークエルフに被弾する直前、魔力を全て注いだブンデルは意識を失ってしまう。

それによって光の矢は、この世に存在する権限を失い消滅し始める。

ダークエルフはその矢の力を見て、自分の最後を悟り最後の光景をしっかりと目に焼き付けた。


ドン!!!!


ダークエルフは光と衝撃に包まれて、視界と聴覚が閉ざされた。

そのまま身体は吹き飛ばされ、意思を持たない人形のように、なすがまま転げていった。


――うぅ


次第に意識が戻って行く。

どのくらいの間、意識を失っていたのだろうか。

口の中が、砂利でザラザラする。

吹き飛ばされて転がった時の打ち身が原因か、あちこちに鈍い痛みが残っている。


(痛みがあるということは、生きている……そういうことか)


ダークエルフは痛みを食いしばりながら、うつ伏せの状態から手をついてゆっくりと身体を起こしていく。

痛みはあるが、動かないというわけではなさそうだった。

顔をあげると、目の前には自分が今この場所にいることを証明するような痕跡が残っている。

吹き飛ばされて転げた場所の先には、草木がなぎ倒されて広い空間ができていた。

それが、細いたった一本の魔法の矢の威力を表していた。

次第に視界も回復し、遠くまで見渡せるようになってきた。

そこには先程まで命を奪える直前まで行っていた、エルフが意識を失い倒れていた。

腰にはまだ、最後の一本のダガーが下がっていることを確認した。

その一本を手の中に握り、ダークエルフは足を引きずりながらブンデルの側に向かっていく。

途中、木の根に引っかかりよろけそうになったが、痛みを堪えながら踏ん張って見せた。

その途中、自分でもなぜこのエルフと戦っているのかが分からなくなってきていた。

奪うはずだったエルフの子も、今はあの茂みの中に隠されてわからなくなっている。

今まで簡単に奪えたはずの他人の命、こうまでして邪魔されたのは駆け出しの頃でもそこまでの苦労はなかった。

あのマジックアローの魔法があったからこそ。

だが、決して戦闘や防御技術を磨く努力をしていないわけではなかった。

現に、武術の面では明らかに自分の方が優位だった。


(しかし、この結果だ……)


ダークエルフは決して見下していたわけでも、手を抜いていた訳でもない。

相手もそれなりに、実力があったのだろう。


「……だが、これで終わりだ」


ダークエルフは上から、意識のないブンデルの姿を見下ろす。


「最後まで残っていたものが、勝者なのだよ」


ダークエルフは両膝を地面についてダガーを両手で掴み、その刃先を胸の中心部に当てる。


「悪いな……これも生き抜いていくために仕方が無いんだ」


そういうとダガーを頭上まで持ち上げ、一旦動きが止まる。

何度かゆっくりと呼吸を繰り返し、振り下ろす前の最後の息を吸い込んだ。


そして――


ダガーはブンデルの命を刈り取るため、胸部に目がけて勢いよく振り下ろされた。




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