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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第二章 【西の王国】

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2-109 審訊



ステイビルたちは一度、ニーナの部屋を探索することにした。

念のため王宮にはそのことを説明し、大事になりかけたがステイビルがいまはニーナの身体の異変は取り除かれ問題がないことと、犯人が判明しないまま王宮内にいればまた問題が起きる可能性があるため、王選のニーナ側の代表者であるボーキン宅に保護していることを伝えた。

本来であれば、王女が民家に泊まることなど大事になるはずなのだが、王選の一環であると判断しこのままボーキンの家で保護することが許された。


「何か証拠となるものが残っているといいのだが……」


だが、いつも通り部屋の中は綺麗に清掃されており、塵ひとつない状態となっていた。

これでは、昨日の状況を調べることなどできなかった。


「これじゃあ、証拠なんて何も残ってないですね」

「証拠を残すような相手なら、人も殺さないですよね」


アーリスとシュクルスは、それぞれの感想を述べる。

確かに、シュクルスの言う通り証拠を残すくらいなら、実行犯の口を塞ぐようなことはしないだろう。

それほど相手は、用意周到に行なっていると考えられる。


「情報収集していくしかないか……」


そう言って、ステイビルは一人用のソファーに腰を沈めて足を組む。


「随分とお困りのようね……」


部屋の入り口に、誰も気付かれずにその人物は姿を見せる。


「……フェルノール!」


シュクルスが思わずその名を呼んだ。


「ほう、こいつが……」


怪しい瞳の視線はシュクルスを通り越した、その先にいるステイビルをターゲットにしていた。

ステイビルもその視線に気付き、フェルノールに視線を返す。


(ちっ、こいつもか)


フェルノールは心の中でつぶやき、自分の思い通りに事が進まずに舌打ちをする。

ほんの五秒間程度なのだが、周りの者には無言のままでは少し長く感じた時間だった。

その無音の状態に苛立ち、アーリスはその沈黙を壊す。


「何故、あなたがこんなところに?」

「あら、心外ね。王女が危ない目に遭ったと耳にしましたので、心配になりご様子をお伺い参った次第なのですが」

「何を言う!お前たちがやったことなのだろう!?」


エルメトはその態度にイラつき、強めの口調でフェルノールに返した。


「あら……私はあなたの中では、相当悪者になっているようね。だけどその話に関しては、あなたたちの期待を裏切ってわるいけど全く知らないわ」

「な、何を!?我らに嘘までつくとは……許さんぞ!」

「待て、エルメト。そう熱くなるな、お前の悪い癖だ」


ステイビルは、冷静にエルメトの気持ちを静めた。

だが、エルメトの気持ちも収まりきらなかった。

ステイビルは、ヤレヤレと席を立つ。エルメトの肩に手を置いて、小さな声で”交代”と言ってエルメト下げて自分が前に出た。


「フェルノールといったか?いまの言葉、本当に嘘じゃないんだな?」

「あら、あなた。一般警備兵の割に、随分と威圧的な話し方をするのね」


ドアの場所にいたフェルノールは、部屋の中に入ってドアを閉めてそのドアに背もたれる。

その様子を見て、アーリスとシュクルスは焦った。

何が起きても、逃げ辛くなってしまった。

その慌てた様子を感じ取ったのか、フェルノールは二人に告げる。


「心配しないで、お二人さん。これから聞かれてはいけない話題になりそうだから、ドアを締めただけなのよ」


その言葉にステイビルも納得し、探り合いもなしで話し合おうと決めた。


「その心遣い、感謝しよう。改めて聞くが、本当にお前がニーナへの襲撃と従者殺害の犯人ではないのだな?」

「随分と率直に聞いてくるのね?……その答えに対しては”その通り”よ」

「では他にも聞くが、何故あの剣を狙っているのだ?」


質問が出た途端に、フェルノールの殺気がこの部屋に充満する。

その殺気にアーリスとシュクルスとエルメトは金縛りのように委縮した。


「調子に乗って欲しくないのだけれど、私が何でも答える義務はないのよ」

「そうか、それは失礼なことをしたな……で、まだ少し質問をしてもよさそうか?」


ステイビルはその殺気にも、まるで影響を受けず平然としていた。

フェルノールはそのことについても、あまり面白くはなかった。


「えぇ、あなたのその度胸に免じて、二つまで許してあげるわ。ただし、こちらも一つ答えてもらうことと、先ほどのような私を探るような質問をすれば、そこでこの場は終わらせるわよ……」

「分かった、それで構わない」


ステイビルと交渉が終わり、フェルノールは先ほどの殺気を解いた。

シュクルスは、止まっていた呼吸を再開させた。


「今回のニーナ襲撃について、何か知っていることはあるか?」

「そうね……ひとつ教えられることは、あの従者の死に方は人のせいではないわ」

「というと?」

「それに応じると最後の一つを使うことになるけどいいの?」


フェルノールはわざと目を細めて、ステイビルに確認する。


「おっと、それはまずいな。いまのは無しだ」


既にこの場の質問する人物が、ステイビルと決まっているようなやり取りだった。

実際、このようにフェルノールと問題なく話せそうなステイビルしかいないと判断し、三人は口を挟まずステイビルに任せていた。

フェルノールは、目を瞑り腕を組んでもう一つの質問を促した。


「カステオに会いたい、会わせてくれるか?」


その言葉を聞き、フェルノールの閉じていた開く。

本気かどうかを確かめていたが、どうやらステイビルは本気のようだった。


「そうね……その返事をする前に、私の質問に答えてもらうわ」


ステイビルは両手を挙げて、相手の質問を促す。


「あぁ、そうだな。一つ答える約束だからな」


フェルノールは組んでいた腕を解き、ステイビルに向き合う。


「……あなた、一体何者なの?」




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