6-482 イキモノ
「条件……ですか!?」
『はい……』
ハルナは一番気にしていたサヤとのこれからの関わり合いという問題が、またしてもうまくいかないという状況に焦りを感じていた。
こうして再びサヤと分かり合えたのに、離れ離れになってしまうということに、ハルナは怒りにも似た感情をラファエルに対して抱いた。
しかし、サヤはそんなハルナの状況を目にし、冷静な感情でラファエルに問い質した。
「その条件ってどんなものなの?」
その質問に対して、まずラファエルは盾の創造者との死闘を終えた後のこの世界の状況を調べたことの報告を行った。
ラファエルはあの戦いのあと、サヤに命じられてこの世界に起きる問題のことを調査していた。
ラファエルは他の大精霊と大竜神たちに命令し、この世界の目に見える範囲と資源で構成されている物質に影響が及んでいないかを確認してまわっていた。
結果としては、何の影響もないとラファエルの元には報告がなされていた。
しかし、ラファエルはそのことに疑問を感じ、自身でしかできないことを調べていた。
『……そして、この世界が非常に不安定な状況にあるということが判明しました』
「不安定?……どういことだい?」
ラファエルの報告に、サヤは眉を寄せて尋ねる。エレーナたちも、また問題が発生したのかと、その表情は急に曇り始めた。
『これはおそらく……私の推測でしかないのですが、二つの同一の世界ができたことにより、それぞれの世界が資源を奪い合っているのです』
「そ……それは、ど、どういうことですか?」
ハルナはその状況が理解できないでいるが、サヤもステイビルたちも表情を曇らせていることから、良くないことであると感じていた。
『はい……まず、この世界は……”生きている”のではないかと考えています。……エレーナ、貴女たちはもしもこの世界に元素が無ければどうなりますか?』
「はい。元素が無ければ、精霊の力を使うことができません」
『そうですね……でもあなたはどうですか?質問を変えましょう、もし元素ではなく、空気がなくなった場合はどうなりますか?』
「そ、それは!?……苦しくなって、死んでしまいます」
『そう……いまこの世界ももう一つの世界も同じような状況なのです。世界にとっては、資源は貴方たちだけではなく、この世界に生きる者たちに必要なもの。世界にとっては、資源が貴方たちの空気のようなものなのです。水の中でおぼれた時には、水の上に上がって空気を求めるように、この世界も自分たちの世界に資源が満たされるようにと、お互いの世界の資源を奪い合っている状態なのです』
「そうなんだ……で、その危ない状態っていうのはどの位のものなの?あと何百年っていう話?それとも今すぐっていう話なの?」
『そうですね……今すぐ……と言いいましても、人間が生きている世界の基準で考えると、早ければ数十年で崩壊してしまうかもしれません』
「そ……そんなぁ」
エレーナの口から漏れた言葉は、ハルナも同じ思いだった。
そしてハルナに向けられた視線は、どうすればいいかわからないハルナにとっては辛い視線でしかなかった。




