表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

240/1278

3-71 水脈を探して



翌日、ステイビルたちはエルフと共に山に入っていく。

まずは、集落の水が湧き出る泉から山に向かい、エルフの力で水脈をたどっていく。

だが、水脈が枯れているため追跡がなかなか難しい状況だった。


「……ということは、あまり状況は変わってないですね」

「そうだな、これでは初めの状況と何も変わっていないな」


エレーナの言葉にステイビルも同意する。

ブンデルは、背中に冷や汗をかいている。

自分のせいではないとわかっていても、自分の能力が役に立っていない。

この状況に、また用なしの烙印が押されてしまうのではないかと、ハルナたちにバレないように焦る心を必死に抑えていた。


「ブンデルさん……」

「え!?……あ。ご、ごめんなさい!」


ハルナから急に声を掛けられて、思わず謝ってしまった。


「いえ、別にブンデルさんが謝ることでは……それよりも、他に何かわかったりしないですかね?」

「あぁ、そうだね。水脈は枯れているが、少しは流れているみたいだ。だが、少なすぎるのと山を上がっていくと地面が厚くなっていくので、追いづらくなっているな」


その言葉に対し、エレーナはひらめいた。


「っていうことは、水の量が増えればその流れを追えるっていうことね……」

「ま、まぁそうだな。だけどそうするには、上の方から水が流れてこないと……」

「ヴィーネちゃん、下の水を感じ取れる?」

「うん、たぶん。……あ、これかな?」

「――え?」


ブンデルは驚きと同時に、恐怖を感じる。

もしも、本当に精霊に見えてしまうと、自分がここにいる必要性がなくなってしまうからだった。


「じゃあ、そこから上に向かって水を送ってみて」

「わかった!」


……ゴゴゴゴ。

地響きを立てながら、水が重力に逆らい逆流していくのを振動で感じる。

そして、ボン!と音が鳴り響き、山の中腹から噴水のようなものが立ち上がっているのが見える。


「な、なにアレ!」

「あそこに何かありそうだな……行ってみよう!」


そう言って、ステイビルは水が噴き出ている場所を目指して山を登り始め、エレーナとハルナがその後を追いかけていった。


「……え、あ。ちょっと待って!?」


呆気に取られていたブンデルは置いてけぼりになりそうだった。急いでステイビルたちの背中を追いかけていった。

山の中腹手前まで登ってきたところで追いついたハルナとエレーナは、ステイビルとアルベルトが何かを調べていることに気づいた。


「はぁはぁ……どうか……したのですか?」

「うむ、この辺りを見てくれ」


高い木の下に草木が生い茂っており、ステイビルはその周辺一帯を見るように促す。


「――?これが何か?」

「……わかりませんか?不自然な草木の生え方をしているんですよ」


追いついたブンデルが、ステイビルが指摘した違和感に気づく。


「そう言われてみると……」


草木が枯れ気味な周囲一帯で、ある一角だけ元気に生い茂っている場所がある。


「これは、エルフなどが使う『自然の力』によって人工的に造られた場所ですね」

「自然の……力?」


ハルナが、聞き慣れない言葉に聞き直した。


「そうです。ちょっと見ててください」


ブンデルはもともとあった場所とは別の方向を向き、ゆっくりと息を吸い込む。


『健やかなる成長を……「ログホルム」』


その言葉が唱えられた途端、周囲の草木が反応して枯れかかった草が勢いよく成長していく。

そこには、明らかに何らかの力によって作られたといった感じの緑ができ上がった。


「す……すごい!」


エレーナも初めて目にするエルフの力に驚き、思わず声を上げてしまう。


「と、こういうような力を使った者がいるということです」

「ということは、エルフがこの近くにいるのですか?」


アルベルトが、ブンデルに確認をした。


「いいえ。私の知る限りでは、この辺りにはエルフはいないはず……」

「では一体……誰が」

「わかりません……とにかく、注意してください」

「何か罠が仕掛けてあるかもしれん。ゆっくりと一列になって進んでいこう」


ステイビルの提案で、ハルナたちは一列になって足元を木の枝で刺して確かめながら進んでいく。

次第に地面が先ほどの噴水の影響か、湿りを帯びてきた。

何かに近付いている気配を感じ始め、さらに注意して列を進めていった。

そして、ハルナたちは先ほどの水が噴き出ていたと思われる穴を発見した。

辺りは水浸しで、ハルナたちの服も草木に付いていた水で濡れてしまっていた。


「あーあー。誰かいますかー」


ハルナは垂直ではなく斜めに開いた穴をのぞき込んだ。

だが、声は響くだけで何の音も返ってこなかった。


「ハルナ……それは、子どもがやる行動よ?」


エレーナは、ハルナの行動を見て呆れる。


「えへへへ、エレーナもやりたいんじゃないの?……あ。」


――ボコッ


照れ隠しで笑いながら、頭を掻くハルナの足元が崩れ落ちる。


「きゃああああああ!!」

「ハルナ!ハルナァァ!!」

「エレン!危ない!!!」


ハルナは崩れた穴の中に滑り落ちて、エレーナたちの前からその姿を消した。

その穴の中を覗き込み、ハルナの名前を叫ぶエレーナ。

アルベルトは脆くなった地面が危険だと感じ、穴からエレーナを引き離した。

穴からは、ハルナの声は聞こえてこなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ