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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第二章 【西の王国】

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2-89 不信感



「これは一体、どういうことですかな?」


西の警備兵は、連れて帰ることになっていた人物がいない事情をアーリスに問い正している。

アーリスは、昨夜の出来事を警備兵の隊長に説明した。

だが、話を聞くにつれ、その難しい顔つきになる。


「……状況は、分かった。ただ、それは本当のことなのか?」

「……信用できないと?この状況をご覧になられてもですか?」


聞き取りをしていた警備兵は、アーリスの言葉に頷いた。

状況証拠のため、そのままにしておいた石の檻の惨状。

どうやら相手は、檻の隙間から爆発物の付いた矢を放ち爆発させていた。

檻の隙間はさほど大きくはないが、矢を通すことはできるだろう。

だが、弓の腕前が相当高くなければ、その隙間を狙い撃つことはできなかった。

接近していたならば、その隙間を通すことも容易であっただろうが、その近くには警備兵が巡回していた。

そのため、ある程度接近していれば犯人を発見することは可能だったが、その様子を見た者はおらず接近していれば、狙われていることに対して助けを求めて騒いだりしていただろう。

以上のことからも、相手はかなり遠くから矢を放ったのではないかという結論に達していた。

襲撃の対象は、東の警備兵や他の者たちには危害を加えていないため、檻の中の者たちだけを狙った可能性が高かった。

当然その考えられる理由としては、ゴーフたちを狙ったことへの口封じが一番妥当であろう。

それともう一つ、警備兵が信用できなかったことはコボルトの存在。

人間に対して協力的であり不審者の情報を与えてくれるとは、今まで聞いたことがない。

これについては、こちらには多くの目撃者もあり実際に行動を共にしたハルナたちがいる。

そのことを証明することも簡単だ、実際に目の前で見てもらえばよいだけだった。

だが、警備兵の隊長はそのことには興味を示さなかった。

襲撃事件の調査もこれで一旦打ち切ることになり、これからの予定を確認し合った。


「それでアーリスたちは、これからどうするのだ?」

「はい。ボーキン様の指示により、あなた方の隊と一緒に西に戻るようにと」

「……それでは、すぐに西に戻る支度を。そして隊は、先発と後発に分けることにする。どこかに潜んでいる可能性がある敵から狙われる可能性があるため、分かれて行動するように」


隊長はそう告げて、準備をさせる。

西の警備隊も二つに分けて、それぞれに同行させることにした。


「……それでは、先に行きますね」


ニーナが後発のエレーナたちに挨拶する。

先発隊は、ニーナ、アーリス、ハルナ、クリエ、カルディ、ソフィーネと王子二人が選ばれた。

一度山を越えたことのある者を中心に選ばれた。

登山のペース配分や、危険な場所も注意しやすいという思惑もある。


「ニーナ様もお気をつけて……ハルナ、頼んだわよ!」

「エレーナも気を付けてね!それじゃあ、向こうのふもとでね」


そういうとハルナたちは山の中に入っていった。



その間、警備兵は檻の中をもう一度丹念に捜索していた。

が、東の国の警備兵が見た以上のものは発見されなかった。


「この檻は、精霊使いの方が作られたのですか?」

「はい、私が作りました」


そう言って、オリーブが一歩前に進む。


「我々の調査は終わりました。もう、こちらを消していただいても構いません」


オリーブは、ドイルに確認する。

ドイルは、東側でも問題ないと判断し檻の撤去を許可した。



「それでは……」


オリーブは、檻の方へ手をかざす。

すると、石の檻は、何もなく元素へと還っていった。

地面には、爆発した焦げ跡と矢が刺さったと思われる小さな窪みができていた。

隊長は、その窪みを足で砂を掛けて埋めていく。

そして、振り向いて自分の後ろで待っていたエレーナ達に声を掛ける。


「随分と時間がかかってしまいましたね、お待たせして申し訳ありませんでした。……そろそろ、我々も出発しましょう」


そういうと、西の警備兵は東から分けてもらった食料と水を背負い山の入り口まで向かう。


「それでは、エレーナ様、ルーシー様。道中お気をつけて」

「有難うございます、ドイルさん。行ってきます!」


リリィと東の警備兵はこの拠点を守ることと、東の王都への連絡拠点として残ることになった。

今回は王選の精霊使いたちと王子二人で、西の国へ行くことになった。

しかし、それはこれから国の近隣諸国の情勢の安定を図るためにも必要なことだった。

ただ、正式の東の国からの派遣ということではなく一国民が自主的に協力するという名目となっている。



山も随分と登り、後発隊も尾根まであと半分の場所まで進んでいた。

前を歩く警備兵たちは急いでいるのか、ここまで随分と早いペースで進んでいた。

ふもとの調査で取った遅れを取り戻したいのだろうか。

この中で、一番若いシュクルスが少々バテ気味だった。

だがシュクルスは弱音を吐かずに、ひたすら足を前に動かし続けることをやめようとはしなかった。

しかし、シュクルスは何かに躓いた。


――バタッ!


「イテテテテ……」


息を切らしながら起き上がろうとするも、後ろを歩いていたメイヤに背中を押されて起き上がれなかった。


「ちょっと、メイヤさ……!?」


シュクルスは起き上がろうとした方向の目線の先に、木の幹に刺さった矢が見えた。

その矢の先は幹の中に埋もれており、その威力の高さがうかがえる。

その気配を察したアルベルトやルーシーが、瞬時に周囲を警戒する。

ソルベティが前方を進む警備兵に注意を促そうとしたが、その必要はなかった。


「まさか、あなたたち……」

西の警備兵は坂の上から弓を構えて、その矢の先はこちらを狙っていた。




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