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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-87 一旦集落へ



「あー……また、これに乗るのね」


エレーナはこのドワーフの町に入ってきた高いエレベータを見上げてつぶやく。


「目をつぶって、息を止めて置けば大丈夫だよ」

「そ、そうね。目をつぶって息を止めれば……って、あんなに長い間止められるわけないじゃない!?」

「さぁ、早く乗ってエレン。我々はなるべくこの場所にいない方がいいんだから」

「そうは言っても、既に町中を歩いているからな……」


アルベルトの言葉に、ステイビルが続ける。

確かに、デイムの後ろに連れられて町の中を歩き回っていたため、いまさら感はあった。

ただその時は状況を知らなかったので、これほどまでの緊張感はなかった。


「ちょっとすみません……もう少し奥に詰めてもらえませんか?」


ブンデルのお腹が箱からはみ出してしまい、手動で閉めるシャッター式の扉が閉じなかった。


「は、入りました!」


ブンデルは自分で扉を閉めて、昇降用のレバーが近くにあるアルベルトに声をかける。

ステイビルはその声を合図に、レバーを握りロックを外して地上に登るためにスイッチレバーを引き上げようとした。


「おい!そこの者たち、止まれ!!」


遠くから箱の中に声が掛けられた。


「何でしょう、何か用事ですか?」


一番外側にいたブンデルが、その呼びかけに応えた。

比較的装備を整えた風貌のドワーフが二人近付いてきて、エレベーターの中の様子をみる。


「お前たち、ジュンテイのところから出てきたな。中で一体何を話していたんだ?」


明らかにこのドワーフが、ハルナたちのことを疑っていることが見て取れた。

ジュンテイはなるべくことを荒立てない様に気遣っていたので、ステイビルはこの場は誤魔化してみることにした。


「こちらに腕のいい鍛冶屋があると聞いて、剣の調整をお願いしていたのですが?」

「嘘をつくな!この町には誰も入ることができんはずだ、なぜこんなところに人間とエルフがいるのだ?」

「それについては、いろいろと事情がありこちらの町に連行されてきたのです。事情をお話ししたら、用事は済ますことができましたがね」

「とにかく怪しいな……そこから一旦降りてもらおうか」

「そう言われましても、我々も早くここから立ち去るように言われておりますので……」

「このぉ!つべこべと……!?」


ドワーフはエレベータの扉に手をかけて強引に開こうとする。

しかし、ブンデルのお腹の圧力でなかなか思う通りに扉が開かない。


「おい、お前たち!そこで何をしている!?」


この場に別なドワーフが姿を見せたが、その声は先ほどまで一緒にいた声だった。


「ぐ、グレイ様……!?」


扉を開けようとしていた別のドワーフが声をかけられた方向を見て、その名を呼んだ。


「その者たちの町の中への許可は、長老方が認めており何の問題もない。どこに連れて行こうというのだ……お前たち?」


ドアをこじ開けようとしていたドワーフはその言葉を聞き、手を離してハルナたちから距離を置く。


「そ、そうでしたか。ならば、連行する必要はありませんな。この者たちがジュンテイ殿の店から出てきたところを発見し怪しいところがないか見張っておったのです。人間がこの町にいることは、初めてのことですからな……」

「まぁ、よい。とにかく用事が済んだのだ、帰ってもらって良いのだ」

「……は、はい。わかりました」


ドワーフは悔しそうな表情を浮かべながら、グレイの言葉に従った。


「すまなかったな”人間”よ。気を付けて帰るがいい」

「ありがとう、立派に調整していただいた上にお見送りまで。本当にこの技術がここだけなのは勿体ないお話しですな……」

「用事が済んだのなら、早く行ってくれ……」

「あぁ、すまない。それでは、世話になったな」


ステイビルはアルベルトに合図し、エレベータを動かした。

少しずつ上っていき、先ほど苦労して昇った長老の屋敷があっという間に同じ高さまで上がった。

ジュンテイの店から出る蒸気も確認できた。

ステイビルは何とかこの話をまとめたいと思いながら、先ほど声をかけてきたドワーフが反対派なのではないかと推測した。


「何かと厄介だな……」

「……そうですね」


ステイビルのつぶやきに、アルベルトが答える。

そしてエレベータは岩の洞窟の出口まで到着した。

どういう仕掛けか分からないが、外からは洞窟の中が見えなかったが、ここからは外の様子が見える。

外は日が落ちかけていて、暗くなりそうになっていた。

ステイビルたちは集落に戻り、ポッドとカイヤムにドワーフのことを話した。

それが、水が出なくなった原因であることも。

何か言いたいことがありそうだったが、ポッドはその言葉を飲み込んだ。


「どうした?何か言いたいことがあったんじゃないのか?」


ステイビルが、そのことを察してポッドに話しかける。

「え、えぇ。思うところはあります……ですが、彼らもこの山の中で生きている種族として行ってきた行動でしょうから……」


うつむいたまま話すポッドを、何も言わずに見つめるステイビル。

ポッドは顔上げて、そのままステイビルの顔を見る。


「ですが……ですが、ステイビル様ならばドワーフの方々ともうまく交渉を行っていただけるのでしょう?我々は、ステイビル様を信じておりますから」

「うむ、そういってもらえると助かる。まだまだ先は長いが、きっと皆が水に困らない生活にしてみせるぞ」


(交渉……成功させなければな)


ステイビルはそう告げて、揺れる蝋燭の炎を静かに見つめた。




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