6-431 決戦3
「な……なに、これ!?」
そこには人型をした、ハルナの身長の半分くらいの大きさの”何か”が多数うごめいていた。
それらの様相は、不気味としか言いようがないかった。
四肢は付いているが、顔には口がなく眼球も片側だけしかついておらず、外界の情報は最低限だけ分かれば問題ないという構造だった。それらの生き物はゆっくりと横に揺れながら”ひょこひょこ”と移動し始め、ハルナたちに向かって歩いてくる。
「……なんだい、そりゃ?そんなもの出してどうするっていうの?」
サヤは、盾の創造者が創り出したものに呆れながらそう口にする。
「こんなの……こうして」
サヤは、どの程度のダメージでこの人形が消えていくのかを調べるために、瘴気の塊を指先に浮かべて目標に向かい放った。
――ドン!!
サヤの攻撃は然程のエネルギーを込めてもいない一撃だったが、人形に当たると大きな音を立てて爆発した。
「――なっ!?」
ハルナもサヤも、その結果に対し目を見開いた。
その集団ともいえる範囲の中で、人形は周囲のモノを巻き込みながら爆発した。それによって近くにいた人形たちは八方に吹き飛び、自らもダメージを受けていた。さらに二人が驚いたのは、その人形にも”意識”がある反応がその少ない表情から見て取れた。
周囲にいた人形たちの目は怯え、不幸にして吹き飛ばされたモノたちは痛みで顔を歪めている。
その痛々しい表情を見せながら向かってくる人形たちに、ハルナたちは相手が進む速度と同じ速度で距離を保っていく。
『あら、どうしたの?私に勝てるのではなかったのかしら?』
「はぁ!?こんな悪趣味な方法とってくるやつに、負けるはずないだろ!?」
『悪趣味?何を言っているの?私は生き物を生み出す能力を持っているの、その力を使っているだけなんだけど?あなたが先程爆発させた能力だって、あなたが持っている力を使っただけでしょ?それと同じよ』
「これが一緒な訳ないじゃない!!」
盾の創造者の説明に、怒りを表現したのはサヤではなくハルナの方だった。
ハルナは迫りつつある人形との距離を取ることを止め、そのままの状態で立ち尽くして盾の創造者を睨んだ。
「あなたは、一体何を考えているの!?この人たち、意識があるんでしょ?創ったあなたには、わかるわよね!?爆発させるために創ったのに、個々に意識を持たせるなんて……この人たちが今どういう思いをしてるかわかってるの!?」
「ハルナ……あんた」
温厚なハルナが、今までに見せたことのない怒りの感情をむき出しにする姿を見たサヤは、ハルナと一緒に立ち止まってしまった。
ハルナは本当にこの状況が許せないようで、身体は怒りか我慢か……小刻みに震えており、目は真っ赤に染まって涙が溜まっていた。
しかし、そんなハルナの気持ちは、盾の創造者からの言葉によって静まっていった。
『ハルナ……あなたも同じなのよ?私が創ったこの世界の生き物を、その能力で殺めたことは無いの?それと何が違うのかしら?それともあなたの行ったことだけが”正義”で、それ以外の存在が行えばそうではないというの?ハルナ、あなたが世界の全てを判断するのかしら?』




