6-451 決戦23
”無駄じゃなかった”
その言葉を口にするサヤの言葉には、強い悔しさが込められていたのがわかった。
だからこそハルナは、そのサヤの気持ちを無駄に終わらせないためにも伝えられた指示を実行しようと強く意識した。
『……何を考えているのか知らないけれど、何か起きてもこちらも対応できるのよ?』
そう言って盾の創造者は、再び先ほどと同じような攻撃を仕掛けてくる。
ハルナは、サヤに言われた通りのことを行動に起こした。
ハルナの背中には再び光の球体が二つ浮かび上がり、二体の小さな存在がハルナたちに近付き爆発の動きをみせたその二体に光の線が貫いていく。
すると、二つの存在は砂が崩れ落ちるように元素へと還っていった。サヤは、小さな存在の満足そうな表情を見て、自分が立てた仮説の結果に満足していた。
『……!?』
この現象に対し、盾の創造者は自身が持つ知識の中から、その対応策を見つけ出そうとしていた。だが、これまでの歴史の中で、ここまで自分たちが創り上げた”理”の枠組みで想定していたものをはみ出した行動を取るものを見たことが無かった。
多少、エラーが生じたとしても、自分たちが直接手を下すことが無くても、その”処理”は容易に行うことができた。
しかし、いま目の前にいる二人は、今までにない事象を次々と起こしてくる。
初めのうちは、何も考えずに自分が持つ能力だけで対応が可能だったが、今はもう優位性がほとんどなくなってきている。
それは同じ地位の存在であった剣の創造者の能力が二人に分け与えられたころから、急速にこの世界を創造してきた者という優位性が奪われていった。新しい出来事が続いて楽しくもあったが、今では自分の思い通りにいかないことばかりで、不快感の方が勝っていた。
サヤには、盾の創造者には何が起きているのかが理解できていない様子が見てとれた。ここまで自分が考えていた作戦がうまくいっていないことと、盾の創造者が新しい出来事に対応できていないこと。その二つの結果にサヤは満足し、ハルナに次の指示を出した。
「ハルナ!次!!」
「……!?うん、わかった!!」
そうしてハルナは、再び光の源を創り出した。そこから放たれた光線は精霊の核を打ち抜き、小さな存在を苦痛を与えることなく再び元素へと還していく。
同時に処理できる光線は二つまでで、サヤはそのことに少しだけ不満を感じ始めた。
「もう少し、数を増やせないの?これだとまだまだ時間がかかるんだけど……」
「でも、これ。制御が難しいのよ……打ち出す対象も狙いを付けないとダメだし、そうするとこの数が処理の限界なのよ、悪いけど」
その言葉にサヤは、仕方がないと呟きながら盾の創造者の状況を見つめる。
「――!?」
先ほどまでは、ハルナの光線によって攻撃の要である小さな人型の存在達を守るべきところを、ただその様子を見守っていただけだった。そこには対策を検討する意味と、自分自身が先ほどの攻撃で、光線からダメージを受けることが判っていたからだとサヤは判断していた。
だが、いま盾の創造者の背後にはサヤと同じような魔素の塊が浮かび上がっていた。




