6-410 最後の言葉1
「じゃあ、ハルナ……準備できたか?」
「うん、大丈夫。安定していると思うし」
『大丈夫ですよ、ハルナ様。元素は安定しております』
サヤに言われて作られたハルナの手のひらの上には、ゴルフボールの大きさくらいの金色の球体がある。
「じゃあ、ハルナ……準備できた?」
「うん、大丈夫。安定していると思うし」
『大丈夫ですよ、ハルナ様。元素は安定しております』
サヤに言われて作られたハルナの手のひらの上には、ゴルフボールの大きさくらいの金色の球体がある。
それは学校のグランド程度の広さに満たされた四つの元素が、手のひら上で圧縮されていた。
通常の精霊使いでは、このようなことはできない。それに加え、複数の属性の元素を扱う人物もまれであり、いてもせいぜい二種類が限度だ。
いまハルナが見せているものは、ラファエルでさえ行うことができないものだった。
それを目にしたラファエルは、奇跡の現象を見せつけられる二人に従う以外なかった。
「……よし。じゃあいいよ、”それ”をこの中に入れて」
「うん、それじゃ……いくよ?」
下にあるサヤの手のひらの上に、ハルナが上から被せるように球体を乗せていく。
触れ合った球体は、お互いを待っていたかのように自分たちへの中へと取り込んでいく。
サヤの手の上に乗せられた球体は、様々な形に変化しつつあるがそれを破裂させないでいられるのはサヤが剣の創造者の力を借りて制御していたからだった。
だが、サヤは一瞬にして違和感を感じハルナに警告する。
「――ハルナ、手を離しな!?」
「――ひゃっ!!!」
ハルナは、球体に取り込まれそうになりかけたが、サヤの掛け声のおかげで免れることができた。
「あ?」
と思えたのも一瞬で、その声と同時にハルナは今までとはことなる真っ白な世界の中へと目の前が変わった。
そしてまた別な空間に飛ばされたことを認識し、その空間に慣れてきたころ頭の中に声が響く。
『ハルナよ……』
「え?その声は剣の創造者さん……ですか?」
『そうだ。最後にお主と話がしたくて……な。このような時に悪いのだが、少し付き合ってはくれぬか?』
「え、えぇ?大丈夫ですよ?」
『心配しなくてもよい、これは契約とかではない。だからこの時間が終れば元の通りだ、安心してほしい。それに、いまサヤが行っていることも問題はない。順調に進んでいる……問題はその後のことだがぜひ、あの者を止めてやってはくれないか?』
そのお願いは先ほどもされたはずだったし、ハルナもサヤももちろんそのつもりでいた。
だが、ここまで重ねてお願いするには何か理由があるのだと思い、ハルナはそれを尋ねてみた。
「あの……どうしてそこまで?確かに、あなたがこの世界を崩壊させたくはないということは伺っていますが……その他に何か理由でも?」
『我らは、長い時を渡ってきた……その中で人間や亜人たちが独自の文化や思想を生み出していることに、その進化に自分たちが創りあげた喜び以上のモノを感じていたのだ』




