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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-40 池を見守る者



「……特に何もなさそうだけど?」


フウカが、一緒にいるヴィーネにそう話しかける。


「でも、"あの"嫌な感じは消えていないんだ。何なんだろ?」

「ふーん。あ、もっと深い場所があるよ、行ってみようよ!」

「あ、待ってよ!フウカちゃん!?」


フウカは、一人でもっと奥に進んでいく。

だが、奥に進むにつれてヴィーネの嫌な感じの濃さは増していった。

水面を見上げると、明るさは感じるものの、フウカたちの場所までは光が減衰して届かなかった。

フウカたちは、この深蒼の世界の中に生き物が小さな生き物を含め、生息していないことには気づいていなかった。


「あそこが一番深いところだね……きっと」


フウカは目についた場所に向かって、進んでいく。

その後、イヤな感じは更に増していき、何もない見渡しのよい水中を注意しながら進んでいった。

フウカは、池の水底に一つ穴が開いているのを見つけた。

その穴に近寄っていき、中を確認する。

水はそこから噴き出していたようだった。


「ねぇ、ここから出てるんじゃない?水」

「どうやら、そのようだね。周りを見ても、水の流れが強く起きているのはここだけみたいだし」

「ちょっと中を見てこよっかな……」

「え?危ないよ、やめておきなよ!まずは一回上に戻ってエレーナたちに相談した方がいいってば!」



ヴィーネはフウカの腕を掴んで、引き留めようとする。

が、フウカはその手を掴んでニッコリと笑った。


「さぁ、行こうよ!ここまで何もなかったんだから、何も起こらないよ。きっと!」

「その自信はどこから来るんだぁぁぁ……!」


フウカの方が力強く、ヴィーネは引っ張られながらその穴に向かっていった。


『お前たちが、今回の精霊か?』


その声に驚きフウカは急に止まり、その勢いでヴィーネはフウカの背中にぶつかった。


「――だれ?」


フウカは声の主を確かめるため、問いただした。

その後ろではヴィーネが周囲を確認しながら、ガタガタと震えている。


『ほっほっほっ、肝の座った小娘じゃの。後ろの小僧とは大違いじゃ……だが、そんな娘も嫌いじゃないがのぉ』


その声の主は、水底に積もった砂や泥を舞い上げてその姿を見せた。


「んぎゃー!!!嫌な予感の正体はこれだったんだ!」


その姿を見てヴィーネは、恐怖のあまり大声を上げて叫んだ。


『うるさいのぉ、静かにせんか。そんな大声出さんでも聞こえとるわい……』


その姿は、"デンキナマズ"そのものだった。


「口が大きくて、ヒゲが長いね」

『ワシの姿を見ても驚かんのか、小娘。その度胸は本物か、はたまたただの痴れ者か?』


その者の細い目つきが堪え切れない笑いで釣り上がり、久々の楽しそうな小さな客人を見定める。


「おじさん?お魚さん?……は、ずっとここにいるの?」

『ようやく、ワシのことを聞いてくれたか。……そうじゃよ。ワシは生まれてから現在に至るまで、ずっとここにおるんじゃ』

「一人で?家族は?」

『おらんよ、ワシはある役目を持って生まれたんじゃ。大竜神"モイス"様のお力によってな』

「あー、この前水をきれいにしてくれた竜さんだ!」

『なぬ!?お主、モイス様とお知り合いか?』

「お知り合いっていうか、手伝ってもらったんだ。ここの水をきれいにするのを」

『なんと、お主もモイス様と同じ力が使えるのか?』

「なんか、皆は光の力ってたけど、黒い物を消したりは出来るよ!」

『ほっほ、今回の精霊は優秀じゃな。だが、それだけではワシに敵うかどうかは判らんぞ』

「え、何ですか?敵うとかどうとか……」

「小僧は察しが悪いのぉ。……お前たちは、モイス様の場所を探るための水路を探しに来たんじゃろうが?」

「って言うことは……」

「ようやく飲み込めたか。ワシに参ったと言わせれば、その入り口を教えてやろう。それがワシのここでの役目の一つじゃ!」


ナマズは水底からヒレで蹴り上げ、喋り方とその体格から想像できないくらい、機敏な動きを見せた。


『お前たちの力を見せてもらおうぞ。その内容は、ワシを通じてモイス様もご覧になられておるからな。せいぜい精一杯出し切って見せよ!』


そういうとナマズの髭が帯電し始め、水中でもバチバチと音を立ててその力を蓄えているのがわかる。


『それでは、参るぞ……!』


ナマズの髭から放出された電撃は、危険を感じ退避した先ほどまでいたフウカとヴィーネの場所に到達する。

その場所の水は、一瞬にして泡となって視界が遮られる。


『……まだまだ行くぞ、ほれっ!』


先程の泡で視界が不自由になっていたが、フウカとヴィーネは今までの勘を頼りに被弾を避け続ける。


『やるのぉ。小僧もすぐにやられてしまうかと思っとったが、なかなかどうして……』


泡が徐々に消えていき、二人は周りの様子が見えてきた。

フウカもヴィーネも視認はできる距離だが、会話ができないほど離れていた。

そのため、作戦を立てることはできない。


だが、今まで二人はハルナとエレーナの訓練のマネをして、遊びながら訓練を重ねていた。

なので、お互いの癖やタイミングが今では手に取るようにわかるようになっていた。

二人は、まず厄介な”髭”を何とかしようと試みる。

初めにヴィーネが、ナマズの周りを凍らせて動きを封じ込めた。


「ぬ、動けぬ。やるな……」


ナマズは髭を通じて氷に電流を流し、その熱で氷を溶かそうとした。

本来はここで、フウカが風の円盤で髭を切り落とすはずだった。

が、水の中では空気が存在しないため風を起こすことが出来なかった。


「どうしよう……」


そのことを察して、ヴィーネがフウカに近寄る。


「フウカちゃんは、空気がいるんだよね……さっき電撃がきたとき泡が出来たよね?あれ使える?」

「多分……あれなら操れると思うけど、さっきみたいに危なくなるよ?あれもどこに来るか分からないし」

「水の中なら、僕の方が得意だから……ま、任せてよ!」


ヴィーネは今まで見せたことのない決心した表情で、自分の周りの氷を解かそうとしているナマズと向き合った。




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