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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-20 救助



「ハル姉ちゃん、あそこに人が倒れているよ!!」


フウカのその声にハルナは、馬車の速度を徐々に落として近づいていく。

ハルナたちの後ろを走るソフィーネも、その異変に気が付き前に合わせて速度を落とした。

馬は道に倒れている人物を、上から覗き込むように止まった。

ハルナが真っ先に飛び降りて、倒れた人の元へ駆け寄る。

ソフィーネもその後を追って飛び降り、ハルナの元へ駆け寄る。

ハルナは、昔大学で教わった避難訓練を思い出した。

すぐに起こしてしまうと状態が悪化する可能性があるため、まずは呼吸をしているか確認した。

じっと眺めていると、かすかに身体が呼吸に合わせて動いているのが見て取れた。

うつぶせで倒れこんでいる身体を起こし、ハルナは問い掛けた。


「大丈夫ですか?しっかりしてください!」


ハルナは、女性の肩を抱えて何度も話しかける。


「み……水……」


その様子を見た、馬車に乗っていた全員が降りて寄ってきた。


「どうした……何があった?」


ステイビルが、ハルナの背中に向かって話しかける。


「道に人が倒れていたようです……それをフウカ様が発見し、今救護しています」


ハルナに頼まれて水を持ってきたソフィーネがステイビルに現状を説明しつつ、その水をハルナに手渡した。

ハルナは、コップの水をその女性の口元に持っていき軽く水を流し込んだ。


「ゴホ……ゴホ……」


全身が疲弊しているのだろうか、女性は飲み込む力が弱くなり気管に入ってしまったようだ。

ハルナは吐き出した水を布で口元をぬぐった。

何故かその様子を、マーホンは羨ましそうに眺めていた。

そして改めて、コップを口元に持っていきゆっくりと水を口の中に注いでいった。

すると二度目は目をつむったまま、ゆっくりと水を飲みこんでいる様子が伺えた。

その様子を見てステイビルは、休憩を兼ねて女性の回復を待つことにした。

しばらく経ってその女性は、話ができるまで回復した。


「どうも……ありがとうご……ざい……」

「いいんですよ、まだ無理して話さなくても。とにかく今は、回復することに努めてください」

「ありがとう……ございます」


そう言ってその女性は、目をつむって眠りに付いた。

目からは、一筋の涙が零れていた。

その女性が、次に目覚めたのは日が落ちてからだった。

女性のためにハルナたちは、この場所で一晩過ごすことになった。

ハルナたちは焚火を囲むように座り、食事を採った。

今夜の食事は、アルベルトが用意をしてくれた。


「……にしても、初日から躓いてしまいましたね」

「でも、エレーナ。倒れている人を放っておけないでしょ?」

「そうだな、誰であれ困っている者を見捨てることなどできないな」

「何なの!?私、悪者??」


エレーナも王子にそういう言葉で返せるくらい、地位の差を感じることが少なくなってきた。

ステイビルとしても、これから始まっていく旅の中で遠慮されては困ると常々口にしていたため、そのような流れになるのは嬉しく思える。

特にハルナよりもエレーナの方が、親しい態度で接してくれるよう努力(?)してくれていたし、元々人懐っこい性格なのも幸いしているのだろう。


「モイスティアまで、半分は過ぎた頃ですかね?そこからモレドーネまで……気が遠くなるわね」

「……あのぉ。モレドーネまで行かれるんですか?」


その声は、背後から聞こえた。

皆で声の方向を向くと、そこには弱々しい女性が簡易テントから出てきて立っていた。


「起きることが出来たのですね、具合はどうですか?」

「助けて下さり、ありがとうございます。このご恩は、一生忘れません」


その女性は言い終わると同時に、身体を支えるのが辛くなったのかよろけてしまった。

その身体を丁度前にいたエレーナが支え、倒れるのを防いだ。


「お礼は、ちゃんと身体が良くなってから……ね?それよりこっちに来て、火にあたったら?」


今回の道はディヴァイド山脈に向かっていた時と違い、森の中を進んで行く道となる。

道幅は馬車がすれ違えるくらい広いが、森の中の方が寒さを感じる。

持ってきた丸太の上に全員座っており、その女性にも座るようにエレーナは手を引いた。

座ったことを確認して、アルベルトは作っていた温かいスープをカップに注いで女性に手渡した。


「ありがとうございます……食事まで頂いて。それでは、遠慮なく」


女性は渡されたカップを両手で持ち、その温かさを感じる。

そしてカップを口元まで運んで、少量のスープを口に含んで味わった。


「美味しい……!」


女性は素直にその感想を口に出した。


「そりゃそうでしょうね、アルベルトのこういうところで作る料理は上手なのよ!」


何故かエレーナが自慢げに、女性の感想に応えた。

そんな様子を横目に、ステイビルが女性に話しかけた。


「アナタはなぜ、あんなところで倒れていたんですか?」


とても好みの味のスープだったようで、一気に飲み干した後、女性はステイビルの質問に答えた。


「人を……探しているのです」

「人……ですか。お知り合いですか?それともご家族?」


今度はハルナが、その女性に質問をした。


「知り合いでも家族でもありません……探している人物は、我がエフェドーラの本家の人物で、”マーホン”という人物です」




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