6-420 突きつける事実
『……な……わ……しを……おい……て……そ……そんなこと……』
盾の創造者の口からは、声のような息のような音が聞こえてくる。
初めは小さな音だったが、それは徐々に大きさを増してきた。
「……?」
それでもよく聞こえなかったため、サヤは聴覚に意識を集中させその音を聞こうとした。
『ぐ……ちの……えたちの……お前たちの……せい……だ』
「……は?何を言って……!?」
「―――サヤちゃん!?」
ハルナが叫ぶと同時に、サヤの周りに光の壁が浮かび上がった。
それによって盾の創造者が放つ瘴気の風圧が、サヤとハルナの手前で霧となって消えていった。
「……余計なことしなくったていいんだよ!?でもまぁ、その反応はいい反応だから、この後も頼んだよ?」
「え?……うん!!」
ハルナは、サヤの言葉に目を丸くした。これまで、余計なことをするとサヤの機嫌を損ねていただけだった。今回のサヤは、ハルナの反応速度については認めていたため、ハルナはその言葉に嬉しそうに応じた。
盾の創造者の方は、力任せに放出した瘴気が全て弾かれてしまったことに対して不快感を表情に表していた。
『たかが……たかがニンゲンの分際で!?私たちに逆らうなど!!』
「私たち?……悪いけど、アンタ一人だよ。アタシたちが敵対してるのはさ?悪いけど、この世界にはアンタはもう必要ないんだよ……だからアンタには消えてもらうしかないんだ」
『はぁっ!?……な、何を言ってるの?この世界を創ったのは私たちなのよ?アンタたち人間がどうこうできる権利などないはずよ!?それを私に消えて欲しいですって?ち、ちょっと普通の人間たちより能力値が高いからって、自惚れすぎじゃないかしら?勘違いも甚だしいわね!?』
「アタシたちに言わせれば、いつまでも自分が最高位の存在だと思っていることの方が、自惚れじゃない?そうやって足元をすくわれて、勝負が逆転した話はいろんなところで聞いたことがあるんだよね」
サヤが言っている話は、この世界のことだけで起きた話でない。
元いた世界において、事実や創作の物語であっても割と知られている話だった。
そういった類のルートなど、盾の創造者にはこれまで経験したことはないはずだった。同じような存在である剣の創造者も何度か助言をしたこともあったが、絶対的な地位に対して自信を持つ盾の創造者は、その話しに耳を傾けて思考を巡らせることはなかった。
そんな盾の創造者にこういう話をしても無駄だと思うが、少しでもまともになれば最悪の道を回避できるのではという期待もあった。
サヤの話を聞いて無言になっていた盾の創造者は、先ほどの怒りを表した力強い目ではなく、思考も何もかも止まっているような虚ろな視線でどこを見ているかわからない。その理由が一体どこにあるのかも読み取れなかったため、ハルナもサヤも相手からの反応を待つだけにした。
『ねぇ……先ほど言っていた話……本当なの?あの存在が……”消えた”って』
「……あぁ、本当だよ。出なければ、あの空間から出られることはできなかったからね」
サヤからの答えに対し目は無表情のままだが、口角が少し上がった気がした。




