6-365 サヤとハルナと17
『確か……この辺りだったはずだけど』
山の中腹の見晴らしの良い場所で、盾の創造者はきれいな草木が広がる場所に浅い穴を次々と掘り漁っていた。
掘削する作業は手や道具を使っているわけではなく、地面にある土や石、草花などを元素に戻しながらその場所を探していた。
『一気に掘り返してしまえば楽なんだけど、それだと消えてしまう可能性があるのよね。全く面倒ったら……ないわよね』
ハルナの記憶から引き出せたのはここの場所までだった。細かな場所を調べようとした際に、ハルナの方から記憶が遮断されてしまったため、知りたいことは判らないままでいた。
フウカとして繋がっていた”回線”も、どういう訳かハルナの方から完全に塞いでしまっていた。
これに関しては、盾の創造者は驚きを隠せなかった。サヤとは違い、ハルナには”そういう”能力が低いと思われた。
しかし、こうしてこの世を創り出してきた存在の仕組みを完全に拒否されていることに、ハルナを少しだけなめてかかっていたことを反省する。
(なんで私の力以上のことをできるのかしら……あの二人は)
こう頭の中でつぶやいても、きっとハルナには聞こえてないだろうと盾の創造者は判断していた。
交渉のために条件をいくつも並べても……いくら”よほど”の言葉で煽ってみても、ハルナはそれらに対して何の反応をも示さなかった。
盾の創造者の読みとしては、おっとりした性格であるが自分の仲間を大切にし、それらが傷付けられることを嫌う。
その大切にしている者たちが、傷つけられてしまったときの怒りによって心を乱すのだと考えていた。
その隙に、ハルナが最も大切にしている物などを探ろうとしていたのだった。
だが、今回同じ作戦をサヤの方に先にやられてしまい、少し心が乱れてしまっていた。
反対に言えば、誰もがそういったことで乱すことがあるので、ハルナに対してもその手を使って交渉しようとした。
『……まったく、どこに埋めたんでしょうね』
盾の創造者は、サヤの最初の読みの通りフユミの存在を使ってハルナの心のカギを開こうとした。
その情報さえあれば、自分であればフユミの存在も復元可能かもしれない。
そのことを条件に、ハルナに協力してもらおうと算段していた。
だがハルナとの繋がりを拒絶されてしまったため記憶の検索も途中で終わってしまい、それ以上の詳細の場所を調べることができなかった。そのため、こうしてしらみつぶしにフユミを埋めたと思われる周囲の場所を採掘していた。
この世界で一番邪魔となる存在のサヤを、何とか巻くことに成功したが楽観はできない。
剣の創造者が扱えない元素での高度の高い石による閉じ込めと、人間に必要な空気を遮断した密封状態にすることによりサヤ自身の行動を止めることを目的とした策。
(でも、きっとあの人間なら何とかするんでしょうけど……)
そう思いながら、いつ再び邪魔をされるのかを心配しながら再び地面を掘り返していく。
しかし、この方法も諦めて逃げ出そうかと思い始めたその時。
『……?』
適当に場所を探し歩いていた盾の創造者は、足もとに違和感を感じ顔を下に向けてみる。
何度か同じ場所を足で踏んでみるが、今までとは感覚が違っていた。
『もしかして……』




