6-414 最後の言葉5
『それと……これをハルナにも渡してやってくれ』
「……あぁ」
『サヤよ、そんな顔をするものではない。これは……お前たちで言う死というもの……なのだろう?だとすれば……これは永遠の別れでは……ない……心配するな、サヤよ……私の資源はこの世界の中で回っていくのだ……またどこかで、お主とつながることも……あるだろうよ』
サヤは感情の器がいっぱいになり、もうこれ以上剣の創造者からの言葉に対して反応することは出来なかった。
『お主のことは……よくわかっているつもりだ……お主はここ最近で、お主に近い者たちを失ってきた……それがお主にはよく思えないこともわかっている……お主には悪いが……私にもそういう感情を抱いてくれるのは……なんというか……少し嬉しい……これしか方法が思いつかなかったのは……すまないがな』
「……何言ってんの?こうしなきゃ、被害がひどくなるって……アンタも言ってただろ?」
『あぁ……そうだったな』
既にサヤの容姿を模したその身体は、薄く消えかけていた。だが、嬉しそうな表情ははっきりと見て取れた。
『先ほどハルナが言っていたのだが……”好意”という感情は……こういうものなのか?』
剣の創造者はこの世界に意識を持って存在してから、感じたことのない温かい満足したものを消えかける身体の中に感じている。
苦しそうにそう語る、剣の創造者の表情は微笑んでいた。
『サヤ……お主との時間は……実に有意義なものだった……だからこそ……この先の続きを知ることができないのが……少々もったいない気がしているのだがな』
「資源は消えないんだろ?じゃあ、アンタの意識の一部も残るかもしれないじゃない?あのオスロガルムみたいに……」
『そうだ……そうだな……では、その状態で見届けさせて……もらおう……そろそろ……本当に……時間だ……サヤよ……頼んだぞ……お前と……ともに……いれた……ことは……たの……し……か……たぞ』
そう言うと自分と同じ姿をした別の存在は消え、今にも扱いを間違えれば暴発しそうな資源を含んでいるが今にも破裂しそうなシャボン玉のような球体がその場に落ちていた。
サヤは一度目を腕で拭うと、両手でやさしくその球体を掬いあげた。
そして、剣の創造者が用意した、別れの言葉を告げるための空間を閉じて元の場所へと戻った。
「あ!サヤちゃん!」
ハルナは、サヤが無事に戻ってきたことを喜び、サヤの近くへと寄っていった。
そこには見るからに不思議で今にも破裂しそうな危険な球体を片手に乗せており、もう一つの片手には見たことのない木箱が握られていた。
「――ほら」
「っ……と!?」
サヤから急に投げ渡された箱を、ハルナは急いで両手と胸で受け止めた。
「なにコレ?……え!?」
ハルナはその箱が、受け止めた胸の中で溶けていくように消えていくことに驚いた。
「いまの、何なの!?」
「あいつが持っていた”権限”なんだってさ。有効に使って欲しいって」
「ふ、ふーん……」
ハルナはわかったようなわからないような、曖昧な返事でサヤの反応を誤魔化した。
そんなハルナのことを無視をして、サヤは自分がいない間に気持ちを整えていたハルナとラファエルを目にして、次の行動に出るために声をかけた。
「準備はいいよね?……いくよ?」
その言葉を掛けられた二人は、真剣な目つきで頷いて見せた。




