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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-126 緑の塊



ソフィーネはゆっくりとその声の主を確認した。

すると、そこには信じられない人物が姿を見せていた。


(あれは、ヴァスティーユ!?……何故ここに?)


ソフィーネは気配を消し、二人の会話に聞き耳を立てる。


「商品ですって?……ふーん、アナタも碌なことを商売にしてないわね。って、私が言える立場じゃないんだけどね」

「うるさい!さっさとここから立ち去れ!!」


ランジェはヴァスティーユに向かい、拳を突き出した。


(もらった――死ね!!)


そう思って握りしめて中指の関節を立て、ヴァスティーユの眉間に打ち付けた。

しかし、ランジェの手には何も当たった感触がない。


「ちょっと、乱暴するならこちらにも考えがあるわよ?って言っても、今回は命令されていないから何もしないけど……どうしてもって言うなら」


そう言って、ヴァスティーユはペロリと怪しく自分の唇を舐めた。


「命令……とは?何のことだ?何をしにここにやってきた?」


ランジェは命令という言葉に反応を示し、目の前の女から情報を引き出そうとする。


「私はいま、忙しいのよ。お母様からある人を探すように言われているの……だから本当は、こんなところで油を売っている暇はないんだけどね」


ランジェはそのまま黙って、ヴァスティーユの次の言葉を待ってみた。


「……そうしたら、ここから私の大好きな**”恨み”の濃い匂い**が漂ってきたのよね。その匂いをたどってきたらこの緑の塊に着いたってわけなのよ」


『仕方がないじゃない』と、両手をあげて肩をすくめるポーズをとるヴァスティーユ。


「それにこれ、人間じゃないわね。この感じは……もしかして”エルフ”?」


その瞬間、ランジェは隙を見て目にもとまらぬ速さで、ヴァスティーユの顔面を狙いハイキックを繰り出す。


「ほんっと、アナタお行儀が悪いわね」


ヴァスティーユは片手で、その蹴りを受け止めた。

そして掴んだ足を、黒い炎で焼いた。


「うわぁああぁあああ!?」


ランジェは、炎が身体に燃え移る前に靴を脱いでヴァスティーユから離れた。


「その反応からして、この中身はやっぱりエルフなのね……本当はこのエルフのお手伝いをしてあげたかったけど、そろそろアイツら来そうだし……」


奥の通路から数人走ってくる音が聞こえる。


「それに、もう一人、人の話を盗み聞きしている泥棒もいるようだしね……」


ヴァスティーユはソフィーネが隠れている、通気口のような穴に目を向ける。


「それじゃあ、面倒なことになる前に私は帰るわね。そこのアナタ、”ハルナ”さんによろしくね……」

「ま、待て。待って!?……助」


ランジェはソフィーネがここにいることに気付き、ヴァスティーユに助けを求めようとした。

だが、ヴァスティーユは冷徹な笑みを浮かべ黒い霧となり姿を消していった。


――トン


ランジェの背後から、小さな着地音が聞こえた。

恐る恐る振り返り、その姿を確認する。

そこには自分の持っていた短剣を、上に投げてクルクルと回しながら近づいてくる。


「いや……やめて……こないで……」


後ろに後ずさりしながら、ソフィーネと距離を取るが草の塊が入っている牢にぶつかった。

ソフィーネは凍った笑みを浮かべたまま、距離を徐々に詰めていく。

そして遊んでいた短剣を握り、ランジェの顔をじっと見る。


「あ……あ……」


ランジェの口からは既に言葉ではなく、ただの音が漏れている。


「ソフィーネ、そこまでだ」


この場所に、新しい声が鳴り響く。

その声を聞き、ソフィーネの表情は冷静な顔に戻りハルナたちを迎え入れた。


「お待ちしておりました、ステイビル王子」

「すまん、ここに来るまでに複雑な迷路になっていたため手間取ってしまった」

「いいえ、問題ございません。こちらの方も、無事に決着がつきましたので」

「……ということは、ソフィーネさん勝ったんですね!!」


ハルナの言葉に笑顔で返し、横目で先ほどまで追い詰めていたランジェに目線をやる。

もうランジェに反抗の意思はないと思うが、こういう時程油断しないように注意した。

この中に入った際に、ソフィーネはランジェを押さえつける役を買って出た。

ここには必ず、ランジェがいると踏んでいたからだ。

ソフィーネが足止めをしているその間に、ハルナたちはノイエルの母親が捕えられている場所を見つけ出すという作戦を取った。

そして、ランジェを追いかけてこの場所を発見したことも伝えた。


「……なぜかヴァスティーユもここにいたんですが、何かに惹かれて偶然ここに立ち寄っただけのようでした」

「ヴァスティーユが!?」

「その話はまたあとで聞くとして、まずはこの女を拘束しよう。ブンデル、すまないがロープを作ってくれないか?」


そういうと、ブンデルは魔法で蔦を伸ばしそれを絡めてロープを作り上げた。

そのロープでランジェは縛り上げられ、身動きが取れなくなった。

念のためソフィーネは、ランジェがこれ以上の武器などを所持していないことを確認した。

そして一同は、牢の中にある草の塊に目を向けた。


「……これって、ブンデルさんのと同じ魔法では?」

「えぇ、これってログホルムの……あ!」


外の気配を察したのか、牢の中の緑の塊がほどけ始めその姿を表そうとしていた。




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