6-485 苛立ち
「サヤ様……それはどういうことですか?」
ステイビルは、サヤの言葉が理解できずに、素直にサヤに問い質す。
しかし、サヤもまだ自分の考えがまとまっておらず、ステイビルたちの視線を感じながらも、テーブルの上に置いた組んだ手を見つめている。
そして、自分の考えがある程度まとまりそれらに問題ないと判断し、サヤは再び口を開く。
「……資源は無くもないって言っただろ?そのままの言葉さ、アタシたちにはあの創造者たちが残していった資源が、この身体の中に詰まってるんだよ。だからアタシかハルナのどっちかがもう一つの世界に移動すれば、二つの世界の資源の量は安定して、世界の崩壊が防げるんじゃないかって言ってんだよ」
「それって……さっきのサヤ様が言ってた通りのことじゃ……まさか、そのことをご存じだったのですか?」
あまりにもサヤが思っている結果になっていることに、エレーナはサヤのことを疑った。本当は自分が行きたい世界だけを救って、こっちの世界はどうでもいいのではないかと。
サヤを疑う声色と視線がサヤに向けられたことを、ハルナはいくらエレーナでも不快に感じた。
今までの対立していたこともあるため、すぐにはサヤを良く知らない者たちからすれば信用できないのかもしれない。
それでも、二人で胸の内を明かしたもっとも大切な友人のことを疑われたことを、ハルナは我慢できなかったため、エレーナを注意しようとした。
「エレ……」
――ドン!
それと同時に、テーブルを拳で打ち付ける音と振動が部屋に響き渡る。
その音の出どころへと、この場の全ての者たちの視線が向く。
サヤは感情のままその場に立ち上がると、腰を掛けていた椅子が後ろへと弾き飛ばされた。
「知ってたわけないだろ!?アタシだって、今のラファエルの話を聞いて、二つの世界が救う方法を考えた結果なんだよ!!それに……本当は……本当はハルナと離れたくないんだよ!!アンタたち以上にアタシは、ハルナのことをずっと知ってたんだ!!」
「……エレーナ」
ステイビルはこの世界を救ってくれたサヤに対し、失礼なことを言ったエレーナに詫びるように命令する。
その命令の重さは、一緒に旅をしていた友人のような対応ではなく、一国の王として臣下に対しての絶対的な命令だった。
「申し訳ございませんでした……サヤ様」
エレーナはお詫びをするために、一度腰を上げて椅子の後ろに立ち、片膝を付き地面に片手を付いて最大の礼を見せた。
「フン……もういいよ。でも、アタシも疑われるようなこと……してたんだからね」
ソフィーネが倒れたサヤの椅子を起こし、そっとサヤの後ろに付ける。
サヤはそれを感じて、何の疑いもなくその席に座り直した。
そして食事は終わり、それぞれの部屋へと戻っていく。
今のところはサヤが、自分の希望もあってもう一つの世界へと行くことで調整が進められていく。
問題はその移動に際し、耐えることができるかどうかだった。
それでも、いつ壊れるかわからず怯えて待つよりも、二つの世界を守ってくれた二人に任せることになった。




