6-367 サヤとハルナと19
サヤは対応するために相手の状況を推測する……最初は今の状況を諦めて生じた笑いとも考えたが、その考えをすぐに否定した。
それは、自分を睨みつける視線に込められた力が、なりふり構わず危険なことをしそうなものであると直感的に感じられた。
「――!?」
その直後、サヤは後方に向けて飛び跳ねる。元いた場所には、盾の創造者が横の起動で放った拳が鼻先を通り過ぎていった。サヤの勘は、結果的に当たっていた。
盾の創造者は、ハルナの肉体を使って今まで行ったことのない行動を取った。
それは、この世界を観察して起きた行動ではなく感情の赴くままに撮った行動で、自分の”怒り”というをその対象者へとぶつけるために自然と生じた行動だった。
しかしその行動は、サヤが避けてしまったために届くことはなかった。その結果は、今までに自分が行ってきた行動が全てサヤに防がれてしまったように、この拳も同様にサヤに避けられたことによってさらに怒りの感情が増大する。
『……この!逃げるな!!』
「とうとう暴力的な攻撃に変えたんだね……ま、正解じゃない?」
その言葉に対して、盾の創造者はさらにサヤを怒りを込めて睨みつける、余裕のある態度が気に入らなかった。
加えて、当たると思っていた拳が交わされたことに対しても、ぶつけたかった怒りが解消できなかったことがさらにストレスが溜まっていった。
『な、なんで私のすることを邪魔するの!?あなたたちには関係の無いことじゃない!!私に何の恨みがあるっていうの!!あなた達はよそ者なんだから、この世界のことに口を出さないでよ!?』
「……は?なにそれ?よそ者とかどうとか関係あんの?だいたい、今ここにいるんだから、もし世界が崩壊したら、アタシだって消される可能性があるんだろ?それに、アンタに恨みがあるとかどうとかは全く関係が無いの。ただ、世界を崩壊させようとしていることを止めてくれれば、アンタには何もしないつもりなんだけど?」
『そ、そのことこそ、よそ者であるあなたが私に対して言うことじゃないわよ!私がやろうとしていることに対して、人間の分際で口を出すなんて聞いたことないわよ!!』
「そりやそうだろうよ、今までアンタはこの世界の中で知られないように姿を隠してたんだしさ。誰もアンタに口を出すことなんかできないだろう?もし、アンタがこの世界で……ラファエルたちみたいに姿を見せていたら、こういうことにはならなかったかもしれないだろ?でも、結局アンタの性格じゃ今のままだろうけど」
『性格……よくも……馬鹿に……』
「待てって!ちょっと落ち着きなよ……もう一度言うけど、世界を崩壊させなければアンタのやることには口を出さないし何もしないって言ってんの。コイツとのやり取りもなんか訳がありそうだけど、そういうのも好きにやればいいじゃない?」
『……』
その言葉に、盾の創造者は少し落ち着きの色を取り戻す。
そして、いまサヤが言った言葉の意味とこれから自分がどうするべきかの行動を思考する。
「ちょっと落ち着いたようだね……」
この提案が効いていると判断したサヤは、盾の創造者へ説得を続ける。




