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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-90 助けを求めて



「……で、お前はサナを連れてくることなく、そのまま戻ってきたというのか?」

「は、はい。邪魔が……入ったものですから……」


ドワーフは、途中まで追いかけていったが、突然現れたエルフに邪魔をされ、サナを連れてくることに失敗した経緯を報告する。


「そうか……わかった。休んでいいぞ」

「え?は、はい。……!?」


ドワーフは、両脇を抱えられ、身動きが取れなくなった。


「ぶ、ブウム様……お願いです、次は成功させますから、どうか……どうか!?」


引きずられながら奥に消えていくドワーフは必死に懇願するが、その願いは叶わなかった。


「次はどうすればいい?どうすれば、この町を統一できるというのだ!?」


ブウムは頭を抱えながら、その後ろに姿を現した人物に対して叫んだ。


「……大丈夫よ。まだ、始まったばかりじゃない。そんなことで、種族の頂点に立てると思っているの?もう、後には戻れないんだからやるしかないのよ?」

「そうだけど、そうなんだけども。早すぎないか!?もう少し様子を見てからでも……」


ブウムの後ろにいる女性は、肩にそっと手を回す。


「あなたの想いって、そんなものなの?そんなことで揺らぐ決意なの?……はン、そんなことじゃこの計画は失敗するわね」

「しかし……もう少し、やり方があったのではないのか!?これでは、ドワーフの町が分断してしまうのではないか?」

「大丈夫……安心なさい。私たちが付いているのよ……“あの”者たちを処理すれば、もうあなたを遮るものは何もなくなるんだから。それにさっきも言ったけど、もう後には戻れないのよ」

「ぐっ……」


ブウムはその言葉を聞き、次の言葉を飲み込んでしまった。


「腹をくくったなら、次の行動を起こすべきね……なるべく早くにね。でなければ、人間がこの町に我が物顔でやってくるわよ?」


そう言ってヴァスティーユは片手を挙げて、部屋の奥へと移動しようとした。


「ま、待ってくれ!?手伝っては、くれないのか?」

「私が出ていくと面倒なことになるわよ?多種族交流の反対派が私の力を借りて勝利したなんて、格好がつかないでしょ?」


そう言って、暗闇の中に姿を消していった。


「うぅ……ん」


柔らかな枯草とは違う感触が、頭に当たっている。

とても寝心地が良く、ブンデルは横向きになってその感触をさらに頬で味わう。

すると上にした頭の部分に、なにやら柔らかいものがのしかかってくる感触がある。

ブンデルは顔に触れるものを、目を閉じたまま手で確かめようとした。


――ガっ!


ブンデルはその手を捕まえられ、驚いて目を開く。

そして身体を起こそうとするが、手で頭を太ももに押さえつけられた。


「ちょっと……まだ、じっとしててください。それにモゾモゾ動かないで!もう、くすぐったいんですから」


ブンデルは、少しその聞き覚えのある声にあることを思い出した。


(あれ?俺、たしか切られて……意識がなくなって)


「あー!痛……くない?」


しかし、服を見ると流れた血の跡がべったりとついていた。


「今回、私の“ヒール”で傷は塞いでいます。ですが、結構深い傷ですので一度では完全には……それと」

「それ……と?」

「耳が……ごめんなさい。私の力では、傷を塞ぐだけで精いっぱいでした」

「え?」


ブンデルは恐る恐る捕まれた手を解き、自分の耳に手を伸ばす。

耳に今までにはない、切れ込みが触れた。


「私のヒールは、開いた傷なら塞ぐことができます。ですが、欠損してしまったものまでは復元できないのです……すみません」


ブンデルはサナの言葉を聞き、下に俯く。

少しずつ、ブンデルの身体が震え出した。


「ブンデルさん?」


心配になってサナは、ブンデルに声をかける。


「く……くくくく……」

「……」

「どうやら、また仲間のエルフに攻められる原因ができてしまったな。……こんな耳、どうだ。格好悪いだろ?」

「ブンデル……さん」

「まぁ。とはいえ、もう仲間とも会うことはないだろうからな。また、はみだし者のエルフにはちょうどいい姿だろうな」


ブンデルは片膝を立て、膝に手をかけて起き上がろうとする。

だが、まだ力がうまく入らずに、よろけてまたサナの方へ倒れ込んでしまった。


「まだ、本調子じゃないんですよ!無理しないでください」


サナは再び自分の胸の中に倒れ込んできたブンデルを、両手で抱き抱えている。

再びその柔らかい感触に顔を埋めたブンデルは、眠ってしまいたいという思いが一瞬頭をよぎった。

しかし、今はそういう時ではない。

しかも相手はドワーフ族の長老。だが長老とはいえ、まだ若い容姿をしたサナは好意を持つ対象としては全く問題がなかった。


「サナ様、もうそろそろ移動しませんと。また新たな追手がやってくるかもしれません」

「え?そうですね……ブンデルさん、立てますか?」

あ、あぁ。もう大丈夫です、お世話になりました」


急いでこの場を離れようとするブンデルは、よろけて近くの木に寄りかかる。


「すみません、ブンデル様を手伝ってあげてください。ステイビル様のところまで一緒に……」


その言葉を聞き、ブンデルは焦った。


「な……なぜあの王子のところへ?」


サナは少し曇った顔をし、残りの二人の顔を見る。


「サナ様、ここは正直にお話しして協力を仰いだ方がよろしいのでは?」


付き添っていた一人が、サナにそう進言した。


「そうよ……ね」


サナは胸の前で両手を組み、懇願するようにブンデルに近づいて告げる。


「私たちの……ドワーフの町で、クーデターが起きました。ぜひ、あの王子に力をお借りしたいのです」




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