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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-68 消えたパン



女性から見逃してもらった恐怖の日から、一周間が経過する。

モレドーネから馬車が二台ほどで、物資の支給が届いた。

カイヤムは、相当急いで移動してくれたようだ。

今回はエフェドーラ家からノーブルが、やってきてくれた。

本当はノーランが来たかったようだが、もうノーランは重要な役目を担っており迂闊に危険な場所にさらすことはできないと説得し、ものすごい不満そうな顔で了承した様だった。

ハルナたちは、その話しを聞いてほんの僅かしか経っていないが、ノーランが変わっていなくてホッとした。


今回の問題が起きた商人から物資があてにできなかったため、この集落の食糧事情がひっ迫していると知っていた。

カイヤムが持ってきたわずかな食料とハルナたちの食料を分け与えながら、何とかこの一週間を乗り越えた。

だが、もうその心配をする必要はなくなり、集落も安堵の雰囲気が流れる。

そして、今回はマーホンの計らいでお試しで、最安値で提供していた。

今後の商人として出入りを認めてもらうことや、モレドーネに支店を置いて物資の定期提供やモレドーネの活性化も考えての案だった。

ただ、他の商人は排除せず誰もが自由にこの集落で商売ができ、発展していくことも願っていた。

それに続き、その二日後には警備隊が到着し今回の件の検証と当面この集落の警備を期間限定で行うことで調整された。

住人自身が自分の村を守り、負担を強いられるよりは、その道のプロに任せた方が住人のためとの判断だった。

ただ、あの女性のようなクラスの襲撃があった場合は太刀打ちできないが、せめて少しでも住人が助かるようになればともステイビルは考えていた。


その日からこの集落は、”町”として認められることになった。

とりあえず、この村の代表は二つの家で行われることが住民の総意で決まった。

徐々に、いつもの平和な暮らしがこの町に戻ってきた。

チュリ―もすっかり元気になり、また毎日ハルナたちに相手してくれるようにせがんでいた。

そして、アルベルトはその姿を横目で見ながらステイビルに告げる。


「やはり、問題はなぜ水が止まってしまったかですね?」

「そうだな。初めはあの商人がこの村を貶めるためにやったのではないかと思っていたが、あの最初に捕まえた者からはそういった情報は得られなかったな」


男たちから聞いた話からは、重要な情報は得られなかった。

だが、問題となった商人たちの活動時期と、水が止まった時期の関連性が薄いと感じていた。

しかも、もしもその商人たちが止めていたのならば、ただその場所を見つけて問題を排除すればよいだけだと考えていた。


(ただ、単純に終わればいいのだが……な)


ステイビルは窓の外を眺め、頭上に見えるグラキース山の姿を見つめていた。


ステイビルはその翌日から、本題の水が止められた調査に乗り出すことに決めた。

やはりこの問題が、この村にとって一番の不幸と考えたからだ。

調査は、最初に見た水が湧き出る泉の場所よりも高い位置の調査から始めていくことにした。

浅い場所であればエレーナの精霊のヴィーネが、その流れを探知できる。

なのでグラキース山のふもとを山の斜面に沿って横に探していき、徐々に上に上がっていくことにした。

時間はかかるが、一つずつ潰していくしかない。

それに、本来の水の大竜神”モイス”に繋がる場所の探索にも兼ねていた。

だが、三日目が過ぎて四日目に入り、ハルナたちの意欲も低下しつつあった。

何も反応もなく、手掛かりもなかったためだった。


「分かっては……いたけどね。でも、こうも進展がないとやる気がなくなるっていうか、お腹が空いたっていうか……」


愚痴なのか、何なのか良く分からないことを言い出したエレーナ。


「お腹が空いたならたべればいいじゃない……ホラ」


ハルナは呆れた顔で、背中に背負ったリュックを向ける。

この中には全員の昼食が入っていた。


「そうだな。あまり集中力がない状態で山を歩いても、見落とすだけじゃなく怪我をしてしまう可能性だってある。ここで休憩にしよう」


ステイビルの決断で、昼食をとることになった。

しかも、この場所は比較的平らな場所で、今はそんなに風も吹いていない時間だったので丁度良かった。

そして、ハルナとエレーナは地面にシートを広げ、アルベルトが作った食事を並べていく。


「……ソフィーネさん、大丈夫ですかね?あれから連絡もないですけど」


パンに自家製ハムと野菜を乗せて、簡単なサンドイッチを口に頬張りながら喋るハルナ。

あの事件の日から、ソフィーネは訓練がしたいと一人で山の中に入っていったのだった。

食事は簡単な調味料を持ち、これが切れる頃には戻ってくると言い一旦ハルナの護衛から外れることを詫びて出かけていった。

ハルナもあの時ソフィーネが何もできなかったことを責めていることでソフィーネが自分自身を責めていることに気付いていた。

「仕方がなかった……」誰もがそう思っていたが、ソフィーネはそんな自分が許せなかった。


(あんなことじゃ、メイヤに敵うはずがない……)


ソフィーネはそう思うと、自分の技を少しでも見直すことと気持ちで負けない様にするために山で訓練することを決めた。

だが、そろそろ心配になってきた。


(何か起きたのではないか……)


ハルナは、なるべくそう考えない様にしていたが、日が経つにつれそう考えることが多くなってきた。


「ねぇ、ハルナ。私のパン、取ったでしょ?」

「え?とってないわよ?」

「ここに置いてたんだからね、喉を潤してから食べようと思ってたのよ」

「い、いや。私じゃ……ない」

エレーナの剣幕に押され気味なハルナ、アルベルトが新しいパンをとって同じものを作り始めた。


『ハル姉ちゃん、誰かいる!!』


頭の中にフウカの声が響き渡った。




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