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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-73 出口に向かって



「ここはドワーフの住処なのです」

「ドワーフですって!?」


ハルナはドワーフと聞いて驚く、エルフに続いて伝説の生き物の存在を知った。

だが、このソフィーネをここまで追い詰めたという種族は、決してあなどれないとその危険性を心に留めて置いた。



「ハルナさんは、ドワーフをご存じなのですか?」

「え?いや、元の世界でその名前を知っているっていうか……ついこの前もエルフに会ったばかりで」

「なるほど……私の生まれた村で”エルフの近くにはドワーフが住み、ドワーフの近くにはエルフが住む”という言葉があります。この二つの種族は喧嘩ばかりしているらしいのですが、お互い似たようなところがあるのでしょうね」


ハルナのやっていたゲームの世界も多種族が選択できたが、エルフとドワーフの仲は良くない設定だったことを思い出した。

実際にもそういうことになっており、ハルナも設定が先なのか、実際になものが伝わったことなのかがわからなくなってきてしまった。


「さて、こういうことをしている場合ではございませんね。ドワーフたちが別なことに注意が向いている間に早くここから脱出をしましょう」


ソフィーネが閉じ込められていた部屋は、一枚の厚い扉しか出入り口がない部屋だった。

当然その扉は施錠されており、中から開けることは鍵穴もなく不可能だった。

壊すとなっても、その音や外の状況がわからないため、戦闘になってもソフィーネをとらえた程の戦闘力でハルナもソフィーネも本調子ではない。

なるべく戦闘や遭遇を避けるために、大きな音を立てない方がいいという結論に至り、ハルナが落ちてきた穴から出ていくことにした。


ハルナは、再びこの穴の中に身体を通した。

明るい場所から暗い場所にもどり、目が暗闇にさらされる。


「ハルナさん……これを」

「ありがとうございます」


ソフィーネは自分が閉じ込められていた部屋のろうそくを外してハルナに渡した。

ハルナは持ったろうそくを上に掲げ、自分が落ちてきた穴を確認しようとする。

が、まっすぐには降りてきていなかったため、外の光を見つけることも出来なかった。


「え!?」


突然、ソフィーネがハルナを後ろに引っ張った。

転びそうになったハルナは、ソフィーネの胸のクッションにその衝撃が抑えられた。

そしてそのままハルナを保護するように抱きかかえると警戒し、上から誰かが降りてくる音に備えた。


――ストッ


ハルナたちの前に、一人の人物が降りてきた。

その人物は言葉を唱える。


「迷える足元に導きを……”エルライツ”」


ハルナたちとその人物の間に、蛍のような光の球が浮かび上がり辺りを明るくした。


「ブンデルさん!」


ハルナは、先日知り合いになったエルフの名を呼んだ。


「ハルナさん、ご無事でしたか?上の皆様が、心配しておりましたよ……ですが、ご無事で何よりです」


ハルナの知っている者とのことで、ソフィーネは警戒を解いた。


「初めまして、エルフ様。お迎えに来ていただき、有難うございます。……それで、上に登れる手段はあるのですか?」

「その辺りは、ご安心を。……これを用意していましたので少しお迎えが遅くなりました」


そこには、蔦が何重にも編まれて作られたロープが手の中にあった。

ブンデルはそのロープを何度か引き、上に合図をする。

すると、上から何度かロープが引き上げられ、合図に応答した。


「では、このロープを身体に巻き付けてください。上からも引っ張ってくれますから、登りやすくなるはずです」


ハルナは腰に蔦のロープを巻いて行く。

がしかし、うまく巻けずに解けてしまう。

これでは安全に上までたどり着けない。


「ハルナさん、腕を少しの間挙げていていただけますか?」


ソフィーネがハルナの手にしていたロープを預かり、ハルナの身体に巻き付けていく。


「どうですか?」

「しっかりしてて、苦しくなくて平気です!」


ソフィーネはハルナに笑顔で返した。

そしてブンデルに向けて、提案する。


「では、ブンデルさんが一番最初でお願いできますか?その次にハルナさんで、私は後ろから何かあった時のために支えますから」

「あれ?ソフィーネさんは、ロープ結びつけなくて大丈夫ですか?」

「私は平気です。こういうのには、慣れておりますから」


ソフィーネは、そう言ってハルナを安心させた。

だが、ブンデルは判っていた。

このロープは三人も耐えられないということを。

ソフィーネがいたことはハルナたちにとっては嬉しいことだが、今回の救出はハルナだけを目標としていた。

用意したロープもブンデルとハルナが昇ってくるのに十分な強度しか考えておらず、三人分となるとその作成する強度と長さの時間はさらにかかっていたことだろう。

ソフィーネはそのことに気付き、自分はロープを巻き付けなくてもよいと発言したのだった。

体重を掛けずに捕まるだけならば、三人の荷重にも耐えらえると判断していた。

後は、このロープが持ってくれることを祈るばかりだった。


「それでは……いきますよ?」


ハルナたちはブンデルの言葉に頷き、ブンデルはロープを数回引っ張り上に合図を送った。

ロープはゆっくりと引き上げられ、ハルナの身体は斜面を登っていった。




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