6-475 謝罪
「アンタがさ、人に好かれるっていうのも、何か理由があるだろ?アタシにはない何かが……さ」
「そんなこと……」
そう言われても、ハルナは自分が何か特別なことをしたつもりもなく、ただ自分の好きなように生きてきただけだった。
それに、個人の性格は人の指紋がそれぞれであるように全く同じようなものはなく、同じように見えても近いだけで全く同じであることはない。
例え双子の兄弟がいたとしても、生まれた順番によって兄と弟と分けられてしまっている。そこから優劣が生じたり、違う経験をしていくことになる。それらが積み重なり性格となっていくのだと聞いたことがあり、当時ハルナ自身も同様に悩んでいた時に救われたことがあった。
今言った、サヤがずっと抱いてきた心の痛みも、ハルナは判っている気がしている。そのため、ハルナはサヤを助けてあげられなかったことを、この世界に来てからも後悔していた。
だからこそ、また同じ世界にサヤがいたと知った時には嬉しかったのだ。
「昔はそんなアンタが嫌いだったんだよ。……っていうか、アンタがとっても羨ましかったんだろうね、気付くのが遅かったんだけど。今なら、あの時のそんな自分の気持ちもわかるようになったんだよ。偶然に与えられた、この長い時間の中でさ。そりや、あっちの世界じゃ考えられないくらいの長い時間は、普通じゃ気が狂いそうになりそうなときもあったよ。でも……これもきっと、アタシが”アンタたち”にした”罰”なんだろうね」
「サヤちゃん……罰だなんて……そんな」
ハルナにはサヤが口にした”罰”という言葉に対し、すぐに頭の中に浮かんだものがあった。
それはきっとこの世界に来ることになった、あの”事件”のことをいっているのだろうと気付いた。
でも、それはハルナ自身も、自分のせいであると思っていた。幼馴染みであるサヤが辛い時に、助けてあげられなかったとこ、自分に頼ってもらえなかったこと、もっとサヤに寄り添ってあげればよかったと、夜一人で眠るときに何度も思い出しては、胸が締め付けられるような思いを繰り返していた。
その言葉でいままでの夜のことを思い出し、ハルナは襲ってきた痛みをこらえるように、胸の前の服の布を強く握りしめた。
「でもね……悪いけどアタシはこの世界にこれて、いまではよかったと思ってるんだ。自分が周りからみて劣っているだってずっと思ってたんだけど、今思い返してみれば、アタシを心配してくれる人や見守ってくれていた人はいたんだよね。だから……だから……アタシは……」
サヤの口は、何かを伝えようとしているが、伝えたい言葉が喉の奥で詰まってしまいその先の言葉が中々出てこなかった。その口は、開けたり閉じたりを繰り返すしているだけで、十秒以上の無音の時間が流れていく。ハルナもその姿を見て、決して急かしてはいけないと判断し、サヤのその葛藤を手に力を入れたまま見守っていた。
そこから意を決して、サヤは思っていた言葉をようやく口にした。
「アタシね……アンタに謝らないといけないんだ」




