6-477 ハルナの希望
泣いて笑ったあと、二人は呼吸を整える。
そしてサヤは、再びハルナに向かって話しかける。
「さっきの話しだけど、アンタはこの世界のやつらに随分と好かれているんだねぇ」
「うん。エレーナとかマーホンさんとか、どうしてここまでしてくれるのかわからないくらいに、アタシのことを面倒見てくれるんだよね」
「やっぱりアンタは、好かれやすいタイプなんだよ……ちょっと待ちな、これは別に嫌味でも何でもないんだからさ。ただ、アンタのことを本当にそう思ってるだけだよ」
サヤは自分から見た、今と昔のハルナの周囲の評価をしたうえで、自分が考えるハルナのことを言ったつもりだった。
ハルナはその言葉に少し眉を寄せた表情を見せるが、サヤはそれが何の意味も含まない自分から見た感想であるとハルナに説明をした。
ハルナもサヤの説明を素直に聞き入れて、照れながらサヤからの良い評価を素直に受け入れた。
「……それでどうすんの?アンタはずっとこの世界にいるの?」
「でも……あの世界には戻れないよね?」
「いや……うん。まぁその意味もあるけど、あっちの世界には戻れないだろうね。アタシも、この世界に来てから随分と経って、そういう方法が無いか探してみたけど無理だったんだよね。世界の異動に関しては、二人の創造者の問題が起きてからそういう術があるっていうのが判ったくらいだから、もし試すんならこれからってとこかねぇ……でもさ、アンタはあっちに戻りたいの?」
その質問に、ハルナは一瞬ハッっとした表情になる。
しかし、そのすぐ後にハルナは目を閉じる。
「う……ん、どうだろう?いま、どんな状況か知りたいっていう思いはあるけど……でも、エレーナやマーホンさんのことを考えたら、そこまで戻りたいかっていうと……そうでもないのか……なぁ」
「で、どっちなん?戻りたいの?戻りたくないの!?」
「え!?も……戻らなくてもいいかなぁって思ってる!?」
その答えは、今のハルナの気持ちを素直に表していた。
妹である風香のことが気にはなっているが、それ以外のことは大きな心残りではないと気付いた。その判断を下した裏には、この世界でこんな自分のことを気にかけてくれている、エレーナを初めてとした者たちの姿が昔の記憶を塗り替えられていていた。
それに、フユミやユウタ、サヤがこの世界にいたことで、孤独感や元の世界への執着心は今では全くと言っていいほど感じていなかった。
「あ……そう。じゃあ、アンタは”こっち”の世界に残るってことでいいね?」
「う……うん」
ハルナは、サヤの最後の問い掛けに、何か自分が考えている何かと違っているように感じた。
ハルナの視線を感じたサヤも、自分もこれからどうするかを決めなければならない状況であると感じながら、その視線を受け止めている。
そして、ハルナからようやく、自分が思う通りの流れの質問を投げかけられた。
「ねぇ、サヤちゃん……サヤちゃんは、これからどうするつもりなの?」




