6-469 闇の石
ラファエルは、事前にサヤと打ち合わせをしていた内容を、この場にいる者たちにそのまま伝えた。
その内容は、この場にいる者たちにとっては信じられない内容だった。
この場にいる者たちに告げられた内容は、次の通りだった。
盾の創造者はまだ完全には倒し切れていない状態であること。
サヤは手元にある闇の石を見せて、この中に閉じ込めたことを説明した。
その説明を聞いて、一斉にサヤの掌の上を覗き込む。
「さ……触っても、よろしいですか?」
「……いいよ」
エレーナは恐る恐る、人差し指を突き出し石の方へ近づけていく。
「――!」
「――きゃぁ!!」
急に近づけた石を怖がるエレーナの姿を見て、サヤは機嫌よく笑った。
「もう、サヤちゃん!?」
サヤに対して怒ることができないエレーナに変わって、ハルナがサヤに注意する。
エレーナもハルナの気持ちを察して、ハルナに向かってなんとも言えない感情でほほ笑んだ。
「あはははは!ごめんごめん、だいじょうぶだって!危なくないよ……ほら」
サヤが自分の反対の手で触ってみせて、もう一度エレーナに差し出した。
次は、しっかりと石に触れて自分の手に取って手のひらの上で転がしてみたりしてみたが、何の変化もなく安心した。
満足とこれ以上持っていると何か起こりそうな気がして、エレーナはサヤに闇の石を戻した。
「この中に……閉じ込めただけですよね?」
その言葉にサヤから先ほどまでのおどけた雰囲気は消え、周囲もその雰囲気を感じ取り、張り詰めた空気がこの部屋の中に満ちた。
「そう。これはただ閉じ込めただけ……多分すぐには出てこれたとしても、すぐには出てこれないとは思う……”思う”って言ったのは、これから先のことは何が起こるか分からないってこと。アタシたちが相手にしていたのは、この世界を創ったやつらだよ?そんな奴らをここに閉じ込められたのは……まぁ、いろいろラッキーだったけど、そんな奴らがアタシたちの考えてることを越えてくる可能性もあるってことって意味……わかる?」
サヤの言葉に、ステイビルがこの場を代表して、サヤの言葉の最後の問いかけに応じた。
「確かに……そうですね。もう我々では、何が起こったのか理解できないところです。ですので、お聞かせいただけませんか?”それ”をこれからどうするおつもりなのですか?」
サヤはハルナの顔を見る。
そして決められていたように、自分の役目だとハルナは口を開いた。
「私が”これ”を溶かしていくことになったんです」
そう言うと、エレーナたちには思い当たることがあったのか、安心したような顔つきになった。
コボルトの兄弟や、”精霊と自然の恵み”亭の女性のフライヤが瘴気に犯されていたとき、ハルナの精霊のフウカや剣の創造者の剣の放つ聖なる光で瘴気を消し去っていたことを。
「よかった、ずっとこのままなのかと思っちゃった……で、それはいつ頃消えてなくなるの?一週間?一か月後くらい?」
エレーナからの質問への答えは、ラファエルが応じた。
『これを消してしまうには、千年に近い年数が必要となります』




