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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第二章 【西の王国】

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2-108 捜索開始



エルメトを先頭に、ステイビルたちは再び王宮内に戻った。

特にニーナがいなくなっていることにも気付いてなく、大きな騒ぎにもいなかった。

この状況に違和感を感じるステイビルだったが、その感覚は頭の隅に置いてニーナのことを優先させた。


「それで、その従者は今どこにいるか分かるのか?」

「従者の部屋がありますので、そちらで確認しましょう」


――コンコン


「はい?」


部屋の中から声がして、ドアを開けてノックの主を確認する。


「あなたは?」


中にいた従者の女性が、エルメトの顔を見て身元を尋ねる。


「私は……」


エルメトが答えようとしたその時、後ろから肩を引かれ位置を入れ替えられた。


「ここに、今日のニーナの担当の従者はいるか?」


従者は警備兵の格好をした男の言い方にムッとする。

自分が仕える王国の王女の名を呼び捨てにしている警備兵。

本来なら、不敬罪で罰せられてもおかしくない発言だ。

その雰囲気を感じ取ったのか、アーリスがステイビルに代わって続きを話した。


「お仕事中、突然お邪魔して大変申し訳ありません。本日ニーナ様をご担当されていた方はどちらにいらっしゃいますでしょうか?」


アーリスのお詫びと急いでいる感じに対し、仕方なくといった感じでその女性は答える。


「あの子は、先ほど呼ばれて出ていきましたよ?」

「え?いつ頃の話でしょうか?」

「そうですね……確か三十分ほど前ですけど」

「まずいぞ、気付かれたかもしれん!?」


ステイビルはエルメトに告げる。


「急ぎましょう!」


アーリスは、仕事の邪魔をして申し訳なかったと再度お礼を言ってその場を離れた。

そして、危険なため二人ずつで城内の入れる範囲を捜索した。

しばらくして、エルメトとシュクルスは普段使われない物置の中で、その姿を見つけることになった。

頭と胴が繋がっていない状態だった。

アーリスとステイビルも遅れてやってきたが、アーリスにはその無残な姿を見せないようにした。


「遅かったか……」


ステイビルは、口惜しそうに告げる。

とにかくニーナが何者かに狙われていることが判り、ステイビルたちも狙われる可能性があるため、この場はエルメトに任せて他の三人は一旦ボーキンの家に戻ることにした。

その夜、久々に勤めから帰ってきたボーキンと一緒に全員で食事をする。

ニーナも身体を起こせるくらい回復し、一緒に食事を共にした。

味は全く問題なかった……というより、さすがアーリスといったところだ。

がしかし、明らかに動揺していることが感じられる味でもあった。

全員の舌はそれを感じ取っているが、口出さず心の奥に仕舞っておいた。

アーリスは、ニーナが王宮内で誰かに殺されかけたことと、その人物が王宮の中で口封じともとれる形で亡くなっていたこと。

それに自分がニーナの警備を任されてから、すぐに狙われてしまったこと。

アーリスは、疲れと自信喪失で既にボロボロになっていた。

それでも何かをしていないと、良くない感情に押しつぶされそうになる。無理やり身体を動かせば気が紛れるため、大人数の食事の用意をしてくれた。

一通り食事も終わり一息ついたところで、お茶を飲みながら今日のことを報告した。

そして不確定要素が多い中で、従者が殺害されたのは口封じの可能性が非常に高いということは一致した。

だがしかし、ニーナを殺害しようとした情報で、”誰が””何のために”というところは全く見当がつかない状態だった。

一番事情に詳しいボーキンに聞いても、今回は現場を離れていたため予測がつかないとのことだった。

様々な可能性や意見を出し合ったが、結局は推測の域を出ることはできなかった。


「結局、関係者に聞くしかないんですかね……」


キャスメルも様々な可能性や考えられることを挙げていたが、それによって状況を変えるようなことはできなかった。


「うーん、さすが俺の弟だな。俺も同じことを考えていたところだ」

「――え?」


エレーナはその言葉に耳を疑う。

誰しもできればそうしたいと持っていることを、平然と言ってのける双子の兄弟。

聞きに行ったとしても、相手が正直に答えてくれるかもわからないし、会ってくれることすらわからない。

だから普通は証拠を集め、それを相手に付きつけて逃げられない様に外堀を埋めていき追い詰めていく。


「もともと私が警備兵として入ったのは、カステオという王子をこの目で見極めたかったのだ。しかもそのフェルノールという怪しいものは、カステオの傍にいるのだろう?別々に聞く手間が省けて、一石二鳥じゃないか!」


『自分が思ったことは、必ず思い通りになる』

ステイビルのその口調は、そう信じて疑っていない話し方だった。

ここは、自分たちの判断では何ともできないと考えたエレーナは、ボーキンにステイビルの発言を確認してみる。


「それも……いいかもしれませんね」


手で顎を擦りながら、ボーキンは考える。


(えぇー!?)


思わぬボーキンの肯定的なつぶやきに、エレーナは心の中で驚いた。

ボーキンは顎を擦ったまま、目線だけステイビルに向けて言葉を続ける。


「ただ、王宮警備兵だとしても一般警備兵が直接王子に面会することはできません。王子から依頼で報告に行くのであれば、こちらから行っても良いのですが」

「ふん、そんなじれったいことをせずとも何とかして見せるさ……」


そう言って、ステイビルの思惑通りに事が進んで行く。

翌日、ステイビルたちは再び王宮へと向かっていった。




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