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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-22 モイスティアの入り口で



ハルナたちは、朝食の片づけを行い荷物を整理して馬車の中に収納した。


「ス……。っと、ガヴァスさん、荷物の積み込みが終わりました」

「分かった。そろそろ、出発するか……ノーランさん?」

「はい」

「ノーランさんは、私とソフィーネが一緒の後ろの馬車にお乗り下さい」

「ありがとうございます」


ノーランは馬車に乗り込み、ソフィーネと対峙して座った。


今日の前の馬車の操縦は、エレーナだった。

昨日のジャンケンでハルナの負けが確定した後、エレーナとマーホンが再度ジャンケンをしてその次にどっちが操縦するかを決めていた。

これによりハルナ、エレーナ、マーホンの順番が確定し、その時々の危険な場所でアルベルトに交代するという決まりを設けた。


「それじゃあ、行きますよー!」


エレーナが後ろのステイビルに声をかけて、ステイビルがそれに応じる。


「はい!」


エレーナは掛け声と共に手綱で馬に合図をする。

すると、馬はゆっくりと歩を進め始めて景色がゆっくりと迫ってくる。

速度が徐々に速まり、一分も経たずに速度が巡航速度に到達する。

エレーナも徐々に、馬車の操縦が楽しくなってきた。


「それにしてもマーホンさ……いや、メイルさん。あの方に見覚えはないの?」

「まだ、その名前にしっくりきませんが、私を探していたと言いますが、見覚えはありませんね」

「そういえば、一族の繋がりもそんなにないって言ってましたっけ?」

「そうなのです、ハルナ様。うちの一族は、結構自由好き勝手にやっている者が多くて。たぶんあのノーランという者も、私が好き勝手やっていると思っているのでしょうね……」

「そうかもしれないわね、すごく怒っていたものね」

「それもそうですが、その今体調がよろしくないと言っていた祖母様が、今回の目的の人物なのではないですか?」


そう告げたのは、アルベルトだった。


「こういう性格の一族ですので、そんなに他の家の事情には詳しくはないのですが。"モレドーネ"にいる老婆で、そこまで大事になりそうな人物は一人しか思いつきません……もちろん、それは今回目指している人物です」



――前の馬車を追いかけるステイビル。

その後ろの馬車の中には、ソフィーネとノーランが乗っている。

ノーランはソフィーネに質問をした。


「あなた方は、どうしてモレドーネまで行かれるのですか?」


この質問は必ずされるであろうと推測し、事前にどのように答えるかは話し合って決めていた。


「私たちは、さまざまな町の伝説を探し求めています。今回、エフェドーラ家に伝わるうたがあると聞いて、その調査に向かっています」

「へー、そうなんですね。ステキなお仕事で羨ましいです。もし、そんなうたがあるなら是非聞いていみたいです!」

「ノーランさんは、ずっとモレドーネにお住まいなのですか?」

「はい、そうです。生まれてからずっとモレドーネに住んでいます」

「他のエフェドーラ家の方々は?」

「初めは祖母様の近くに住んでいたようですが、ある時期一斉に散らばり町を出て行ったと聞いています」

「それは、ノーランさんが実際にお聞きになられた話ではないのですか?」

「実際は、私の両親から聞いた話なのです。何せその時は私は、まだ子供でしたから……」


そういうと、申し訳なさそうにノーランは下を向いた。

ソフィーネもこれ以上のことは、情報収集以上の危険を感じたためここで話題を打ち切ることにした。



その後、ハルナたちの馬車はひたすら走り続けた。

一度だけ小休憩を挟んだ際にマーホンが馬車の操縦を変わることを申し出たが、”徐々に感覚がつかめてきた”との本人の申し出にエレーナが引き続き馬車を走らせていくことになった。

そのまま、数時間。

ようやく森を走る道が整備された走りやすい道に変わり、すれ違う人や馬車を見かけるようになってきた。

そして馬車はいよいよ、モイスティアの関所の前に到着する。

検問を受ける際に、一度馬車は駐車場に停めておいた。


「それでは私が検問の手続きをしてきますので、ノーランさんはここにいてください。あなた、今自分を証明するものを持っていないでしょ?」


そういうと、ノーランは頷いてソフィーネの言うことを聞くことにした。

ソフィーネは馬車を降りて、すぐに扉を閉めた。

余計な物音が中にいるノーランに聞こえないために。

目の前には、エレーナとハルナとアルベルトが馬車から既に降りていた。

そして近付いてきた警備兵と話しをしている。



「どうしたのですか?」

「あ、ソフィーネさん。今の状況を説明していたのですが、なかなか信じてもらえなくて」


ハルナとエレーナが困った顔で、ソフィーネに話す。

ソフィーネなら元々ティアドに仕えていた身であるし、この町にも住んでいたのでここの警備兵とは話が通じるのではないかと期待した。


「……というわけなのです。ですから今は、ステイビル王子のことは”ガヴァス”と呼ぶようにしてください」


どうやら、この警備兵は最近配置された新人のようだった。

これでは、ソフィーネのことは判らないだろう。


「うーん。にわかには信じられませんね。本当にこの場所に王子がいるんですか?とにかく私では判断しかねますので、隊長を呼んできますしばしお待ち……」

「おい、どうした?何か問題でもあったのか?」

「あ、ステイビルさん」


なかなか帰ってこないソフィーネにステイビルはしびれを切らし、この場所にやってきた。


「ステイビル……?王子……様ですか!?」


若い警備兵は驚く。

本来ならば、こんなところにいないはずの人物が目の前にいる。

その驚きと緊張のあまりに、警備兵は片膝を付いて俯いた。


「お……王子よ。ももも、モイスティアへ、よよようこそ!?」

「おい、よせ!立って顔を上げろ!そして普通にしてくれ!?」


ステイビルは、その態度に焦った。

後ろからは、ノーランが見ているかもしれないのだ。

その異変を感じとった隊長が、この場にやってきた。


「おい、どうした新人。なにを……おぉ、これは、ソフィーネ様。お久しぶりでございますな。今日は、どうさ……あ……そちらのお方は……もしかして……まさか。ス……ステイビル王子!?」


と、同時に後ろから声が掛けられた。


「……あのぉ、何かありましたか?」


その後ろには、ノーランの姿があった。




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