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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-125 逃走



「いいわよ、かかってらっしゃい」

「なめんなぁクソがぁぁぁ!!!」


ランジェは素早い動きで踏み込み、ソフィーネとの距離を一気に縮めた。

殴りかかると同時に、逆手で持った短剣で切りつける。

ソフィーネはその攻撃を外に交わした。ギリギリで交わしたことにより前髪が少しだけ剣に触れ切り落とされる。

相手の手首をつかみ、伸展し切った肘に手を当てて肘を決めようとする。

ランジェも瞬時に対応し、肘を曲げ身体を右側にひねり左手の示指と中指で相手の両眼を潰しにかかる。

ソフィーネは肘に当てていた左手を離し、掌底で相手の突き手を打ち上げ軌道を逸らす。

掴んだ相手の手首を引っ張り体勢をよろけさせて、両腕が不自由になってがら空きになった相手の腹部にカウンターで膝を入れる。


「――がっ……はぅっ!!!!」


ランジェは瞬時に腹部に力を入れその衝撃に備えたが、ソフィーネは確実に急所を狙ってきており堪えきれずに声が漏れ出てしまう。

痛みと苦しみで気を失いそうな意識を必死に堪えて繋ぎ止めた。

そこはさすがに、訓練された元諜報員といったところだろう。

だが、堪えることに全力を注いでいるため脚に力が入らずに片膝を付いてしまった。

ランジェの視界には、次の攻撃が目に入ってくる。

ソフィーネは、しゃがみこんだランジェの下顎を狙って蹴り上げてきた。

とっさに身を後ろに転がし、ソフィーネの足先の軌道から何とか逃れることが出来た。

そのまま数回回転し、ソフィーネとの距離を取る。

ランジェはすぐに前を向き、次の攻撃に対して警戒する姿勢を取る。

が、ソフィーネはこのチャンスに攻撃をしてこなかった。

前を見ると、ソフィーネは腕を組んでランジェのことを何も言わずに見下ろしていた。


「やめ……」


ランジェは笑う膝を手で抑えつけながら、立ち上がる。

ふら付きながらもその目はソフィーネにしっかりと向けており、その色は怒りで真っ赤に染まり充血していた。

絞り出した震える声で、ソフィーネに命令する。


「その見下した目で、私を見るのは止めろ!!あぁ、あの忌々しい姉妹の目付きと一緒じゃないか。やっぱりお前は私と組むことなんかできない、ここで消してやる!!」


ランジェは我を忘れて、短剣を振り回す。

そんな攻撃が、ソフィーネに届くはずがなかった。


「あなたはあの二人に何を教わってきたのかしらね?”私たち”にそんな出鱈目な攻撃が当たると思ってるの?戦いのときはどんな時も冷静にって何度も教わってきたでしょ?……あ、出来ないから逃げ出してきたんだ、もしかして?」

「うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!」


ランジェにソフィーネの声は、既に届いていなかった。

しかも無意味に振り回すだけなので、体力も激しく浪費していた。

ソフィーネもこれ以上は煽る必要はないと判断し、この涼しくも心地よくもないうっとおしい風を止めることを決意した。


「はぁっ……はぁっ……」

「もうそろそろ、あなたの踊りも飽きてきたから終わりにさせてもらうわね」


ソフィーネはありきたりに、手の指の関節をポキポキと鳴らしながらランジェに近付いて行く。

その目は諜報員特有の、感情を持たない冷徹に任務をこなす機械のような目をしていた。

ランジェはその目に、恐ろしい訓練の日々であの姉妹に痛めつけられた記憶が恐怖と共に蘇る。

ソフィーネは、ランジェが落とした短剣を手に取る。


「あ……いや……助け……」


――ドン!


どこかで爆発音がし、地震のような揺れが起こる。

隙を見てランジェは、腰のポケットから灰と刺激物を混ぜた小さな袋を手に取り床に投げつけた。

その途端に今いる場所は真っ白に染まり、視界が奪われていく。

これは、諜報員の小道具として緊急用に使うものだった。

ソフィーネはすぐにこの煙を吸い込まない様に、布で口元を押さえ目は薄目で状況を見逃さないようにする。


(ガコン……)


この場所のどこからか、何かを外した音が聞こえた。


(隠し通路か……?)


ソフィーネは目の中に刺激物が付着しない様に気を付けながら、舞い上がる粉の動きを見つめる。

すると、空気がこの場所から出ていく流れを見つけた。

その場所に近付き、足の裏でその周囲を探る。

すると、人が一人通り抜けられそうな穴が開いているのを見つけた。

ソフィーネは、手に持っていた短剣を穴の中に落とした。


キー……ン


音からして、そんなに高くもなく罠のようなものもないと判断した。

ソフィーネは床に座り、脚を入れて下の穴に入り込んだ。

入ると四つん這いの状態で進んで行くことが出来るくらいの高さの穴だった。

そして進んで行くと、ある別な部屋に繋がっていた。


「……?」


何か奥から話し声が聞こえる。

どうやら、誰かと会話をしている様子だった。


「……だ、お前は!?」

「私はね、いい香りがしたから辿ってきたの。そしたらここから出ている香りだったの……それだけよ?」

「嘘をつけ!うちの商品を狙ってきたのだろう?……あぁ、今日はなんて日だ!?」


一人は先ほどまで相手をしていた、ランジェだが、もう一人は聞いたことのあるような声だった。

ソフィーネはゆっくりとその声の主を確認した。

すると、そこには信じられない人物が姿を見せていた。


(あれは……ヴァスティーユ!?)




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