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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-111 確認4



「それでは、もういいのですか?」

「はい。お手伝いしていただき、ありがとうございました」


ステイビルの言葉に、イナは笑顔で返答をした。


「ちょっと!イナ、ニナ、これはどういうこと!?」


自分のことで周りに迷惑をかけていたため、ずっとサナは黙って見守っていたが様子が急変したことで、二人に対して怒りの感情が芽生えてくる。


「サナ、あなたの決心を確認させてもらったの。どんな気持ちでこの町を出ていこうとしていたのかをね……」

「それに、本当にアナタがどの程度本気なのか知りたかったのよ。でないと、出たのはいいけど何もしなくて戻ってきたんじゃ、時間の無駄でしょ?」


イナとニナが、サナに対し試していたことを明かした。

それは、二人が妹のサナを心配してのことだと説明しこのような方法をとったというのだ。

それに、サナだけの心配でないことも告げる。


「それにサナ、ブンデルさんが好きなんでしょ?……あんたブンデルさんに、その気がなかったらどうするのよ!?」

「そうよ……サナ。あなたブンデルさんにそのことを確かめたの?」


サナは顔を真っ赤にしながら、顔を横に振る。


「うわぁ……」

「ドワーフの女性は……容赦ないわね」


ハルナとエレーナは、思わず言葉を漏らした。

ハルナは、自分だったら本人を目の前にしてバラされたらこの場から消えてしまいたい衝動に駆られるだろう。

幸いなことに、今回は傍から見ているだけで心はもぞもぞとするが、ハルナ自身にダメージはない。

だが、当人のサナとブンデルはそうではなかったようだ。

サナは顔を両手で隠し、椅子の上でうずくまっている。

ブンデルも同じ体勢をとり、自分の中に駆け巡る衝撃を必死にこらえている様子だった。


「で、さっきのやり取りで分かったの?」


ニナが、イナに問いかけた。


「申し訳ないですが、ブンデルさん。私の魔法であなたの言葉の真偽を調べさせていただきました……ごめんなさい」


ブンデルは、額の汗をぬぐいながらイナの顔を見る。


「ですが、私たちはあなたに大切な妹を預けることになるかもしれなかったものですから……昨夜の会食での様子や、あなたが身体を張ってまでサナを助けてくれたことからあなたの優しさは疑いようもありません。ですが、確認としてどうしてもあなたの本心を知っておきたかったのです」


イナがブンデルに対して深々と頭を下げて、無礼を詫びる。

その姿を見てニナも上から降り、サナの傍に近寄っていく。


「ごめんね……サナ。騙すつもりじゃ……きゃあっ!!」


サナがニナに飛び掛かり、その勢いでニナは倒れ込んだ。

サナは馬乗り状態になり、ニナの服を掴んでいる。

その目は真っ赤に染まり、涙が、下になったニナの顔にぽたぽたと落ちてくる。


「どうして……どうしてそんなことをするの!?心配したんだよ?……私……本当に……嫌われたんじゃないかって……もう、ニナたちに……会えなくなるんじゃ……ないかって!!」

「サナ……」


ニナが小さな声で、妹の名前を呼んだ。

その声の色は、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「ごめんなさい……サナ……でも」


サナの肩に手が掛けられ、サナはゆっくりと後ろを振り返る。


「もうやめるんだ、サナ。……ニナさんたちも悪気があったわけじゃない、サナのことを心配してのことなんだよ」


サナはニナの服から手を離し、自分の手で涙を拭いた。


「……それは判ってます。でも……本当に……本当に……辛かったの……姉妹に嫌われることが」

「わかるよ……その気持ち」

「あ……」


サナは思い出す、さっきブンデルがエルフの村を捨てて出てきたという理由を。

ブンデルは、今まで孤独だった。

ずっと一人で生きてきた。

だからこそ、サナの怖がっている気持ちを理解したのだろう。

しかしそこには、サナを思う気持ちがあってこその行動であることもよく理解できていた。

ブンデルは今まで、心配してもらったことなどなかった。

そのことがすごく羨ましく思え、イナたちの自分に対しての言葉も許せる気持ちになっていた。

ブンデルはサナに手を伸ばし、サナはその手を掴む。

その手を引き起こして、サナを起き上がらせた。


「すまない……ブンデルさん、サナさん」


この中で、ステイビルだけが事情を知っていた。

皆で話し合った後、ステイビルはイナとサナに呼ばれ、この件を相談されていた。

本当は、今回のような方法ではなく、別の手段でとイナとニナに提案したのだが、結局このような方法になってしまった。

ステイビルは、そのことを話して詫びたとしても、実際に協力してしまったためブンデルとサナを傷つけてしまった形となってしまった。

ステイビルも、頭を下げてブンデルとサナに詫びた。

サナは、ステイビルの言葉に首を横に振った。


「いいんです。ステイビルさんはどうせ、イナたちに言われて押し切られただけでしょうから……悪いのはイナたちです」


床に倒れていたニナも身体を起こして、イナと一緒にステイビルに頭を下げた。


「それで……どうするんですか?サナさんは……」


ハルナが、話の流れを変えようと実際の問題点について確認をした。


「それについては最初から決めています。サナの望み通りにする予定でした」

「だけど、それはブンデルさんの気持ちを確かめてから……ということですけどね」

「それじゃ、俺は……」

「はい、ブンデルさん。サナをよろしくお願いします」


イナとニナが、ブンデルに対して深々と頭を下げた。




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