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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第三章  【王国史】

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3-7 次の滞在先



「それでは、ハルナ様お元気で……」

「はい、マーホンさんも。いろいろとありがとうございました」

「何かあったら、すぐ連絡してくださいね。いつでも駆け付けますので」

「お心遣い、ありがとうございます。その時はぜひお願いしますね」

「それから、いつも着ていらっしゃった普段着は三番の箱に入っております。よくご使用になられていたコップは……」


マーホンの世話がなかなか止まらず、いつまでたっても出発できない状況が続いていた。

それを見かねた他の従者が、マーホンに声をかけた。


「マーホン様。名残惜しいのはよくわかりますが、それくらいにしておきませんと、ハルナ様が待ち合わせの時間に遅れてしまいますので……」

「え?もうそんな時間でしたの?まだ、数分しか経っていないと思っておりました。ハルナ様、エレーナ様も申し訳ございません」

「私たちも、皆さんのおかげでとても居心地もよく、いい思いができました。本当に短い間でしたが、いろいろとありがとうございました」


エレーナが締めの雰囲気を前面に出し、最後の挨拶を告げた。


「それでは、マーホンさん、皆さんもお元気で。ありがとうございました、また来ますね!」


ハルナはずっとマーホンに握られていた手を解いた。

解いた掌から、温かったマーホンの体温が風によって奪われていくのを感じる。

ハルナたちは、用意された馬車に乗り込んでいった。

その様子を見守る、従者の表情は様々だった。


ハルナが馬車の窓から見たマーホンの表情が、本当に悲しそうで心に痛みが走った。

そこまで自分のことを親しく思っていてくれたことに、ハルナはもう少し話す時間を費やしてあげればよかったと後悔する。

そして、馬車の前の方から出発する号令が聞こえゆっくりと窓から見える景色が動き始める。

最後に見えたのはマーホンが膝から崩れ落ち、顔を手で覆い悲しんでいる姿だった。


馬車は今までの親しんだ施設を離れ、新たな拠点となる場所へ向かって進んでいった。

走り始めてから数十分、今まで見たことのない建物が視界に入ってきた。

その姿は今までの施設と違い、贅沢な様相を呈していた。

推測するに今回は王子と一緒に生活を共にするため、王子が住まう施設が貧素な者であってはならないということであろうと考える。

だが、ハルナの目には郊外にある男女の休憩所のような外観にも見えた。

しかし、文化や芸術は、その世界や地域によって何が最高級なものか変わってくるため、喉まで出かかっていた言葉をハルナはグッと飲み込んだ。


「うぅわっ、なに!?あの悪趣味な建物は!!」


エレーナがその建物を目にした感想を、素直に口にした。


「え、やっぱり?エレーナもそう思う?」

「あったり前でしょ!?あれのどこが良いと思えるのよ!これを作った人は、金に物を言わせて自分の権力とかを誇示したい人が造ったに違いないわ!!」


アルベルトとソフィーネを見ても、黙ってうんうんと頷いている。

ハルナは、自分の感性がこっちの世界でも間違っていないことにホッとした。


「あれは確か……ここ数年で貴族の仲間入をした”コリエンナル”家が手掛けたと聞いています。商人の出身で、エレーナ様の仰る通り金で物を言わせるタイプの人間のようですね。」


ソフィーネが自分の中にあった情報と照らし合わせて、ハルナたちとの答え合わせをしてくれた。


「……どこの世界でも、そういう人はいるのね」

「ハルナのいた世界でも、やっぱりいたの?そういう人」

「実際にはあったことないけどね。お店……いや、知っている人に聞いたんだけど、集団の中とか政治に関わる人とかいっぱいいるらしいよ」

「どこでも一緒なのねー、人が持つ欲は」

「そういう意味だと、どちらの世界も大差ないわよ?道具とかは発展していたけど、精霊とかいなかったし」

「へー、そうなんだ……一度でいいから、ハルナがいた世界も見てみたいものね」


そんなたわいのない話をしていると、馬車は建物前で停車した。

ハルナたちは降りる準備をした……が、なかなか扉が開かなかった。


「……どうしたのかしら?」


エレーナが馬車の窓から覗こうとした瞬間、扉の鍵が開かれる音が聞こえた。

ゆっくりとドアが開かれたその時……


「「――!!!!」」



ドアが開かれたと同時に、大音量の打楽器の音が鳴り響く。

通路を挟んで、左右には施設の従者がきれいに並び、満面の笑顔でハルナたちに拍手を送っている。


「ハルナ様ー!!」

「エレーナ様ー!!」

「ようこそおいで下さいました!!」


様々な歓迎する声が、左右から拍手と打楽器の音に紛れて聞こえてくる。


「ちょ……ちょっと、なんなのこれ!?」


エレーナは思わず、大声で叫んだ。

だが、その声も周りの音にかき消されてしまいすぐ後ろのハルナにも聞こえなかった。

その風景に呆然とするハルナは、馬車の扉の前で立ち尽くしてしまう。

その背中をソフィーネが軽く触れて、ハルナに降車するように促した。

ハルナたちは馬車を降りて、施設の入り口の中に続く赤いカーペットの上に降り立った。

すると、カーペットの奥から小柄な小さな目が吊り上がった男が後ろに女性を二人ほど連れて、ハルナたちに近寄ってくる。


「ようこそおいで下さいました。エレーナ様、ハルナ様!長旅お疲れでしたでしょう?」


両手を広げて、馴れ馴れしく話し掛けてきた男は、これまた悪趣味なアクセサリーを多数身に付けていた。

あまりの悪趣味な格好に、ハルナもエレーナも目を細めながら見ていると、さらに男は距離を詰めてきた。


「申し遅れました、わたくしここの館長をつとめております”ジェフリー・コリエンナル”と申します。以後、お見知りおきくださいませ」




「はい、マーホンさんも。いろいろとありがとうございました」



「何かあったら、すぐ連絡してくださいね。いつでも駆け付けますので」



「お心遣い、ありがとうございます。その時はぜひお願いしますね」



「それから、いつも着ていらっしゃった普段着は三番の箱に入っております。よくご使用になられていたコップは……」





マーホンの世話が中々止まらず、いつまでたっても出発できない状況が続いてた。

それを見かねた他の従者が、マーホンに声をかけた。





「マーホン様。名残惜しいのはよくわかりますが、それくらいにしておきませんと、ハルナ様が待ち合わせの時間に遅れてしまいますので……」



「え?もうそんな時間でしたの?まだ、数分しか経っていないと思っておりました。ハルナ様、エレーナ様も申し訳ございません」



「私たちも、皆さんのおかげでとても居心地もよく、いい思いができました。本当に短い間でしたが、いろいろとありがとうございました」






エレーナが締めの雰囲気を前面に出し、最後の挨拶を告げた。





「それでは、マーホンさんや皆さんお元気で。ありがとうございました、また来ますね!」





ハルナはずっとマーホンに握られていた手を解いた。

解いた掌から、温かかったマーホンの体温が風によって奪われていくのを感じる。



ハルナたちは、用意された馬車に乗り込んでいった。

その様子を見守る、従者の表情は様々だった。



ハルナが馬車の窓から見たマーホンの表情が、本当に悲しそうで心に痛みが走った。

そこまで自分のことを親しく思っていてくれたことに、ハルナはもう少し話す時間を費やしてあげればよかったと後悔する。




そして、馬車の前の方から出発する号令が聞こえゆっくりと窓から見える景色が動き始める。



最後に見えたのはマーホンが膝から崩れ落ち、顔を手で覆い悲しんでいる姿だった。







馬車は今までの親しんだ施設を離れ、新たな拠点となる場所へ向かって進んで行った。








走り始めてから数十分、今まで見たことのない建物が視界に入ってきた。

その姿は今までの施設と違い、贅沢な様相を呈していた。

推測するに今回は王子と一緒に生活を共にするため、王子が住まう施設が貧素な物であってはならないということであろうと考える。



だが、ハルナの目には郊外にある男女の休憩所のような外観にも見えた。

しかし、文化や芸術は、その世界や地域によって何が最高級なものか変わってくるため、喉まで出かかっていた言葉をハルナはグッと飲み込んだ。




「うぅわっ、なに!?あの悪趣味な建物は!!」




エレーナがその建物を目にした感想を、素直に口にした。





「え、やっぱり?エレーナもそう思うの?」



「あったり前でしょ!?あれのどこが良いと思えるのよ!これを作った人は、金に物を言わせて自分の権力とかを誇示したい人が造ったに違いないわ!!」



アルベルトとソフィーネを見ても、黙ってうんうんと頷いている。

ハルナは、自分の感性がこっちの世界でも間違っていないことにホッとした。




「あれは確か……ここ数年で貴族の仲間入りをした”コリエンナル”家が手掛けたと聞いています。商人の出身で、エレーナ様の仰る通り金で物を言わせるタイプの人間のようですね。」




ソフィーネが自分の中にあった情報と照らし合わせて、ハルナたちとの答え合わせをしてくれた。



「……どこの世界でも、そういう人はいるのね」



「ハルナのいた世界でも、やっぱりいたの?そういう人」



「実際にはあったことないけどね。お店……いや、知っている人に聞いたんだけど、集団の中とか政治に関わる人とかいっぱいいるらしいよ」



「どこでも一緒なのねー、人が持つ欲は」



「そういう意味だと、どちらの世界も大差ないわよ?道具とかは発展していたけど、精霊とかいなかったし」



「へー、そうなんだ……一度でいいから、ハルナがいた世界も見てみたいものね」





そんなたわいのない話をしていると、馬車は建物前で停車した。



ハルナたちは降りる準備をした……が、なかなか扉が開かなかった。






「……どうしたのかしら?」




エレーナが馬車の窓から覗こうとした瞬間、扉の鍵が開かれる音が聞こえた。


ゆっくりとドアが開かれたその時……






――!!!!





ドアが開かれたと同時に、大音量の打楽器の音が鳴り響く。

通路を挟んで、左右には施設の従者がきれいに並び、満面の笑顔でハルナたちに拍手を送っている。




「ハルナ様ー!!」



「エレーナ様ー!!」



「ようこそおいで下さいました!!」



様々な歓迎する声が、左右から拍手と打楽器の音に紛れて聞こえてくる。





「ちょ……ちょっと、なんなのこれ!?」



エレーナは思わず、大声で叫んだ。

だが、その声も周りの音にかき消されてしまいすぐ後ろのハルナにも聞こえなかった。




その風景にボー然とするハルナは、馬車の扉の前で立ち尽くしてしまう。

その背中をソフィーネが軽く触れて、ハルナに降車するように促した。




ハルナたちは馬車を降りて、施設の入り口の中に続く赤いカーペットの上に降り立った。


すると、カーペットの奥から小柄な小さな目が吊り上がった男が後ろに女性を二人ほど連れて、ハルナたちに近寄ってくる。




「ようこそおいで下さいました。エレーナ様、ハルナ様!長旅お疲れでしたでしょう?」




両手を広げて、馴れ馴れしく話しかけてきた男はこれまた悪趣味なアクセサリーを多数身に着けていた。


あまりの悪趣味な格好に、ハルナもエレーナも目を細めてみていると、さらに男は距離を詰めてきた。






「申し遅れました、わたくしここの館長をつとめております”ジェフリー・コリエンナル”と申します。以後、お見知りおきくださいませ」








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