6-486 手紙
次の朝ハルナは、いつものようにソフィーネによって起こされるのではなく、自分自身の自然な覚醒によって目覚める。
昨夜はサヤたちとの食事のあと、誰とも会うことなく静かに部屋で過ごしていた。
一人であったため、ハルナの頭には様々なことが思い浮かんでいた。そのせいで寝つきは良くはは無かったはずだが、自然な覚醒のためか珍しく頭の中がすっきりとしていた。
ハルナはベットの上で、上半身をひねりながら起こした。その気配を感じたのか、ソフィーネがハルナの寝室に入ってきた。
ソフィーネが部屋に入ってきた時の表情を見て一瞬で何かが起きていたことを察した。
ソフィーネはそこまで感情を表さないのだが、いつもと違う自分を気遣っているような目に、自分に関することで何かが起きているのだと察した。
そこから、あることが頭の中に思い浮かんだが、そのことは口にできなかった。
「何か……あったのですか?」
「はい……サヤ様の姿が……」
ハルナはは、思い浮かんでいたことが当たった衝撃で、胸が締め付けられた。
苦しさと痛みのあまりに胸に手を当てると、ハルナが頼まれていたハルナしかできない……盾の創造者を閉じ込めた石を入れた入れ物があった。
「どこにも……いないのですか?外に行ってるとかじゃなくって……」
「はい。夜の警備の者が、サヤ様がご自身の部屋を扉から出た形跡がないとのことです。外を警備している者も、怪しい行動は見られなかったと」
ハルナもそうだが、サヤも部屋の内と外には、警備のために騎士団が見張りが立っている。
その者たちが、見落とすことなど考えられないという。
ハルナは急いで着替えて、サヤの部屋へと向かった。
そこには、エレーナとアルベルトの姿もあった。
「ハルナ……」
「サヤちゃんがいないって……ほんと?」
「えぇ。城の内部も探させたけど、誰もサヤ様のことを見かけたものはいないわ……さぁ、入って」
エレーナのあとに続き、サヤの部屋の中に入っていく。
エレーナとアルベルトは、既に中に入って状況を確認していたようだった。
だが、何かを探したりすることはせずに、ハルナが来るのを待っていたのだと説明した。
エレーナが今言ったように、この部屋にあるイスとテーブルにサヤが座っていた痕跡があるだけで、それ以外の物はベットを含め使われた形跡が無かった。
「サヤちゃん……」
ハルナはその名を口にして、きれいなベットの横にしゃがみこんだ。
枕の上に手を置き、痕跡を探すように皺の無いきれいな枕の表面を撫でた。
――か……さ
布ではない何かが擦れるような音がして、ハルナはその音がした枕の下をめくった。
するとそこには、四つ折りに折られた紙が置いてあった。
「ハルナ様……それは」
後ろで見ていたソフィーネが、ハルナにそれを確認してみてはと言葉を掛ける。
ハルナもきっと、サヤが姿を消した唯一の痕跡と思われる紙を手に取って広げた。
「……これは」
やはりそれは、サヤが書いた手紙だった。
その一番最初に書かれていたのは、”ハルナへ”だった。




