6-491 突然
ステイビルから告げられた内容は、これまでにも同じような内容でハルナに語られていた内容だった。
だからこそハルナは、その提案に対して何も思うことは無い。むしろ、自分のことを”知ってくれている”者がいることの方が、嬉しいと感じていたくらいだった。
ハルナはその考えを告げると、ステイビルたちはホッとした表情に変わった。
エレーナがこぼしたのは、ハルナがその提案を断り、サヤのいる場所へ行くことや元の世界へと帰りたいという思いを持っていることが怖かったと言った。
「前にも言ったけど、もう元の世界に帰りたいとは思ってないの。だって、向こうの世界だって私がいない間の時間も流れているだろうし、この世界のことが好きになったの……えっ!?」
言葉の途中で、エレーナはハルナのことを力強く抱きしめた。
「え……エレーナ?」
その力は、ハルナの自力では解けない程に力が込められていた。だが、その力は決して嫌なものではなく、エレーナの意志と優しさが込められていた。
「……りがとう。ハルナ……あなたと出会えて……本当に……良かった」
その言葉に応じるように、ハルナの表情は落ち着きを順次に取り戻し、自分の胸の中で泣いているエレーナの背中をやさしく擦った。
そして、エレーナの感情はハルナによって受け止められ、次第にこの部屋の中の空気が次の流れが漂ってくる。
その空気はとても張り詰めているもので、周囲にいる者はをすること自体が厳しくなっていく。
そんな空気を発していたのは、ステイビルからだった。
「ハルナ……おまへ……ゴホン!」
「……?」
突然自分の名を呼んだステイビルは、張り詰める緊張感からか珍しく言葉を噛んでしまった。
やり直すように咳ばらいをし、二度三度と深い呼吸を繰り返した後、もう一度ハルナを見つめる。
「ハルナ……お前の気持ちを知りたい。お前は、わ……わた……わたし……を……私のことをどう思って……いるのだろうか?」
「え……えーと……それは、どういう意味ですか?ステイビルさんは、あ、もちろん素晴らしい人だと思いますし、この国の王様ですよね?それが……どうかしました?」
そう答えると、この場の空気がまた違った張り詰めた空気になり、それはエレーナがうつむきながら首を振る動作によって一瞬にしてゆるんだ。
「あのね……ハルナ。ステイビル様は……」
「――お待ちください」
エレーナがこの場の状況のことを説明しようとしたが、それはステイビルの近くにいたニーナによって遮られた。
その発言によって、この場の全員の視線はニーナに集まっていった。
ニーナはその視線を感じても動じることは無く、初めて会った西の王国を救いたいという願いを持った時のように、強い意思が込められた瞳で周囲の視線を受けても立っていた。
「ステイビル様……それではハルナ様に通じておりません。はっきりとお伝えしないと、ハルナ様には通じないとお伝えしましたよね?」
「あ、あぁ……そうだったな」
その言葉を受けた、ステイビルは自分の脚の上に乗せた手をぐっと握りしめ、再びハルナと向き合った。
そして、再び決意した目でハルナに告げた。
「ハルナ……私の妃となり、共にの国を見守って欲しい。どうだ?受け入れてくれないだろうか?」




