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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-65 交渉



「穴の開いた金貨を拾っただろう?。この娘と交換だ、今すぐここに持ってこい!」


真っ先に逃げていた男は、昨日の態度とはうって変わり攻撃的で焦っているのがはっきりと見て取れる。

警備にあたっていた人物はポッドへ連絡し、来訪者のことを告げる。

併せて、ポッドはステイビルにも伝えるように指示した。

目当ての金貨は、ステイビルが管理をしていたからだった。


「まだか!?早くしろ!!この娘がどうなってもいいのか!?」

「……今日は昨日と違って、意気込みがすごいな?」


ステイビルがその場に姿を見せる。


「お前か?俺の金貨を持っているのは」

「なんのことだ?それよりも早くチュリーを離してやれ」


ステイビルは一度はとぼけてみせた、向こうのペースで進みかけている交渉をこちらのペースに変えようとしていた。

すると、それが気に入らなかったようで、懐から短剣を抜いてチュリーの顔に近付ける。

その様子を慌てずにステイビルはじっと見守る。


「ふざけたことを言っていると、この子の顔に傷がつくぞ?」


ポッドはステイビルの後ろで、その様子を見て慌てふためく。

妻もポッドの背中を握りしめて、チュリーの名前を何度も口にしている。


「大丈夫ですよ、奥さま……いざとなったら私たちが」


エレーナがそう言って落ち着かせようとするが、娘に危険が迫っているのをみては落ち着くことなどできはしないだろう。

だが胸中を察しながらも、いまは言葉を掛ける以外のやることが見当たらない。

エレーナとハルナは事前に、ステイビルからは男に手出しをしない様に言われていた。

ただし、チュリーの身に危険が迫った場合だけ動いていいことになっていたが、まだその時ではないと判断していた。


「分かった、お前が探しているのはこれか?」


ステイビルはポケットから取り出した金貨を、母指と示指でつまんで見せた。

開けられた金貨の穴からは、ようやく見つけたという安堵の表情をした男の顔が見えた。

男は焦る、すぐにでもあの金貨を取り戻したい。

だが、急ぎ過ぎれば自分の身が危なくなる。


(上手く娘を使って、先に金貨を手にするには……)


男は、勝利までの道筋をフル回転で頭の中で組み立てていく。

しかし、目の前の交渉相手は、考えがまとまるよりも早くその行動にでた。


キー――ン……


金のいい音色とその余韻が、辺りに響き渡る。

金貨の中に開いてある穴が、その響きを良くしているのだろう。

ステイビルは金貨を指で弾き、クルクルと回転しながら放物線を描く。

その金貨は、向かい合った男の前に落ちたが今の位置ではどうしても届かない場所にあった。

男は短剣をチュリーに近付けたまま、足を伸ばし金貨をこちらに引き付けようとする。

だが足先は、むなしく空を切るだけだった。

ここから離れてしまえば自分を守る交渉材料の娘と離れてしまう。

相手はその隙を狙ってくるに違いない、そう考えた男は誰かに拾わせるようとした。

その考えも男は、一瞬にして否定した。

あの男は一瞬にして距離を縮めて、この娘を奪いに来ることが可能であろうと気付いた。


(くそっ!どうすれば……どうすれば)


男は次第に焦り始める、こちらが優位に運ぶはずだった交渉がすっかり相手の策に嵌ったような気がしてしまった。

そのことも、男がこの状況を気に食わないと感じる理由の一つだった。

男は、この状況をどのように打開するかに思考を戻した。

そして、ようやく一つの名案にたどり着いた。

男は戦略対戦型のボードゲームで、勝ったような気持ちになる。

このやり取りに読み勝ったと勝利を確信した。


(ククク……俺の勝ちだ)


男の顔には、思わず笑みが零れてしまった。




男は口に短剣を咥え、空いたもう片方の手を使いチュリーを馬の上から降ろす。

そして再び短剣の柄を、手に握った。

男はチュリーをそのまま抱えて、周囲に気を配りながら金貨を拾う行動に出た。

今いる場所からは、二歩ほど前に出れば手の届く範囲となる。

一歩、もう一歩。

男は目の前のステイビルを警戒しながら、ゆっくりと目的の場所まで近づいた。

膝を折って姿勢をかがめ、さらに警戒しながらゆっくりと金貨へ手を伸ばしていく。


(もう少し……もう少し)


男は、口元をニヤニヤさせながら上目遣いでステイビルのことを警戒する。

しかし、ステイビルは動く気配はない。


「へへ……そこを動くなよ?」


ようやく男の指先に、冷たい金属の感触が触れた。

男はさらに警戒をしながら、指を走らせ金貨を引き寄せる。

そして、男はその金貨をつまむことに成功した。


「……ヨシ」


その瞬間、状況が動きを見せた。


チュリー抱えた反対側の視界の端から、何かが飛び出してくるものがあった。

横を振り向き短剣を構えようとするが、つかんだ金貨が落ちそうになりうまく短剣を扱えなかった。

男は金貨と短剣がうまく握れるように、柄を握り直したが既に遅かった。

アルベルトは男の手を叩きつけ、短剣と金貨を落とさせた。

そして反対側の手で持つチュリーを抱きかかえる力が弱まっているのを感じそのまま抱きかかえて救助した。


「なに!?」


男は、弾かれた腕の痛みを堪えながら奪われた自分の切り札であるチュリーを追っていこうとした。


「――がぁっ!!」


男の肩に鋭い痛みが走り、自分の身体が地面に押し付けられているのがわかった。


「そこまでだ」


後ろからステイビルが、男の腕を後ろで引き上げられ身動きが取れなくなっていた。




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