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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-44 噂の薬草



「どうされました、何かお困りごとですか?」


一人の男性が、ハルナたちの背中に向かって話しかけてきた。

その声の方向にみんなで一斉に振り向いたため、話しかけた男は一瞬ひいてしまった。


「申し訳ございません、こんなところで人と出会うとは思っておりませんでしたので……」


この男に敵意はないと感じ、アルベルトは親切に話しかけてきてくれたのに驚かせてしまったことを詫びた。


「いえいえ、道中困った時は助け合いませんと。それで、どうなされたのでしょう?」


アルベルトは、詳しいことは告げずに山を越える途中、急にエレーナの具合が悪くなり高熱を出して今では意識が低下している状況であることを伝えた。


「そうでしたか。もしやと思いお声をお掛けしましたが、ここ最近同じような症状を見せているものを多く見かけております」


この男性は、商人で主に薬草などを取り扱い処方する”薬草師”という職業の男だった。

ここ数年で、エレーナと同じような症状を見せるものが増えてきたという。

中には小さな子供が発症してしまい、耐えられずに命の炎を消してしまうこともあるという。


「それで、この症状に聞く薬草はあるのでしょうか?」


ステイビルもたまらず、この問題の解決方法を探ることに頭がいっぱいになっていた。


「あることにはあるのですが、効き目は薄く対処療法のものしかございませんでして……」

「この症状を根本的に改善するものは無い……と?」


男は、ステイビルの言葉に頷く。


「エレン……」


アルベルトは、苦しそうに眠るエレーナの神を手櫛でなでる。


「こ……これは、あくまで噂なのですが」


男は急に話しを始める、アルベルトのその辛そうな表情を見て黙っていることが出来なかった。


「この先に行くと、川があります。それを遡っていくとそこには滝があるようです、その裏にある洞窟に苔が生えておりその苔が効いたという噂も……」

「ほ、ほんとか?」

「いえ、あくまで噂ですよ。それに、この時期は寒さで滝の方まで行けないでしょうし。普段でも、私のような力の無い者は危険でそこまでたどり着くことはできません」


男は、情に流されてしまいこの話をしてしまったことを少し後悔した。

相手に確かでない情報を渡してしまい、それによってこのメンバーが全滅することだってあり得る。

だがこの目の前の男二人は、完全にその場所に行こうとしている顔つきだった。


「お、おい。君たち、これはあくまでも噂で……」

「だが、このまま持っているよりは少しの可能性にも欠けてみなければな」

「それでは、私がいってきます」


立ち上がろうとするアルベルトの腕をつかみ、制止するステイビル。

だが、それをソフィーネが止めた。


「なりません、ステイビル様。あなたの身に万が一のことがあれば、取り返しのつかない事態になります」

「離せ、ソフィーネ。私のせいで、エレーナはこのようなひどい目に遭っておるのだぞ!」

「やはり、そういうことを気にされていたのですね……今までも」


西の国や、モイスティアでの酒場など、ステイビルは率先して自ら行動を起こしていた。

その裏側には、今回の王選に”付いてきてもらっている”という思いが強かったようだ。

そのため、全て自分が解決をしてその他の者の身を護ろうとしていたのだった。

今までは、相手が人であることと、ステイビルの実力で敵う相手ばかりだったため問題なく解決することが可能だった。

しかし、これからの各神々に向かう途中に全て今のステイビルの実力だけで対処できる場面かどうかはわからない。

状況によっては、ハルナ、エレーナ、ステイビル、ソフィーネの力を使っていかなければならないのだ。

ソフィーネはそういった内容を説明し、ステイビルを説得し考えを改めてもらうようお願いした。


「すまんな……そんな風に気遣わせてしまっていたなんてな」

「いいえ、そんなにお気になさらないでください。ただ、誰一人欠けてもこの先の旅は辛いものとなるでしょう。ですから、エレーナのことを思う気持ちは皆一緒です……ね?」


急にソフィーネから振られたハルナは、ハッとしてそのままぎこちない笑顔でうんうんと頷くだけだった。


「そうだな。この王選、皆で無事で乗り越えてみせようぞ!」


一同は、その言葉に頷いて応答した。

ただ一人、話しに付いて行けない者がいた。

口を開け、ポーっと見ている薬草師の男だった。


「ステイビル……ステイビル?どこかで聞いた……王選?す、ステイビル王子!?」


やっと事態が呑み込めた男は、驚いて後ろにひっくり返りそうになった。


「驚かせてしまってすまんな、お主も出来る限り協力をしてくれぬか?今この場だけでもいい」


男は王子に頼まれたことなど断れるはずがないと、片膝を付いてその言葉に返した。


「か、畏まりました。できる限りのお手伝いをさせていただきます!?」

「うむ、よろしく頼む。使った薬草は、正規の料金は支払させてもらう。……ただ、こういう旅なのでそんなには持っていないのでその辺りを考慮してくれると助かる」

「はは、お任せください!」


その後ろでは、マーホンが適正価格の判断と資金についてはお任せをといった顔つきでステイビルに合図した。


「それでは、先ほどの場所にはアルベルトとハルナで向かってもらいたいが……いいか?」

「「はい!」」

「残ったもので、周辺の警備とエレーナの症状について対応していく!」

「「はい!」」

「それでは、二人とも頼むぞ!」


そう命令されたハルナとアルベルトは、早速準備に取り掛かりまずは目印となる川に向かって進むことにした。




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