6-394 亀裂
サヤは、一度だけで反省の色を見せない盾の創造者に対し、もう一度拳を叩きつけようと準備をする。
相手は悲痛な声をあげて、自分の顔を庇う動作をとっている。
その様子を見ても、サヤのこれまで蓄積された怒りは収まることが無い。
相手に対して慈悲の心はなく冷静な気持ちのまま、もう一度同じ場所の付近に拳を叩きつけた。
『な……なにするのぉ!?』
「はぁ?アンタが今までやってきたこと考えてもわかんないの?あぁ……アンタはいままで、自分の好き勝手してきたからわからないんだね」
『……?』
「はぁ、その顔は本当に何を言ってるのかわからないって顔をしてるね?でもいいよ、アタシはそんなこと関係ないからさ」
その言葉に、盾の創造者はもう一度同じ攻撃が来ると判断し、サヤから距離を取ろとする。
だが、片方の肩がサヤに捕まれたままで、今までのように逃げ出すことは適わなかった。
このままもう一つの世界へ、姿を消そうとも考えたがこれ以上資源を使うことは自分のやり遂げたいことが遠ざかってしまうため、その手は最後の手段として残しておきたかった。
しかし、それ以外にこの状況を回避できる術もなく……さらには、考える時間も与えてくれなかった。
「……早いところ、その身体から出ていった方がいいと思うよ?」
『……っ!!……ぁっ!!……やめっ!?』
盾の創造者は、何度も殴り付けられる拳を腕で庇いながら、なんとか止めてもらおうとサヤに懇願する。
サヤはそれでも、自分が目的を達成するまで拳を何度も何度も、盾の創造者へと打ち込む。
それはいうことを聞かない獣に、どちらの存在が上かをわからせるための躾のような行動に似ていた。
サヤの拳にも痛みが走る。瘴気を纏えば、グローブの役割を果たしてくれるだろうが、そうすると盾の創造者にはダメージが入らなくなってしまう。だからこそサヤは、自分の肉体だけを武器にしてこれまで届かなかった分まで攻撃を繰り返していった。
遠目で見るアーテリアたちも、すごい能力を持つ二人が原始的な……しかも一方的に攻撃を加えられている状況に言葉を失てしまっていた。
しかし、その状況にも変化が生じ始めた。
一方的に殴りかかっていたサヤは、相手が何の反撃をしてこないことと、その場から逃げないことが判ったため、肩を掴んでいた手を離し両手で攻撃をし始める。右手が既にボロボロになってきており、痛みの感覚がなくなってきていたため、反対の手で攻撃できることは丁度よかった。
盾の創造者は、怖さと痛さで肩が自由になったことで、その場に頭を抱えるように蹲ってしまった。
その状況でもサヤは、後、横からと場所を変えて拳を打ち付けていく。
少し防御に隙ができたところに、サヤは最初に打ち付けていた顔の側面に渾身の一撃を打ち込んだ。
――パキ!
硬いプラスチックの表面が割れるような音が、サヤの耳に聞こえてきた。
『あ……あ……』
入ったヒビが、少しずつ広がっていく。そして、そのヒビ割れて掛けたところからは、光が漏れ始めていた。




