表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

248/1278

3-79 託された刀



「それを、持っていけ」

「――どうしてこれを?」


アルベルトは、ジュンテイに問いかける。


「どうして、か。それはそうだな……まず理由は二つ、だ」


ジュンテイはそういうと、近くにあった椅子を引き寄せ座って足を組んだ。

そして、人差し指をアルベルトの方へ向けた。


「一つ目の理由はな、お前ぇが使っていた剣だ」

「私の……剣?」

「そうだ。お前の剣を見させてもらったが、刃の欠けもなく上手に扱っておるな。まるで作り手の意図がわかっているかのように……な」


アルベルト自身は全くそのような意図はなかったが、攻防時の効率良く相手の武器を弾き、その後スムーズに攻撃へ移行する方法を追求していた結果だった。

そしてこの剣はアルベルトの父が、この旅に出発する際に持たせてくれたものだった。

これも父親がアルベルトの剣の癖を考慮し、アルベルトに合った剣に仕上げてくれるように注文していた。

ジュンテイはそういったことも含め、アルベルトが渡した一本の剣を見ただけで全て見抜いていた。

アルベルトは、頭の中で父親の顔を思い浮かべながらドワーフの言葉に耳を傾けていた。


「今お前に渡した剣は、お前のようなものが使うように作られている。刺すことよりも、斬ることを得意とする者に特化した剣だ。……抜いてみろ」


アルベルトは剣を横にして胸の高さまで持ち上げ、剣を鞘から引き出す。

完全に鞘から取り出し、アルベルトは剣を見て驚く。

刃は片方の側面にしかなく、刃に描かれたような波線が続いている。


「こ、これは?初めて見る剣ですが」

「刀……こんなところに?」


ハルナが思わずその刀を見て、思わず言葉を口にした。


「ほぉ、お嬢さんはこれを知っているのかね。これを持ってきた者も、カタナ……この剣をそう呼んでいたな。今は留めているが、この柄の部分は取り外せる構造になっている。そういえば、そこによその国の文字のような記号が書いてあったな……念のため書いて残していたんだが、どこにやったか?」


ジュンテイはイスから腰を上げて、奥に入っていった。

そして一枚の紙を持ってきて、ハルナに見せた。

その紙には炭で擦られて、文字が浮かんでいた。

フロッタージュという、表面の凹凸を利用して紙の上から鉛筆などで擦ると複写される方法で残されていた。


「良く分からん記号でな、面倒だったから紙に擦り出して取っておいたんだ……お前さん判るか?」


錆びていたのかその文字はかすれており、途中までしか見ることが出来ない」


「長……光……長光?」

「ナガミツ……それはこの剣いや、刀の名前か?」

「いや、私もそんなに刀に詳しかったわけではないので……」


ハルナは、質問をされても上手く答えられないことを恥じた。


「ハルナさん、多分それが正解でしょう。いままで続いていた耳鳴りが、名前を呼んだ途端に止みました」


そう言いつつ、アルベルトは刀を鞘に納めてその姿を眺める。


「そして、二つ目の理由だがな……」


ジュンテイは、突然話を戻した。


「お前はきっと、その剣に気に入られたのだ。自分でも、わかるだろ?」


それについては、何となくアルベルトもそんな気がしていた。

先程からも、アルベルトにしかわからない現象が続いている。

これは刀の意思が、影響をしている現象なのだとアルベルトは直感的に感じ取っていた。


「この剣……”長光”を持ってこられた方は、いまどちらに?」

「いなくなった。いや、言葉通り”消えた”といった方が正しいか。この長光を置いて……な」

「それは、いつ頃のお話しなのでしょうか?」


ハルナは、日本刀を持っていた人物がドワーフと接触をしていたことに興味があった。

いつこの世界に来たのか、冬美のようにハルナの知っている人物なのか。

だがジュンテイの答えは、ハルナの希望する答えではなかった。

この出来事は、人間が基準とする年月でいうと五十年以上も前のことで、ジュンテイもまだ修業中だった頃の話で詳しいことは覚えていないとのことだった。

ハルナはジュンテイから謝られてしまったが、逆に自分の興味のためだけに確認したハルナの方が申し訳なくなってしまった。


「……というわけだ。その刀は、いつまでもそれをここに置いてわけには行けない気がしてな。貰っていってくれるか?」

「わかりました、ありがたく使わせて頂きます。ですが、先ほどの剣も大切なものですので」

「あぁ、わかってるよ。だが、お前たちは今から長老のところへ行くんだろ?その間、整備しておいてやる。……そっちの兄ちゃんの剣も貸しな、どうせ長老の場所には武器は持ち込めないんだ。ついでだから見といてやるよ」


ステイビルも、すっかりジュンテイのことを信頼し、疑うこともなく腰に下げた剣を外してジュンテイが声を掛けて出てきた弟子に剣を預けた。


「じゃあな、デイム。あの三人娘に、宜しく伝えてくれ」


そう言って、ジュンテイは鍛冶屋の奥に引き込んで行った。


「失礼しました。こんなところで時間を取らせてしまい、申し訳ございません。それでは長老の元へ参りましょう」


そう言って、デイムは鍛冶屋を後にして長老たちがいる場所までハルナたちを案内した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ