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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-48 偶然の出会い



「誰だ、お前は?」


少女はその声に驚き、声の方向に向かって話しかけた。


「だ、誰かいらっしゃるのですか?……お願いです、助けてください!悪者に追われているのです!」


懇願する少女の様子を見て、妖精は違和感を感じる。


「お願いです、どうか……どうか!?」


少女は、こちらを向いて話をしているが、その視線は外れていた。


「お前……まさか、目が……」

「はい、視力を失っております。今もあなた様の声は聞こえますが、そのお姿を見ることは叶いません」

「お前はなぜ追われている?……時間がない、簡単に説明しろ」

「私はこの身を売られました、これで二度目なのです。今までは、家の用事などをさせられておりましたが今回は……」

「今回はもっと酷いことなのか?……例えば、”身体”とか」


少女はその妖精の言葉に、小さく頷いた。


「暴力や暴言などは何とか我慢できたのですが……身体となると怖くて……近くにあった物を手に取り叩きつけて屋敷を飛び出してきたのです」


少女は自分の肩を抱き、小刻みに震えている。

その時の恐ろしい状況と、自分のしてしまった恐ろしいことを思い出していた。


「分かった。お前は、ここにいろ。外の様子を見てくる」

「……はい、ありがとうございます」


妖精は洞窟を出て、上空からその者たちの場所を確認する。

追手は、川の中を登り追いかけてきている。

妖精は滝つぼの水を操作し、川に流れる水の量を増やした。


「おい、なんだ?水が急に……うぉわ!?」

「に、逃げろ!高いところへ!!」

「うわぁぁあああぁ!?」


追手たちは、鉄砲水のように流れてくる水に押し流され一掃された。

数分後、川の流れはいつも通りに戻った。

確認したが、追手の者は先ほどの水で押し流されていったようだ。

それを見届けて、妖精は元の洞窟へと戻っていった。


「もう大丈夫だ、安心しろ。追手は追い払った」

「有難うございました……おかげで……」


そう言い掛けた途中で、少女は倒れ込んだ。


「おい!大丈夫か?しっかりしろ!」


妖精は、少女の身体の中の流れを確認した。

長い間生きてきたおかげで、人間のことをよく観察することが出来た。

人間に不調が起きるパターンをいくつか確認していた。

一つは身体の外または内側で起きた損傷。

人は損傷によって生じた痛みにより、不調を訴える。

もう一つは人間の体の中に何かが侵入し、繁殖するといった現象だった。

身体は体内で繁殖したものを除去するために、身体防御反応で体温を上昇させ非自己な生き物を駆除しようとする。

その際の高温の熱によって、人は不調を訴えていた。

調べていくと、体内に入っていくものも二種類あり、生き物と黒い闇の物質があった。

特に後者は、この世界特有のものであった。

時が経つにつれ薬草の技術が高まり、これらの一部の症例に対しては対処出来ていたが、黒い闇の感染については人類は成す術を持っていなかった。

そこで妖精は身体を流れる血液を調べ、精霊の力によって黒い闇を除去することに成功した。

今回の少女は、黒い闇に感染したものだった。

逆に妖精の場合は通常の菌などの感染によるものであれば、何もできることはなかった。

妖精は水の力で、少女の身体の中に広がる闇を除去していった。

後は、体力が自然に回復していくのを待つだけだった。


そして、その二日後。

少女は目が覚める。


「あれ……私。屋敷から逃げて」

「人間よ、目覚めたか?具合はどうだ?」

「あ、はい。よくなりました。ありがとうございま……え?人間って?」


少女は途中で、相手の言葉の違和感に思わず話の途中で聞いてしまった。


「私は、妖精。元、水の精霊だ。人間との契約が切れ、随分と長くここにいる」


少女は、掛けられていた草木を払い起き上がる。


「せ、精霊様なのですか!?は、初めてお会いしました……」

「私も人間と関わるのは久しぶりだ。だが、ここはお前のいるべき場所ではない。落ち着いたら、早々に立ち去るがいい」

「で、でも……私。帰れるところがなくって……」


少女はか細い声で、妖精に告げる。


「それは、私の知ったことではない。あの時は追われているとのことで助けたが、これ以上の面倒を見ることはできんのだ」

「わかりました……助けてくださいまして、ありがとうございました!精霊様のお助けに感謝致します」


少女はヨロヨロとその場に立ち上がり、壁を探して歩いた。


「おい、すぐに行かなくても良いのだぞ。もう少し位は休んでいっても構わん」

「いえ、これ以上ご迷惑をお掛けすることはできませんので」


少女はようやく壁に手を付いて、手探りで滝の裏側まで歩いて行った。

最後に振り返り、姿は見えないが洞窟の中に向かってお礼を言った。


「助けていただき、有難うございました。このご恩は一生忘れません……それでは、精霊様もお元気で」


少女は一例をして、外に向かって歩いて行った。

その様子を妖精は何も言わずに、ただ見送るだけだった。

自分の決断は間違ってはいないと信じて。


――ドボン


外から何かが滝つぼの中に落ちる音が聞こえた。

まさかと思い、妖精は外に飛び出す。

すると滝の水圧でクルクルと回り上下を見失っている少女がおぼれているのが見えた。


「ったく……」


妖精は、水の中に入り少女を助け出して再び洞窟の中に連れて行く。

気絶している少女は先ほどまで寝ていた場所でもう一度横にされ、その傍には妖精が点けた焚火の炎が揺らめいていた。




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