6-359 サヤとハルナと11
「もう一つの制限っていうのは、それを媒介する存在が必要ってことなのよ」
「媒介?」
その案を聞いた相手は、すぐにはその言葉を理解することはできなかった。
その様子を見て、この案を持ち掛けた存在はさらに満足そうな表情でその仕組みを語った。
「そうよ、ある存在を介して人間が元素を扱えるように”した”の。そうすれば人間も、長命種族の魔法にも対抗できる種族となるのよ」
「……”扱えるようにした”だと?もう、その改善は終わっているのか!?」
「え?……えぇ。仕組みはできているけど、それをいつ展開していくかっていう段階だけど?」
突然の報告を聞き、自分がなんだか相手に遅れを取っているように感じ焦りを覚える。
そして、一刻も早く自分だけの時間を作り、研究をしなければという思いが強くなった。
その思考が終ると、相手がいまだにこちらに意識を向けていることを思い出し、先ほどの質問の答えに対する反応を返していないことを思い出した。
「そ、そうか。……で、ではそれはいつ行うのだ?」
「もしよければ今からでも可能ですけど?やります?」
「あぁ、いいのではないか……いや。ちょっと待って欲しい。それはどのようにして、追加するのだ?人間という種族は、既に安定した生活を行っている。その能力を追加することによって、人間界のバランスが崩れてしまい朽ち果てるという可能性は?」
「うーん……その可能性否定できないわね」
「ならば、なんとか一部の被害だけで収まるようにはできないか?」
「……一部の人間だけに能力を与えるとか?」
「それであれば、人間与えた能力が安定した場合、一部の系列の人間のみしか扱えなくなる……それはきっと種族の争いの種となり、種の破滅にもつながりかねない」
「だとしたら、どうするのがいいのかしら?」
そう投げかけられた存在は、意識を自分の内側に向けてその問題を解決する方法を検討した。
ほんの少しだけ、新しく仕組みを考えることで楽しくなってきていた。
「特定の人間だけではなく、全ての人間においてその可能性を与えて欲しいが……”ある特定の場所にたどり着けた者だけその能力を付与される”、とかはどうだろうか?」
「……できなくも……ないかも。それよりも、あなたでそういう場所は用意できないの?」
「……できる。それならば、ある場所でのみその能力を与えることにしよう……で、その媒介とは?」
「これよ?」
創造者の掌の上に、白い光の粒が浮かび上がる。
重さはなく、いまも緩やかな空気の流れで揺れていた。
「これが、人間の身体に溶け込んでいくことにより、元素を人間の体内に取り込むことができるの」
「こ……これが?思考能力はあるのか?」
「まだ、空っぽだけど一応その要素は組み込んでいるわ。これをその場所に湧き出るようにすればいいんじゃない?」
「そうだな……念のために、初めはある一定の期間だけ湧き出てくるようにしよう。そうして人間に馴染むことができるのか、観察していくことにしよう」
こうして、人間に元素を扱えるようにする仕組みを作り、二つの存在は監視対象の種族を人間で行っていくことを決めた。




