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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-105 ブウムとの記憶3



約束の日から数日が経ち、結局その間もブウムはサナに会うことはなかった。

後日、デイムはブウムを見かけ後ろから呼び止めた。


「おい、ブウム。どうだったんだ?その、サナはなんて……」


前を歩いていたブウムは、立ち止まりデイムの方を振り返った。

そして、デイムの目を見てにっこりと笑う。


「え!?ま、まさか……」


デイムは、一瞬信じられなかった。

だが、親友が幸せになることの喜びもあったが、悔しいと思う気持ちがデイムの中でぶつかり合っていた。


「……ダメだったよ。多分俺、振られたんだな」

「ど、どうした?何があった?」

「それは……」

「おーいデイム!!何をしている。早く集まれ!打ち合わせを始めるぞ」

「あ、はい!いま行きます!……ブウム、後で話を聞かせてくれ、今夜いつもの場所にいるから来いよ?」


デイムはその夜いつもの店で会うことを約束し、一旦この場はお互いの仕事に向かうことにした。

その日、ブウムは約束の店には現れなかった。

翌日、デイムは出勤しブウムを問い詰めようとしたが、それは叶わなかった。

ブウムは昨日付けで警備隊を辞めていた。

誰もが必死に説得をしたが、ブウムの意思が思いのほか強く誰もそれを止めることができなかった。

その理由は、“自分に自信がなくなった”……だった。

デイムは隊の命令で、ブウムの住んでいる部屋まで向かうように言われ、急いでブウムの元へ向かった。


――コンコン


「おい、ブウム。……いるのか?」


カチャ


ドアノブに手をかけると、鍵もかかっておらず開いた。


「……ブウム?」


ゆっくりと中に入っていくと、部屋の中は真っ暗で何も見えなかったが次第に暗闇に目が慣れていき部屋の様子が見え始める。


「――!!」


中はきれいに整理されており、ベッドや棚や机は備え付けのまま。

それ以外のブウムの荷物は全て、なくなっていた。


「……ん?」


デイムは机の上にある封筒を見つけた。

それは、デイムあての封筒だった。

その封筒を手に取り、糊付けされている封筒を開けた。


『――デイムよ。今お前がこの部屋で呼んでくれていると信じている。俺は愚かだった、サナが絶対に来てくれていい返事がもらえると信じていた。……いや。いま思えば、勝手に“そう”思い込んでいただけだったのだろう。俺は、もうサナの傍にはいられない。ここを出ていくことを決めた。幸いにも“ペイジス”さんが、俺のことを必要としてくれた。今度は、そこで世話になることにした。狭い町だ、またどこかで会うだろう。そしたらまた声をかけてくれ。その時は、笑いながらみんなで食事でもしよう。お前は頑張れよ、それじゃあ――ブウム』


この日から三年後、この町の長老が入れ替わることとなった。

今までは一人のドワーフが長老としての役割を果たしていた。

今回このドワーフの町の歴史のなかで初めて、三姉妹のドワーフによって長老の座に就くことになった。

それと同時にジュンテイも警備兵総長を退役し、鍛冶屋となって町の行く末を見守ることに決めた。


「……ペイジス。聞いたことある名前ですね」

「ワシが総長に選ばれる前に、その座を争っていた男の名よ……イナたちが長老に就いて間もなくだったかな、病で命を落としたと聞いている」


ワイトの言葉に、ジュンテイが情報を付け足す。


「じゃあ、サナが行かなかったのが原因なの……かな?」

「そ……そんなこと言われても!?だって、あの頃は魔法の練習もやりつつ、仕事もあって結構忙しかったじゃない!!」


イナの言葉に、サナが必死な声で答える。


「確かにそうね……あの時は毎日クタクタで、いつも疲れてた記憶しかないわ」

「でも、それだけじゃないわ。ブウムも思い込みが激しい性格だから、ひとりで勝手に盛り上がっていたんじゃないの?」


ようやく落ち着いて話ができるようになり、過去の話とブウムの性格をわかっているニナがサナをフォローした。


「確かにそういうところがありましたね、アイツには」


ニナの言葉に、イナとサナとデイムも納得する。


「それで、これからドワーフの町はどうしますか?先日まで進めていたお話は、続けさせていただいても?」


ステイビルが、イナに対して以前話していたこれからのことを確認する。

確認のため周りのドワーフを見渡したイナに向かって、それぞれが頷いて返事をする。


「はい、それは問題ありません。このまま進めてまいりたいと思います」

「こういっちゃぁなんだが、これでこの話に反対する者はいないと思うぜ……」


ジュンテイの調べによると、以前ほど反対の意思が強い者もいないらしい。

なんとなくで、ブウムやその仲間に流されてついて行く者が多かったようだ。

今のままでも、生活には問題がない。

だが、ドワーフ内だけで生活していくとそれ以上の発展も望めないことは、薄々感じていたようだった。

それに、今回の水の問題も多種族との交流があれば、事前に防ぐことができることだった。


「でも、これも皆さんがいい人たちだからこそこの話に賛成しました。是非私たちの期待を裏切らないでいただきたいです」

「わかっています。人間も様々な者がおります。なるべくあなた方の期待を裏切らないように、まずは信頼のおける者同士で交流していきたいと考えていますから」


イナは、ステイビルの言葉に満足げに頷いた。

そして、今日はドワーフの町で泊まるように勧めた。


ステイビルたちも、その行為を有難く受けさせてもらうことにした。




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