6-378 ラヴィーネへ
馬車によって王都出てから翌日、途中で一晩野営をして翌日の昼前には町の手前の森を抜けた。
するとそこには森の中を走ってきた時のように、枝の隙間から火がさすような景色と異なり、平地が広がりそこには眩しいほどの光が降り注いでくる。
その向こうには町を守る高い塀が連なり、その奥には山の頂が塀の上からのぞいていた。
「サヤ様、もうそろそろ”ラヴィーネ”に到着いたします」
「ふーん。あ、そう」
サヤは同じような景色が続いていたためか、退屈そうにメイヤの言葉に反応する。
サヤは、別な空間にメイヤたちを移動させモイスで移動しようと考えていた。
だが、その案はヴァスティーユとヴェスティーユによって否定された。
その様子を見ていたメイヤとエレーナは、二人のメイドの態度に驚き、サヤからのお叱りがくるのではないかと身構えていた。
だが、その予測していた反応は返ってくることはなく、二人の言葉がサヤを納得させていた。
二人はサヤに対して、せっかくのサヤとの移動時間を楽しみたいと言った。
ここからラヴィーネまで徒歩であれば二・三日、馬車だと出発の時間帯関係なく翌日中には到着できる距離だった。
二人にしてみれば、この移動も一種の旅行として考えていたようで、それを主人であるサヤと共に同じ時間を過ごしたいと願っていた。
”この状況もいつかは、終わりを迎えることになる”
そうすればサヤは、この地を離れ合うことも叶わなくなるかもしれない……そうなってしまう前に、サヤとの思いでが欲しいと二人は告げる。
その思いを後押しするかのように、メイヤも馬車での移動を勧めた。水の大竜神での移動は、遠くからでも目立ってしまう。今回二人を精霊使いの施設へと入所させる際に、同じ時期に突然現れた時期と大竜神が発見された時期と同じであれば、色々と世間を騒がせてしまうことになるだろうとサヤに説明した。
そのこともあってサヤは、今回みんなと一緒に馬車での移動を承諾した。
「わぁ……!」
「素敵……!」
始めて目にしたラヴィーネの町と周囲の景色に、サヤの二人のメイドは窓の外に釘付けになる。
その景色は王都とは違い、自然と人工の建造物が見事に調和しこの地域の特性を生かした造りとなっていた。
その反応に同行したメイヤも、少しだけ自分が褒められたように嬉しく思った。
この町をここまでするにあたり、メイヤとマイヤは大きく貢献してきた。
その成果がこうした形となり、それを評価されることは嬉しくないはずがなかった。
「……ってことは、あっちの方に”あの”森があるんだね?」
「はい、お察しのとおりでございます。サヤ様」
サヤは、精霊と契約する場所に視線を固定する。
その場所は、ハルナがこの世界で一番最初に存在した場所と聞いている。その場所にも、この世界の秘密があるのではないかと考えており、サヤはラヴィーネに到着して一段落した後に、視察に行こうと考えた。
そうして馬車は、ラヴィーネの検問所へと到着し、町の中へと入っていく。
その向かう先は、エレーナの母親がいるフリーマス家の屋敷へと向かっていった。




