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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第六章 【二つの世界】

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6-496 達成







「――あ」



ハルナは、思わず声をあげた。

その視線の先は、長年首からさげていたネックレスの中に入っていた石が、最後の瘴気を発しこの世から完全に消えて行った。




「どうかなさいました?ハルナ様」



今日は、スミレがハルナの元に訪れる最後の日だった。

明日からは、スミレが生んだ次女のローズがハルナの世話にやってくる予定だった。

ちなみに、長女であるサクラはハルナに憧れて精霊使いとなっていた。

ハルナも少しだけ力を貸し、無事にサクラは精霊との契約が成立していたと聞いた。





スミレがハルナの声を聞き、隣の部屋からハルナの様子を伺いに来る。




「スミレさん……これ」


「……あ!」




ハルナの首から下がっていたペンダントの先に入っていた黒い石が、その器の中から存在を消していたのが見えた。



「これ……って、もしかして」



「うん、やっと……やっと役目を果たせたのね……」




その言葉を聞き、スミレはすっと片膝を床に付き、胸の前で手を当てて頭を下げた。





「おめでとうございます、ハルナ様。ここまでの時間、大変でしたでしょう……これでこの世界は完全に救われたのですね」



「えぇ、多分そうでしょう」



『おめでとうございます、ハルナ様』




その場に光が集まって一つの塊となり、徐々にその姿を現したのはラファエルだった。




「ラファエルさん……」



ラファエルやモイスも、ハルナのことを永い間見守ってくれていた。

これまで、ラファエルは二回ほどそれぞれの世界を渡ってきた。

そして、向こうの世界にいるサヤが既にその存在が消滅してしまったということだった。

その際には、丁度ラファエルが向こうの世界に渡っている間に、サヤを見送ってきたとラファエルは戻ってきた際にハルナに伝えた。


その事実を聞いたハルナは、涙を流すこともなく、ただ目を閉じてうつむいていただけだったことをラファエルは覚えている。

その後ラファエルが聞いた話では、ハルナが前のサヤと同じように一人で永い時間を過ごしてきたことに対し、どんな気持ちだったのかわかるようになったと言っていた。

しかしサヤは、ヴァスティーユとヴェスティーユの繋がりや、向こうの世界で一緒になったステイビルの子孫たちと過ごして、よい人生を過ごしたことをハルナに伝えた。

それを聞いたハルナは、サヤがあの後、幸せに過ごして過ごしていることを聞き安心していた。


それと、もう一つハルナには安心したことがあった。


”この身体にも終わりがあるということに――”





『お疲れさまでした。これで……これでこの世界は安定した資源の循環ができるようになります』


「よかったです。これであの繋がりの部分が壊れることは無さそうですね」


『はい。私があの世界を往復した時にも、繋がりには然程の損傷は見られませんでした。ですから、これでようやく安定したものと思われます』


「そうですか……これで私の役目も……終わりですね」


「ハルナ……様」




ハルナの言葉を聞き、スミレはハルナがどこか遠くへ行ってしまいそうな嫌な気持ちになった。



「……あの」




その不安を言葉にしようとした時、ハルナが少し笑顔を浮かべてスミレの言葉よりも先に言葉を口にする。



「ありがとうございます、ラファエルさん。私……ほっとして、なんだか疲れちゃいました」



ハルナは天井を仰ぐような姿勢で、椅子の背もたれに身体をあずける。

そのまま目を閉じて、深く椅子に上半身を沈めていった。


それは、本当に疲れたような表情をしていた。その理由はスミレ自身もよくわかっていた。


自分が物心ついていた時にハルナという存在を認識し、今では容姿だけを見れば自分の方が年を重ねているように見える。

不敬となってしまうため誰も感じたことを口にはしていないだろうが、誰もが幼いころから見ていた若いハルナの姿の年齢を超えた時に同じようなことを感じていたに違いないとスミレは思った。


”お仕えする主人は、どれ程の時を過ごしてきたのか”――と。




そんなことを頭の片隅で考えながら、スミレはハルナの要望に応えるべく行動を始める。





「……では、お休みの支度をいたしましょう」



ハルナは毎日、睡眠はとっていた。どれだけ長い時間を過ごしてきても、神々であるラファエルたちとは違い、睡眠、食欲、排泄などは今まで通りと変わりがなかった。だからこそ、ハルナにはメイドや世話をする人材が必要とされた。




スミレとメイドに支度を整えてもらい、ハルナはベットの中へと身体を入れた。




「ごゆっくり、お休みなさいませ……」


「ありがとう、スミレさん……おやすみなさ……い」



ハルナの挨拶を笑顔で返しながら、スミレはハルナの寝室の扉を静かに閉めた。










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