6-440 決戦12
「……あ」
サヤの口から漏れた言葉は、たった一言だけだった。
その反応を見た盾の創造者は、再び優位に立てたことへの喜びから、その口元がすっと上に上がっていく。
盾の創造者の身体から消えた剣が刺さっていた場所には形の悪い円が開いていたが、その傷も落ちていく砂時計の砂が集まってくるかのようにゆっくりと塞がっていった。
『……あなたも随分と努力はされていたようですが、私はこの世界を創造した存在ですよ?そんな私にここまで歯向かうなんて……褒めて差し上げたいところですけど、これ以上の時間をかけるのは無駄ですから、この辺りで終わりにしましょう?』
盾の創造者がそう告げると、これまで動きを止めていた小さな人型は、再び主の命令によって動き始めた。
「――っ!?」
サヤが守ってやると約束していた小さな存在は、サヤに泣きそうな表情で向かってきている。
その存在の近いうちに起きることに、サヤは謝りながらポケットの中に入れていた小さな袋をひっくり返して小石をその中に出した。そのうちの一つを掴み、親指で弾き飛ばす準備をしながら距離を詰めてくるおよそ八十弱のその存在達に気を向けていた。
そしてサヤの近くにいた最初の一人が爆発の範囲の中に到達し、目の中に浮かぶ嫌々な感情を含ませながら急に飛び跳ねた。
と同時に、サヤは手に持っていた小石を盾の創造者に向けて弾いた。さらに、その小さな存在を小石の中へと飛ばした。
――ボン!
小さな人型の存在は、姿が消えたと同時に盾の創造者の近くで小石がはじけ飛んだ。
だが、盾の創造者には全くと言っていいほどダメージは受けていない様子だった。
『うまいことやるわね?だけど、いつまでそれが続くかしらね?』
盾の創造者の言っている意味が、サヤにはなんとなくわかっていた。
ポケットの中にある小石の数は、然程多くの数はない。できる事なら複数体を纏めて自分に向けて欲しい所だった。
それに、別な空間へと飛ばしていくにはある程度の距離の範囲でないとその対象へと移し替えることができない。それは、移し替える器にも言えることだった。先ほどの距離は、転送先と転送対象がサヤからのギリギリの距離だったため成功した。手に握ったままで転送をしてしまうと、盾の創造者がそのタイミングを見計らって爆破させるだろう。
さらに言えば、大量に転送させればその爆発の威力は先ほど気絶した威力以上のものとなる。
そのため、今ここにいる小さな存在たちは、バラバラな距離で向かってきているため一気に移し替えることは出来なかった。
そのことを判っていたのか、次に盾の創造者は二つの存在を別々な方向から時間差で飛びかからせた。
「――ぐっ!?」
サヤはすぐに用意した一つの小石を、盾の創造者の方向とは違う方向へと弾き飛ばした。
そして飛びかかるうちの一体をその意思の中に閉じ込め、ほぼ反対側から来た一体を瘴気によって弾き飛ばした。
――ドン!
――バン!!
辛うじて交わすことができたが、これ以上増えた場合は今の対応が難しくなることを感じ、サヤは奥歯を噛みしめながら盾の創造者を睨んだ。




