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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-94 町の被害



「暗くて……何も見えない」

「確か、奥に道具箱が……あれ?」


ハルナたちは入ってきた穴から奥に進むと、すぐに曲がり角に突き当たる。

そうすると、出口から入ってきた光は既に届かない。

ドワーフの付き添いも、手探りで探しているが何度も来るような場所ではないので手間取っている。


「迷える足元に導きを……“エルライツ”」


ブンデルの掌の上に光の球が浮かび上がり、辺りが見渡せるようになった。

その明かりを元に、道具箱を見つけ簡単な装備と松明を用意した。


「ブンデルさんは、いろんな魔法を扱えるのですね」

「え?先ほどの“ログホルム”と“エルライツ”の二つしか使えないんだが……」

「私なんて、“ヒール”だけですよ?二つも使えるなんて、ブンデルさんは本当にすごいですよ!」


サナは魔法の明かりに照らされたブンデルの顔を、尊敬のまなざしで見つめる。

その視線に少しは慣れたが、あまり見つめられてしまうと自分に自信がないためか下に俯いてしまう。

松明と魔法の明かりによって、通路内が明るく照らされる。

松明の炎は、前から吹く風によって、時折強く揺らいだ。

通路はあまり直線的ではなく、十メートル程度で曲がっていたり短い階段で上下するようになっていた。

さらに、ところどころでトラップが仕掛けられているらしい。

そのトラップも、簡単には発動しないようになっている。

さほど難しくはないが寄木細工のようなギミックが施されており、それを解除しなければ発動しないようになっていた。

見通しの悪さは、仕掛けをバレないようにするためのものだと説明してくれた。


そんな説明を聞いていると、ドワーフの精密さやそれを実現できてしまう技術力に驚かされた。

そして、ハルナたちはあっという間に町の入り口までたどり着いた。

目の前の扉は複雑なギミックでロックされており、パッと見て簡単には解けないようなロックが施されている。

だが、そんな複雑なロックも答えを知っていれば、何の問題もなかった。

付き添いのドワーフは、自分の知っている情報にそってそのロックを解いていく。


――ガチャ

ギィ……


ロックを外された重い扉は、音を立ててゆっくりと開く。

気圧差で外気が通路に流れ込み、砂ぼこりの香りがハルナたちの嗅覚を刺激した。


「さぁ、こちらへ……」


辺りを見回して、問題がないことを確認して一同に通路の外に出るように促した。

出てきた先は、町の外れの倉庫が密集している場所だった。


「こ……これは!?」


ステイビルは、この情景を見て思わず声をあげる。

様々な家屋から火の手があがり、煙を立てて燃えている。

“賛成派と反対派の争いにしても、なぜ自分たちの生活の場所を破壊する必要があるのか?”、真っ先にサナの頭にはこんな思いが浮かんだ。


「どうして、同族でこんな酷いことしなければならないんだ!?」


ブンデルも同じ思いで、思わず声を荒げた。


思想は未来を創りあげる上で、大切なことは理解している。

だが、全てが同じ考えを持っていないこともわかっている。

それぞれに事情や環境があり、自分のことを守るだけで精一杯な者も多い。

それを自分の理想だけで誰かの生活を犯してはならないことは、ブンデルがずっと守ってきたつもりだった。

だが、他の者はそう思わないものも多い。

そのことを伝えようとも、ブンデルは落ちこぼれの烙印が押されているため、その声をまともに聞いてくれる者はいなかった。


「お姉様の元へ……急がないと!?」


この状況を見て、焦るサナを付き添いのドワーフが止める。


「お待ちください、サナ様!ここはまず状況を確認しませんと……サナ様の身にも危険が!」

「で、でも……こんな状態だと、お姉様方は危険な目に……私だけが……安全な場所に」


取り乱し始めたサナを、ブンデルがその両肩を掴み落ち着かせる。


「落ち着け、サナ!焦る気持ちもわかる……だが、お前も長老の一人なのだろう?姉たちのそんな心遣いをお前が取り乱して無に帰すことになってしまってもいいのか!?」


ブンデルは、サナの目をしっかりと見つめ落ち着くように言って聞かせた。

今までのブンデルに見たことのない真剣さが伝わった。


「サナ様、ブンデルさんの言う通りです。上に立つ者として一時の感情で取り乱してはなりません」


ステイビルがブンデルと付き添いの気持ちを汲み、サナに落ち着かせるように進言する。

サナは、ブンデルの真剣な眼差しと、ステイビルの言葉に焦る気持ちを必死に抑え込んだ。


「……有難うございます、ステイビル様、ブンデル様。もう大丈夫です。まずは、お姉様方の安全を確認したいのですが」

「そうですね。それが良いと思います、サナ様。まずは反対派に見つからないように、屋敷に向かいましょう」


付き添いも、サナが落ち着きを取り戻したことに安心し、これからの行動について提案をした。

それについてはステイビルたちも異論がなく、まずは他の長老の安全を確認することで一致した。


「サナ様、ご無事でしたか!?」


この場にいる者以外の声が響き、一同は一斉に声をかけられた方向に顔を向けた。


「デイム!」


サナは知った顔のドワーフと会って、ホッとした表情を見せる。


「サナ様もご無事で何よりです……」

「他の長老……お姉様はどうですか?」


サナは、デイムに一番気になることを告げた。


「イナ様、ニナ様はご無事です……ただ」


デイムはその先の言葉を濁す。


「どうしました?何かあったのですか?」


サナの言葉に、デイムは重い口を開いた。


「ジュンテイ様が……お怪我を」




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