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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-118 袋の中身



麻袋に触れたその時、後ろから声が聞こえた。


「あら、あなたは……またお会いしましたね?」


その手には鞭を手にし、もう片方の手は額に穴の開いた男の顔を手で掴んでいる。

ソフィーネが倒した男も、延髄の辺りに穴が開いておりその命を止められていた。


「お前は……」

「あれ、忘れたのかしら?山のふもとの集落で一度お会いしたと思ったんだけど?」


そう告げて掴んでいた男の頭を離すと、男は崩れるように倒れ込んだ。


「忘れてないわ……あの時のお返し、まだしていなかったもの。と、その前にこの袋の中身は何なの?」


ソフィーネは何となく予想がついていたが、ここはあえて相手の反応を待ってみた。

相手はその問い掛けに、口を手で抑えて笑いを堪える。


「ふふっ。中身は何となくわかってるんでしょ?……うちの”商品”よ?」

「随分と悪趣味な品を扱ってるのね……」

「それがね……案外高値で売れるのよ?人の趣味って恐ろしいものよね!」


女は挑発するように不気味な笑みを見せ、舌なめずりをする。


「あなたも相当イカレてる気がするけどね……まぁ、なんにしてもこれはここに置いて行ってもらうわね」


そう言って、ソフィーネは袋を庇うようにして短剣を構える。


「あはははは!イカレてるですって?この私が……?くくくっ。それ、褒め言葉!」


そう言って女は鞭をしならせ、その先についている棘がソフィーネの脚をめがけて飛んできた。


――ダン!……ビンンッ!


ソフィーネの足の裏には、しっかりと鞭が踏みつけられていた。

相手の女はその鞭を回収しようと引くが、ビクともしなかった。


「私の大切な道具に、酷いことをしてくれるのねぇ。あんまり動きたくないから、それを使ってたんだけど……実はこっちの方が得意なのよね」


手の中にあった鞭の柄を手放し、後ろに持っていた短剣を両手に持った。

一つは順手で、もう一つは逆手で持つ。

その構えは、どことなくソフィーネと同じような構えに見えた。

が、いまは余計なことを考える暇はなく、女はソフィーネに向かって襲い掛かる。

女は後ろ向きに飛び込んで回転を利用して、逆手の短剣で切りつけてくる。

ソフィーネは一撃目を同じく短剣で弾き、順手の短剣を背中をそってギリギリかわし、鼻先に短剣の冷たい切り裂く空気を感じた。


「ふふふ、やるわね。最初の時と違うけど、この短い期間で何かあったのかしら?」

「……何を言っているのかしら?自分が力が衰えたことを、他人のせいにするようじゃこの先成長することはないわよ?」

「クククっ。いいわ……あなたいいわよ、”ソフィーネ”。あなたみたいな人、嫌いじゃないわ」


ソフィーネは驚いた、一度も名乗っていないはずが相手は自分の名前を呼んでいた。

しかし、そのことを動揺すること見せてしまえば相手に付け込まれてしまう。

ソフィーネは必死に表情を消して、平常を装ったが無駄に終わった。


「どうしたのソフィーネ……動揺しているのがみてとれるわよ?敵を前に弱みを見せてはダメだと、”マイヤ”と”メイヤ”に教わらなかったのかしら?」

「――!?」


自分の仲間であり上司である二人の名前が出てきたことに驚いたが、ソフィーネは一瞬にしてその気持ちを抑え込み考えを整理する。


(私の名前を知り、あの二人の名前とその関係も知っている……この女、もしかして!?)

「……ようやく、結論にたどり着いた顔ね。まぁ、アレだけヒントを与えてあげれば……ね?諜報員としての資格があるならそれくらいの実力は見せてくれないと」


女は手元で短剣を宙に投げ、クルクルと回して遊んでいた。


「お前は……一体」


女は足先で鞭の柄を蹴り上げ、その手に取り一瞬にして回収する。


「まぁ、今回はかわいい”後輩”に免じてその商品は諦めるわ。中々手に入りにくいものではあるんだけどね……」

「……名前は?」


ソフィーネは目を細め、その女の顔を見ながら名前を聞いた。


「あなたもね、諜報員の端くれならそれくらい自分で調べなさい。まぁ、あの二人に聞けばすぐに教えてくれるわよ……それじゃ、またね」

「ちょっと待……!?」


女は、ソフィーネが止める前に既に姿を消していた。


「何なの……一体」


ソフィーネは不完全燃焼の気持ちを吐き捨てて、縛られている袋の方へ歩いて行く。

そして地面に膝を付き、縛られた袋の結び目を短剣で切り取る。

そして袋をとり、中を確認した。


「子供……エルフ!?」

「ソフィーネさん!!」


茂みの向こうから、アルベルトが声をかける。

ソフィーネもその声に応えて、アルベルトたちをここに呼んだ。

そして、全員が集まりソフィーネは一連の出来事を全員に報告した。


「……そうなのね。あの女は、何か東の国に関係があったのね」

「だが、その女のことを調べている時間は今はない。そのことはまた、モイスティアに戻った時に調べることにしよう……それで、そのエルフの子は?」


ステイビルはブンデルに、この子に見覚えがないか確認する。


「村を出て結構な時間が経っていますからね。見覚えはないですよ」


ブンデルは、両手を広げたポーズでステイビルの質問に答える。


「そうか……それで、その子の様子は?」

「一応、ケガはなさそうです。ヴィーネが見ても、闇に侵されたというような感じでもないですね……念のためサナさんがヒールを唱えてくれました」


ヒールを掛けた場合、修復される個所が光るはずが今回はそういった反応はなかったとのことだった。


「とにかく、この子を連れてエルフの村に向かおう。そうすればこの子の手がかりも掴めるかもしれんしな……」


そう言って、ハルナたちは再びエルフの村に向かって歩を進めた。




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