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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第二章 【西の王国】

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2-103 半分のブレスレット



「作戦、第一段階は完了です!」

「そうか!よくやってくれた、シュクルス様もご苦労でした」


ボーキンがニーナの部屋の中に来ていた。

その一報を聞き、早くハルナたちにそのことを知らせるため、エルメトを急いで戻らせた。


「ニーナ様の身の回りは、特にお変わりはありませんでしたか?」

「はい、私は大丈夫です。それよりも、皆さんが大変な思いをされておりますので心配です……ボーキンさんも気を付けて下さいね」

「有難うございます、ニーナ様。この王選、必ずやニーナ様に勝利を」


そう言って、ボーキンはアーリスとシュクルスを残し本部へ戻るために部屋を出た。

ボーキンは扉を閉めると目を瞑り、天井を仰ぐ。

そして何かの思いを振り切るように頭を振って、大きく深呼吸をして本部に向かうため歩み始めた。


――その夜

今日は久々に、宿屋に客がいない日だった。

西の国で王選が開始され、西側から東に向かうことが当分できなくなったからだ。


「……しばらくは、客の少ない日が続くねぇ。ゆっくりと宿の中の片付けでもしようかね」


マギーはそういって、久々の暇を噛みしめていた。

外に出て、休憩用の椅子を片付けて入り口のドアを閉めようとした時、暗闇の中から四つの人影が文字通り浮かび上がった。

その男たちは、全く意識がなく少し意識も錯乱している様子で話ができるような状態ではなかった。

マギーは今までの勘で、明らかに異常を感じて警戒し、軒先に置いてあった刃を研ごうとしていた包丁を手にして構えた。


「な、なんだいアンタたちは!またウチを壊しに来たのかい!?何度壊してもね、この大切な店はね、潰させやしないよ!!」


マギーは襲ってくる人影に向かって、包丁の先を向けて威嚇する。

しかし、相手はひるむもなく店の中に入ろうとしている。

マギーは諦めていない。

しかし、相手に勝てる可能性は、全くと言っていいほどなかった。

気持ちでは負けていないが、頭の中に浮かぶのは人生で最も身近に過ごした三人の家族の顔だった。


(もうすぐ、あなたたちの傍に行けそうだね……)


そう思い、目をつぶって覚悟したその時――


ザシュッ!


目の前で、何かを切り裂く音が聞こえた。

ゆっくりと目を開けると、武装しているが西の国ではない紋章をしていた。


「間に合って良かった。お怪我はありませんか?」


その後ろで、数名の人影がバタバタと倒れていく様子が見えた。


「あ……あなたは?」

「これは失礼しました。私はドイルと申します。東の国の警備兵です、ハルナ様に頼まれてあなた様をお守りするように言われてやってまいりました」

「え?ハルナ……あの子が?」

「はい。今回西の王選にて、とある作戦を立てられており、マギー殿にも被害が及ぶ可能性があるとのこと。それでこちらの警備の要請がございました」

マギーは事前に知らせて欲しいと思ったが、ハルナたちのことだから急に何かの問題ごとに巻き込まれたのだろうと納得した。


「あの子はいつも、大変なものを背負いこんでるね」

「そうみたいですな」


二人は、ここにいない人物のことで笑いあった。

その後、他の警備兵より討伐完了の報告を受けた。



翌朝、ハルナたちの元に一匹のコボルトがやってきた。

ドイルの傍にいたコボルトだった。


「……ハルナさんの思っていた通りでしたね。どうやら、マギーさんのお店を、また何者かが襲撃した様です」

「そうなんですね!?やっぱりハルナさんの思っていた通りになりましたね、凄いです!」


ルーシーが読み上げた報告に、興奮するクリエだった。

だが、ハルナの顔色は良くなかった。


「間に合ったからよかったですけど、事情を知らないマギーさんに危険な目に遭わせてしまうところでした……いや、少しは危険な目に遭ったのかもしれません」


あの気の良い老婆が、ハルナの作戦のせいで危険な目に遭うとなったら冬美に申し訳ないと思う気持ちで一杯だった。


「でも、これでフェルノールという女性が剣を狙って襲わせていることの可能性が高まったわけね」

「何者なのでしょうか、そのフェルノールという人物は……」


カルディがそういうと、ルーシーが手紙にその先があることに気付いた。


「あ、続きがあります。……え!?」

「どうしたんですか、ルーシーさん!?」


ハルナが、手紙をみて止まっているルーシーに声を掛ける。


「ごめんなさい……手紙にはこうありました。”討伐した四人の男たちは、すでに死人アンデッドだったもよう”と」


書簡の中には、その中の男のひとりが身に付けていた所有物が同封されていた。


「こ、これは?」

「切れた……ブレスレット?」


ルーシーの手の中にある貴金属の残骸を眺め、クリエがつぶやいた。


「切れたブレスレットですか!?」


クリエの言葉に反応したのは、エルメトだった。

つい先日の行方不明者の捜索の依頼で、依頼者が見つけた現場に落ちていた証拠品も切れたブレスレットだった。

そのことをこの場にいる全員に告げると、全員の頭の中のフェルノールという人物の危険度がぐんと上がっていった。


「ニーナさんも、そんな人の近くにいたんじゃ危ないんじゃないの?」

「それよりも、カステオ王子の身も危険なのでは?」


エレーナの言葉に、アーリスが返す。

相手が企んでいることが判らないが、西の王国が危険な状態に陥っている可能性は高かった。


「とにかく、明日このブレスレットをもって、証拠品の照合を行ってきます。もしかしたら、別のものである可能性もありますしね」

「まずは、その確認を行いましょう。場合によっては、ニーナさんの安全も考えないと……」


ハルナがそう告げると、この場が重たい空気に変わり息苦しくなるのを感じていた。




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