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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-115 エルフとドワーフの力



現場の近くでは一人の女性が、がれきの中に入ろうとして周りの者に止められていた。


「誰か……誰かうちの人を助けて!あの下にうちの人が!!」


その女性は崩れかけた荷物や木材の下敷きになった自分の夫を助けようと中に入ろうとしたが、今にも崩れそうな状況で二次災害が発生しそうな状況で止められた。


「おい、どうした!……なんだこれは!?」


ポッドはこの状況を見て思わず言葉を失った。

この中に人がいること自体が、信じられない状況だった。

しかも、今救助に向かうとこの瓦礫が更に崩れてきて更なる被害が起きてしまうと判断した。

だが、この中に人が埋まっているとの報告で、何とかしたいとしようとするが、全くその答えが導き出せなかった。


「ど……どうすれば」


ポッドの後を追ってきたステイビルたちも到着したが、この状況を見て愕然とした。

ハルナも風で吹き飛ばしたとしても更に崩れてくる可能性があるため、うかつには動かせない。

エレーナの力で全てを凍らせたとしても、中に埋もれてしまっている人まで凍らせてしまうことになる。


「くそっ!?何かいい手はないものか……!」


アルベルトもソフィーネも、この状況は何の力を持たない人では手が出せないことはすぐに分かった。


「どんな状況で……うわっ!」


遅れてきたブンデルとサナも、この惨状を確認した。


「助けようとすると、あの荷物が崩れるんですね……あの瓦礫を止めることさえできれば」


サナもこの状況を見て必要な策を把握するが、自分の力ではどうすることも出来なかった。


しゃがみこむと、辛うじて下敷きになっている男性の手が見える。

この状態での生死は確認できないが、呼びかけに対しては反応がなかった。


「――!」


ブンデルの頭に、ある策がひらめく。


「ステイビルさん!?」


ブンデルはステイビルの傍に駆け寄り、策を話した。


「……ふむ……そうだな……今はそれしかないか?」


そう言って、ステイビルは手短にポッドと女性に説明しその策の承諾をとる。

ポッドも自分たちでは何も手がないので、全てを任せることを伝えた。


「よし!ブンデルさん。やってくれ!!」


ブンデルはステイビルの言葉に頷いて、がれきの近くまで寄る。

そして目を閉じて、気持ちを落ち着かせて呪文を唱えた。


『健やかなる成長を……”ログホルム”!』


すると瓦礫の合間を縫うように草や蔦が生え、瓦礫の山を覆っていく。

それにより、草のネットが出来上がり、瓦礫の崩落を防いだ。


「よし、救出しろ!ただし崩落注意し、素早く確実に行え!」


するとただ見ているだけの村の仲間たちは、ここぞとばかりに見事な連携を見せ無事男を救出した。


「ポッドさん!」


ポッドは呼ばれて救出された男の傍に近寄った。


「……!?」


男の胸からは、骨が突き出ており呼吸も早く浅く停まりかけていた。

男の奥さんも近くに駆け寄ろうとしたが、この姿を見せてはいけないと無理やり遠ざけた。

ステイビルもこの状況を見て、助かる見込みがないと口をつぐんだ。


「そ……そんなぁ」


ブンデルも、自分が手を貸した者を助けられない状況に、体中の力が抜けていった。


「ブンデルさん……」


その状況を後ろで見ていたサナが、座り込んだブンデルの肩に手を置いた。

サナは目を閉じて深呼吸をし、心を決めた。


「私に見せてください……」


サナは、ステイビルに声をかけてその男の傍に近寄った。

サナは、その男の横で両ひざを地面につき、祈るように両手を胸の前で組んだ。


『我らが母なる大地の神よ、この者に生きる力を……”ヒール”』


男の身体の開いた傷口から、あたたかな光が包み込む。

そして、自然と光が収まると男の身体には傷が見えなくなっていた。

男はまだ昏睡状態だが、呼吸は先ほどと異なり落ち着いた状態に戻っていた。


「やれることはやってみました。後は、安静にして様子を見てください」


その様子を不思議そうに眺めていた村人は、何が起きたのかわからずただ呆けていた。


「おい、早く運んだ方がいいんじゃないか?」


ブンデルに掛けられた言葉でポッドは我に返り、男たちが被害にあった男を自分の家に運んだ。

カイヤムは男の状態を見るために、付いて行った。


「ステイビル王子……私は……夢でも見ているのでしょうか?あんなに重症だったケガが……もう諦めておりましたが」


今まで見たこともないような現象に動揺するポッドは、ステイビルに正直に今の心境を告げた。


「あれは、ドワーフの力だそうだ。魔法というものらしい……」


ステイビルもこれまでは見たことのない能力をどのように説明していいか分からなかったが、その効果は安心できるものだと伝えた。

ポッドはその言葉を聞き、ブンデルとサナの前で跪く。


「誇り高きエルフ様、ドワーフ様。この度はこの惨事を手助け頂き、何とお礼を申し上げて良いのか……感謝の言葉だけでは足りません」


そのポッドの言葉に、ブンデルは嫌な気持ちが湧いてくる。

人間は未知の力を目にしたときに、その相手を神格化してしまうことがある。

イナのような本心を知る魔法は使えないが、今までの経験から嫌な感じがしていた。

サナはそのブンデルの気持ちを察したのか、代わりにポッドの挨拶に応えた。


「大丈夫です。私たちはステイビル王子の仲間としてここにいます。ですからそこまで気にされなくても結構ですよ。それよりも、この状況を整理する方が先決ではないですか?」


「……有難うございます、ドワーフ様。それにステイビル王子」


ポッドはそう告げて、感謝の気持ちの大半をステイビルにささげた。

それによって、ブンデルの嫌な気持ちも落ち着いたのだった。




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