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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-45 目的の場所へ



馬の一頭に二人乗り用の鞍を乗せ、出発の準備が整う。


「ハルナ様、寒いので十分にお気を付けを」

「ありがとう。マーホンさんが用意してくれた服装で、大丈夫そうです!」


少しぽっちゃり体型のハルナが、防寒具などを着ると丸っこくなってそのかわいらしさがマーホンの心をつかんで離さなかった。

だが、今はハルナの姿を愛でている時ではない。

浮かれる気持ちを抑え、二人の準備を整えた。


「……ごめんね、重いけど頑張ってね!」


ハルナは馬の顔を優しく撫でる。

馬はそのことに反応、”ブルルゥ”っと一鳴きした。


「では、行きますよ……!」

「お気を付けて!」


アルベルトとハルナを乗せた馬は、この先にあるはずの川を目指して走っていく。

向かい風に対し遮るものが無いため、乾いた冷たい風は二人の顔の肌に突き刺さっていく。

ハルナはアルベルトの後ろにいるため少しは楽だが、四肢に関しては遮るものがない。

それに関しては、マーホンの強いアドバイスにより、革でできた筒を厚手のローブの下に付けているため助かっていた。


(ありがとう、マーホンさん。寒くないです!)


ハルナは心の中で、そうつぶやいた。


走り始めて三十分が経過したころ、道は森の中へと入っていく。

火が落ちてから天候も悪化し、霧状の雨が降り始めていた。

アルベルトはゴーグルをつけていたが、視界が悪いため速度を落とし安全を確認しながら進んで行った。

そこから更に進んで行き、ようやく雨の音に混ざり川の流れる音が聞こえてきた。


「アルベルトさん、あそこに川が!」


ハルナの掛け声と同時に、アルベルトも川の存在を確認していた。

馬は駆足から徐々に常足と速度を落としていき、川の傍で停止した。

アルベルトは馬を降りて、川の流れを確かめる。

上流の方角を確かめ、その道を探る。

だが、馬が入っていけそうな道はなかったため、ここからは徒歩による移動になりそうだった。


「ハルナさん、ここからは徒歩による移動になります……」


ハルナは、アルベルトに手伝ってもらいながら馬を降りた。

アルベルトは馬を木に繋げることもせず、馬に話しかけた。


「いいか、危なくなったら逃げろよ。私たちを置いて行って構わないからな」


――ヒィヒーン!


馬は前足を上げ、アルベルトの言葉に反発しているようにみえた。


「ここからは、お前の足では難しいんだ。ここからは私たちだけで行く、お前は気をつけて帰れ。いいな?」


アルベルトは、馬にも言葉が通じると信じて話しかけた。

馬は諦めた様におとなしくなり、遠ざかっていく木の枝で作った松明の明かりを大人しく見送っていた。

ハルナとアルベルトは一本の松明の明かりだけで、薄暗い霧雨の森の中を進んで行く。

その目印は、横を流れる川の流れだけを頼りに進んで行った。

道は上り坂となりさらに普段人が足を踏み入れないため、濡れた草や苔で足元が滑りやすくなっていた。

足元に気を使いながら歩くと、登っていくその疲労はさらに負担がかかっていく。


「あ!」


ハルナは、疲れた足で踏んだ岩の苔に滑り体勢を崩した。


「大丈夫ですか!?」

「は、はい。なんとか、大丈夫そうです。少し腕を打ってしまいましたが大丈夫です」


アルベルトは、ハルナの手を掴み身体を引き起こす。

その力の入れ方は、強引でもなく上手に相手の身体をサポートするように手伝ってくれた。


(これじゃアルベルトさんに惚れてしまうのも……仕方ないわね)


ハルナは今の状況に似つかわしくないことを、頭の中に浮かべて笑った。


「ハルナさん、岩も徐々に大きくなってきていますし、川の流れも速くなってきています。もう少しだと思いますので、もうしばらく頑張ってください」


確かにこの小雨のせいか、川の水が少し増してきたように見える。

それに川の流れる音が速く、大きくなってきているため、アルベルトが言った言葉がハルナのやる気を出させたり、単なる気休めでないことが分かった。

アルベルトは休憩も兼ねて、ここで短くなった松明を交換した。

他の木から枝を折り、湿っているためその先に布を巻きオイルを染み込ませて火を点けやすいようにした。

火が落ち着くのを確認し、再び更なる上流を目指して歩き始めた。


時間が経つにつれ、川の音に混ざり滝の音が聞こえ始める。

そこから登るペースが速くなり、次第に滝の音が大きくなっていく。

そして、ようやくハルナたちは目的の場所に到着した。


「こ……ここが……」

「そのようですね」


ハルナは、息を切らし防寒具を着ているため少し汗ばんでおり、吐く息が白くなっていた。


「ハルナさん、あの横から滝の裏側に入れそうです」


そういって、アルベルトはハルナに手を差し伸べ、暗く滑りやすい道にサポートした。

確かに暗くて足元が見えないため、滑ってこの滝つぼに飲まれてしまったりすればその姿を探すのは容易ではない。

二人はゆっくりと滝つぼを半周するように周り、滝の水滴を浴びながら滝の裏側に進んで行く。

そこには、表からは見えない空洞が存在していた。


「ここが滝の裏側……」


滝が落ちる音で、ハルナのつぶやきは聞こえなかった。

アルベルトは空洞に松明を向け、その中を確認しようとした。


――ジュッ


松明の明かりが一瞬にして失った。


『――何者だ、お前たちは』


滝の騒音の中でも聞き取れる程の声が、ハルナとアルベルトの頭の中に響いた。




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