6-373 検証
「……いいかい?手を離すんじゃないよ?」
「は、はい!?」
エルメトが緊張ながら、サヤの指示の通りに震えながら盾を構える。
先ほどこの実験の説明をしてもらい、安全であるとは聞いている。
事前にモイスが吐き出した氷の息が盾の周りを避けていた、しかしステイビルが以前見た状況はそれを手に持っていた存在の全体を避けていた。
しかし、昨日と事前に試した時には、盾の周囲しか避けられてはいなかった。
ステイビルが言うにはオスロガルムとの際には、数人をまとめて防御していたといい、盾の能力を確認するために実験を行うことになった。
今までは国宝として飾られていただけだったが、この状況において特別な装備についてその能力を把握しておきたいという話の流れになった。
サヤは一刻も早く向こうの世界に行きたがっていたが、剣の創造者やステイビルたちに説得をされ、今はこの実験の結果を見届けることにした。
『それでは行くぞ……しっかりと構えているのだぞ?』
モイスは一度長い首を折り、顔を後ろに下げた。本当はそうする必要もないのだが、タイミングを計らせるためにそのような動作を付け加えたのだった。
顔を前に突き出すと同時に口を開け、モイスは水を噴出した。氷ではなく水にしたのも、”万が一”があった場合にその被害が少なく済むようにとの配慮だった。
万が一とは、”盾を持つ者”によって効果が変わってしまうのではないかという恐れだった。
ハルナやサヤと同じように、元素や魔素を扱う資格を持った者たちだけが扱えるシロモノなのかという疑問があった。
「――うわぁっ!!」
エルメトはどれだけすごい衝撃がくるのかと思い、声を出してその衝撃に対して身構えた。
しかし、その緊張も杞憂に終わる。いつまで経っても衝撃を感じないエルメトは、固く閉じていた目を片側ずつゆっくりと開いていった。
そこには水が自分のことを避けているかのように、盾を中心にして広がっていく。
初めて体験したその不思議な現象に、エルメトは気を抜いてしまう。
「――ぁっ!?」
無事に盾が水に変えた元素を避けていることを確認し、サヤの指示によってモイスは吐き出す水量を一気に増やした。
水を避けてはいるが、その勢いまでは耐えられずエルメトは水流によって吹き飛ばされてしまっていた。
「あぁ、やっぱり本人の力も何か関係あるみたいだね」
そいうとサヤは、地面に寝転がっているエルメトから盾をの端を握り奪った。
そして、その盾をエレーナに手渡し、エルメトが立っていた位置に立たせた。
同じテストを繰り返すと、今度はエルメト以上にエレーナはモイスの水圧に耐えてみせることができていた。これによって、サヤが考えていた盾の性能が正しいことが証明された。
その後続いて、剣についても同じように実験を行った。
エルメトよりもアルベルトの方が防御範囲がわずかに広くなっており、剣の実力においても防御力に有意差が出た。
だが、それ以上にエレーナやサヤが剣を持っていた時の方が、剣での防御範囲が広がっていた。
これによりその者が獲得した技術と扱える資源の量によってその能力の子ぷかが変わることが確認された。




