6-374 サヤへの評価
「……やはりこれらの物は、サヤ様がお持ちいただいた方がよろしいかと。それに、我々にははそれらを有効に活用することが難しいようですし」
ステイビルは手にした盾を、サヤに向かって差し出している。
サヤは腕を組んだまま、その様子を見ていた。
しばらく考えた後、サヤはその盾に手を伸ばした。
「……それじゃあ、”コレ”。遠慮なく使わせてもらうよ」
「どうぞ、お持ちください。先ほど申し上げた通り、我々にはこれらを生かすことができませんので。それに……いえ、サヤ様がお持ちいただいていた方がやはりよろしいかと思います」
サヤにはステイビルが止めた言葉の先に、何を口にしようとしていたのかガ判っていた。
この世界にいる大きな敵であれば、この盾も剣も役立てることができるだろと考えていた。
だがそんな強敵すら関係なく、世界が崩壊してしまった場合には、この装備でさえ無意味になってしまうということをわかっていた。
だからこそ、自分たちが使用するよりもサヤに持っていてもらった方が、この世界を救うために有効に活用してもらえると判断した。
「……ったく、アタシは戦士職じゃないんだけどねぇ」
「申し訳ありません……私どものわがままを聞いていただき、ありがとうございます。サヤ様」
そう詫びながらも、ステイビルはサヤに対して笑顔で対応する。
サヤも、そんなステイビルたちの対応を悪くは感じていなかった。
ステイビルたちは、ハルナがいなくなってからのほんのわずかな時間だが、サヤの性格が判り始めていた。
サヤ自身はすごい能力を持っており、怒りっぽい性格であるためハレモノを触るような対応をしがちだった。
だが、本人はその態度がとても気に障っていることに気付いた。
そこでヒントになったのが、ハルナと共に過ごした時のことだった。
ハルナもサヤと同じく、この世界では考えられない程の超人的な能力を獲得している。
しかし、ステイビルもエレーナも今までと同じような態度でハルナと接していた。
能力が変わったとしても、今までと同じ態度でいた方がハルナも安心していた。
中には、そう言った能力を初めからもしくは、途中で獲得した場合に、”性格”を変えてしまう人物もいるだろう。ハルナとサヤは、そういう類の人物ではないことがこれまで接した中においてステイビルたちは理解できていた。
そして、サヤは今回の件で責任感が強く、この世界……それともう一つの世界も救おうとしていることが感じられた。その理由はハルナを助ける以外にもあるようだったが、そこまではステイビルたちも情報が足りずにわからなかった。
この部分は、言葉で確認するとサヤが”照れて”まうので、周囲の者たちから見た判断だったがほぼ間違いないという結論に達している。
これ以上、この場にとどめておくことも……
「……では、サヤ様。ハルナをよろしくお願いします」
「くれぐれも、無理はなさらないようにしてくださいね」
「あぁ、任せな。あの”オンナ”に目に物見せてやるよ……それじゃあ、行ってくる」
「サヤ様……ご無事で」
その言葉を受けてサヤは頷いて返し、ステイビルたちの前から姿を消した。




