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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第二章 【西の王国】

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2-91 緩めたロープ



道中ルーシーは、隊長の男に何故襲ってきたかその理由を聞いた。

しかし、男はその質問には応じなかった。

無理やり喋らせる方法も思いつくが、山の中でその行為は殺人に等しいと考え強引に聞き出すことは最後の手段とした。

それ以降、無言の時間が続く。

拘束された男たちは、縛られたロープによって歩きづらくなっている。

それが余計に、男たちの体力を消耗させていた。

だが、いまは敵として認識している以上、そのロープを解くことはできなかった。

隊長と名乗っていた男の歩様がおかしくなっている。

先程の戦闘で、捻挫のような状態になり足首を痛めているのが原因だろう。

シュクルスはその足元の不調に気付き、自分の持っていた布で足首をテーピングのように固定した。

その行為に対しては、東の国の人物の中から止めるものもいなかった。


「……お前、何故敵にこんなことを」

「痛そうにしていたから……じゃダメですか?」

「フン……甘っちょろいやつめ」



足首を固定するために、靴の上から硬く布を結ぶ。

シュクルスが処置を終えると、一同はまた歩みを進め始めた。

そして、後発隊もようやく尾根に到着する。

後は下るだけだった。

一旦ここで、休憩をとることにした。

縛ったロープは少しだけ緩めて、楽にしてあげた。


「いいのか?逃げるかもしれんし、反撃する可能性もあるぞ?」

「あなたたち”程度”なら、すぐにでも押さえつけることが出来ます。それに、きつく縛った状態だと、ろくに飲み物も採れないでしょ?」


ソルベティは、余裕の表情で応える。


「先程の小僧と言い、お前といい……東の国の奴らは、他人に気を遣い過ぎる。早死にしてもいいのか?」

「どうして、それが早死にと関係があるの?」

「優しさなんてな、何の役にも立たないんだよ……弱い自分を隠しているだけだ」

「……こちらから言わせてもらえば、それはあなたの勘違い。思い込み。感情や思考はその人の本質を形成するもの、力は訓練や鍛錬によって培うもの。その二つの要素が混ざり合い、その人の”強さ”が見えてくるもの……それに」


ソルベティは、腰に下げた剣の柄に刻まれている紋章に触れてその感触を確かめる。


「……それに、人の強さの形は様々。あなたの言う強さは、ある側面でしか見たものでしかないの。果たしてそんなものが本当の”強さ”とお思い?」

「青い……青臭い意見だな。東の国ではそれでよかったかもしれんが、西の国ではそうはいかん……せいぜい自分の信念を貫いてみせることだな」


そういって男は、途中で渡されていた飲み干したグラスを、ソルベティに突っ返した。


「そうね。口でわからせるよりは、見てもらった方が早いものね」


そう言って、ソルベティは男の傍からグラスを持って離れていった。

休憩を終えて、一同は再び動き始める。

今度は、西のふもとを目指して急な坂道を下っていくことになる。


(――ん?)


隊長だった男が、異変に気付く。



「……おい、緩めたロープは縛らなくていいのか?」

「そんなロープ、本当はあなたたちなら今すぐにでも外せるんでしょ?」


ルーシーは既に知っていたかのように答える。


「――我々を試していたのか?」

「試すも何も、あなた方は私たちを襲った。抵抗しない様に、拘束するのは当然でしょ?そして、その状況を打開するもしないも、それはあなた方が決める行動。でも、もし歯向かうようなら先ほどよりももっと手加減せずに攻撃してたでしょうけどね。それにそういう行動を起こさなかったのも事実、なんの事情があるかは知らないですけどね」


男はルーシーの上から目線の言葉に苛立ちもしたが、実際このような結果になっているためいくら強がっても、ただの負け惜しみにしかならない。

それとは別に、こちらの事情を組んでくれているような発言もあり、今はこれ以上状況を悪化させない様に大人しくしておく方が良いと判断した。


「それでは、出発しますよ」


アリルビートの合図で、行程の残り半分を進み始めた。

下りは、特に何の問題もなく進んで行った。

とても良いペースで歩みを進め、日が落ちる前に西側のふもとに到着することが出来た。


「へー……ここが、西の国。特にこれといって、東と違うところもないわね」


周囲を見渡しながら、エレーナが感想を述べた。


「それはそうだよ、エレーナ。まだ山を越えて、やっと西の国に入ったっていうだけじゃないか。そういう感想は、街中とかを見てから言うべきだよ」

「あ、そうか」


エレーナの今の発言が、異国に来た感じを薄れさせてしまった。

道の先に見える小屋のような場所から、人が出てきてこちらに向かって走ってくる。


「……レーナ、エレーナ!こっちよ!こっちこっち!」


その声はよく聞いていただが、ここ数日間は離れて行動していたことも多かったため、とても久しぶりな感じがする。

そんなことを思いつつ、エレーナはハルナに向かって両手を振って応えた。


「ハルナー!着いたわよー!」


ハルナとの距離が近くなり、二人はお互い近寄っていった。


「山越えお疲れ様……って、これどうしたの?」


ハルナは、警備兵がある程度自由に行動できる程度のロープで縛られている状況を見て驚く。


「……うーん、いろいろとあってね」


ハルナの後ろから、ようやく追いついたクリエとエルメトが到着する。

そして二人も、ハルナと同じような反応を見せた。

”山を越えてくる間に一体何が起きたのか?”


「と……とにかく、皆さんもお疲れでしょうから、この先の宿屋に移動しましょう。詳しいことは、そちらで」


エルメトのその言葉に一同は頷き、マギーの宿屋まで移動した。




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